K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

フィクションに落ちる

人生の転機なんて書くと大袈裟に思われるかもしれないし、実際のところ自分でも過言ではないかと感じていたくらいなので、今日の出来事は私にとって、まさに衝撃そのものだった。
普通ではない。私が内心では毛嫌いしていた、「普通」というやつからの完全なる脱却……というよりはむしろ、普通でない領域に引きずり込まれるという表現のほうが適切かもしれない。
願ったり叶ったりではあるのだけれど、あまりにも事前の想像を超えてきたので、私の心身が耐えられるかが少し心配になる。

 

就活なんかでは嫌になるほど意識せざるを得ない第一印象というやつに、私は固定観念を持っていたことを白状しよう。
これほどの自由があっていいのか……つい数か月前まで私がやっていたことはいったい……とても一言では表せないような異世界の片鱗を見せつけられた思いだった。
敢えて端的に言うなら、ヤベーやつらだ。常識? いや、常識はある。確かにあった。ただ、そんなつまらないことを意識の外に追いやるくらい際限なく非常識的で、退屈とは無縁の空間がそこにあった。
もちろん非常識というのは悪口ではない。過去に見聞きしてきた常識が通用しないかもしれないという、特別な新鮮さを感じられる空気感とでも言えばいいだろうか。
私がこれから半身を投じることになる、素晴らしい世界の話だ。

一目で思ったことがある。これは、そのまま創作になる。強烈なキャラクター性と、深く広い知識を持った彼らは、すぐに私の頭の中で躍動感を放つ登場人物として存在を確立した。
いつの間に、私はフィクションの世界に迷い込んでしまったのだろう。現実世界はすぐ後ろにあって、いつでも戻ることはできるのに、彼らに接していると戻れる気がしなくなる。
今までに見たことがなかった。冗談で言うことはあっても、適当に想像してみることはあっても、この手で触れることができるなんて、まともに考えたことがなかった。
けれど、少し背伸びをして手を伸ばせばそこにあって、幸運にも私を欲していることがわかった。直接の刺激に勝るものはない。欲しいのなら、くれてやる。
それは、確かに存在している私が知らない物語の始まりだった。

フィクションというのは、もちろん比喩だ。現実に起こっていることで、他のどの世界とも同様に、しっかりと人の温もりを燃料として回っている。
しかし……しかし、それにしても頭がおかしい。念のため言うが、これは最上級の誉め言葉だ。
どうりで、特定の業界について書かれた小説が面白いわけだ。ありのまま、そこに存在しているだけで通常ではあり得ないようか特殊性を孕むのだから。言うなれば、普通にしているだけで普通でない。根底にある感覚が、普遍性からひどく乖離している。

まったく恐ろしい話だと思った。冷静に考えてみて、私の人生はどこに連れていかれるのか、今はまだ想像もつかない。安定感とはかけ離れた荒波に、先行き不明瞭な混沌に、自らを捧げることになるのだ。わかるはずがない。
真っ当な神経をしていたら、きっと不安に押し潰されることだろう。ちょっとネジの外れているらしい私でさえ、わくわく感がそれを大きく上回ることがないのだから。
あらためて言ってもいい。これは私に唐突に訪れた、人生の転機だ。


とまぁ、とんでもない第一印象からスタートして、凄いことになってきたなぁという実感をたっぷり身体に覚えさせられた末、私はどうやら合格したようだった。
別に私が選別を受けているというわけではなく、畏まった面接というわけでもなかったのだけれど、それでも本当に私でいいのだろうかという心配はあったのだ。
無事に終わってくれて、そして次に繋がる道を作ることができた結果に今は安堵している。

あらかじめ伝えられていた通り、本格的に動き出すのはもう少し後になってからとのことなので、今はただ自らの課題に向き合う生活に戻るべきなのだろう。
今日は十分に刺激をもらうことができた。もう迷わないし、怠けたくない。
明日から再び、内なるエネルギーを活性化させていきたい。