K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

甘いもの

甘味というのは、人間に幸福感をもたらすことが多いと思う。だって今の世の中、お菓子をはじめとした甘いもので溢れているのだから。
甘い飲み物を常飲している人も多い。季節を問わずアイスを買う。飴やチョコレートに馴染みのない子供はほとんどいない。
私には、よくわからない。

 

私は自らの意思でお菓子を買ったことがない。実際には、記憶にないレベルの遥か昔、幼少期には甘いものを日常的に求めたことがあったかもしれないが、少なくとも物心がついてからは、周囲の状況に合わせて摂取したことしかなかった。
たびたび書いているように、あまり食というものに関心がないため、お菓子なんて無駄な出費としか思えないのだ。合宿の宴会や宅飲みにおいて酒のツマミとする以外に、いったいどんな価値を見出せばいいのかわからない。
もしくは、誰かの誕生日に食べるケーキとか、特定の記念日に気持ちを込めて作るプレゼントとしてのお菓子であれば話は変わる。
しかし、なんのイベントも伴わないのに、己の欲を満たすためだけに消費するお菓子というのは、おそらく私には一生無縁の代物だ。

コーヒーに砂糖をドバドバかける人がいる。そんなに苦いのが駄目なら飲まなければいいのに、と言うのは無粋だろうか。甘味と苦味の混じったものが好き、などという主張があるのかもわからないが。
個人的にはコーヒーの風味が損なわれてしまうのが嫌なので、無糖以外は飲まない。というより飲めない。

中学生の頃、人の家に行って飲み物は何がいいかと尋ねられた。
私は普段お茶しか飲まないので、特に悩むことはないのだけれど、たいてい選択肢にはコーラやジュースが含まれている。普通の家庭の冷蔵庫には、常に甘い飲み物が保管されているのだ。意味がわからない。
ちなみに私は炭酸飲料が苦手なので、サイダーやコーラを飲むことは苦行そのものと言ってもいい。

たっぷりとシロップのかかったパンケーキ、チョコレートソースの絡んだアイスクリーム、その他コンビニやスーパーに並んでいるスナック菓子やスイーツの類い。
そういうものを毎日のように、まるで日課のごとく消費している人がいる。信じられない。考えただけで血糖値が上がりそうだ。
最近になって、それらに対して私が思うようになったのは「甘すぎる」ということだ。年に何度か、そういうものを口にする機会があるのだけれど、「良い」と感じるのは最初の一口二口だけで、あとは次第に苦痛に変わる。甘ったるすぎて、舌が壊れてしまいそうになる。

これは、私がおかしいのだろうか。普通の人にとって、甘いものは極上の存在であって、そこから負の感情が生まれるなんて滅多にないことなのだろうか。
かつての職場では、しばしば袋分けされたお菓子が配られた。旅行のお土産であったり、世話になったことへのお礼であったり、理由はともかく月に一度くらいは、要らないのに渡されていた。
不思議なことに、周囲の人間は貰ったその場でムシャムシャと食べてしまうのだ。私は欲しくならないので、とりあえず鞄にしまっておく。帰宅してから、貰ったけど食べないからと家族にあげてしまったり、忘れて賞味期限が切れるまで放置してしまったりする。

一人暮らしを始めてからは、甘いものを口にする機会が激減した。
カロリーコスパがいいからパンケーキを作ることがある。この時は、うっすらとメープルシロップをかけて食べる。甘くなりすぎないように、注意を払うのだ。
シリアルは手軽な朝食として重宝している。まぁ残念ながら、ちょっと甘すぎるのが欠点なのだが、砂糖の塊を食べているような感覚には陥らないので、多少は我慢している。
ヨーグルトはプレーンのものしか食べない。味気ないと思ったら、これまたメープルシロップを少しだけかけて済ませる。
結局のところ、舌が甘味を最も強く感じてしまうものはダメなのだと思う。ちょっとしたアクセントとして付加された甘味であれば気にならない。

唯一の例外はアルコール飲料に関してだ。
そもそも、飲み会でしか飲酒しないということが前提となる。
ビールはコーラと同様に刺激が厳しいので、強要されなければ注文することはなく、ゆえに残った選択肢はカクテル、サワー、ワイン、果実酒など。
半分以上が甘い飲み物だ。私は酒に弱いほうなので、ワインは少し厳しい。すると最適解は、甘すぎないカクテルということになる。
ジントニックがあれば、それを選ぶことが多い。なければ柑橘系のサワーなど。飲み会の終盤には果実酒を注文することがあるけれど、あれは酔って判断力が機能しなくなった結果として生まれた、ただの悪手だ。度数が高くて甘すぎる。私にとっては毒のような存在だと、最近では思うようになった。

そんなわけで、実は私って甘いものが好きではないのではないか……と、なんとなく感じていた傾向を文章化してみたのだが、なるほど思った通り、ほどほど以上の甘さに対しては苦手意識があるらしい。
おかげで無駄に健康を損ねることがないのは素晴らしいのだけれど、それにしても世間一般の甘いものへのこだわりは、ちょっと理解に苦しむ。
甘味を追求するのは本能なのか、それとも幼少期から親しみやすいがために作られた傾向なのだろうか。考えても答えは出ないけれど、私は普通の人間を観察していて今日も不思議だなぁと思うのだった。