K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

ジャパンカップ2021回顧

競馬は最高だ。そういう、純粋にレースを楽しむ心を久しぶりに思い出すことができた。
昨年の三冠馬コントレイルの引退レースとなったジャパンカップだが、惜しまれつつも名馬が大きな期待に見事に応えるという、大変に気持ちのいい結果となった。
競馬というのは本当によく出来ている。強い馬と強い馬が競い合って、名レースが生まれる。血は次の世代に受け継がれ、新たな名馬が生まれる。このシステムの面白さを知ってしまった以上は、もう一生引退できる気がしない。

 

レース展開は序盤ドスローからの、中盤移行は引き締まった流れという形になった。
スローペースで進んだのは逃げ馬が不在であったこと、キセキが出遅れたことなどが主な原因だと思うが、結局途中から捲っていって全体のペースを引き上げる役割を果たしたキセキは、相変わらずジャパンカップで見せ場を作るのが上手い。
キセキも好きな馬なので、本音を言えば勝ちは難しいにしろ馬券になってくれたら嬉しいのだが……まぁ直線のキレ足だけで決まる形になるよりは、持続力勝負に持ち込んだほうがまだ可能性が残るだろうし、しっかり勝とうとしていることがわかる騎乗に不満はない。
何しろアーモンドアイがいなければ世界レコードで逃げ切っていたわけだから、本質的には化け物なのだ。この馬も引退が近いだろう。種牡馬になったら楽しみな一頭だ。

先手を取ったアリストテレスは、別に掛かったようには見えなかった。普通に出ていって、ハナを奪ってしまったからそのままといった感じだ。
理想的なのは菊花賞のように、ある程度は先行しつつ脚を溜める展開だろうから難しいところはあったと思う。異常なまでに遅い時計がそれを示していて、そのまま中盤に大きな変化がなければに結果は変わっていたかもしれない。
キセキが上がっていったことで、この馬の勝ちはなくなったに等しいだろう。あまり溜める余地がなく、不意にロングスパートを余儀なくされた。抜けた能力を持っていない限り、後ろからやってくる馬に勝てる道理はない。

騎乗が光っていたのは、やはりルメール騎手だと思った。途轍もなくペースをコントロールするのが上手い。
スローから中盤以降にペースが上がる流れはオーソリティにとっても悪くなく、先行しつつ脚を残して、最後に引き離せれば勝てる。アルゼンチン共和国杯でやったようなレースをしていれば、GⅡレベルなら敵なしなのではないだろうか。
できるだけコントレイルよりも前で競馬をする……そういう強い意図が見えた。馬の能力を最大限に引き出す、ほとんど満点に近い騎乗だったように思う。

シャフリヤールについては、予想の時に実力を見定めるレースだと書いたけれど、正直なところ今もよくわかっていない。
トロールを見ればわかるように、どうにも1コーナーで2馬身分くらいの不利を受けているようなのだ。その後は折り合って楽な位置で走れていたように見えたけれど、あれがなければ多少は消耗が抑えられて、もうひと伸びしていた可能性もあるだろう。
ダービーでは展開がハマってハナ差の勝利、神戸新聞杯は不良馬場なので度外視するとして、今回の不利を受けての3着というのは、強いのかどうなのか。間違いなく、弱くはないということは確かだろうけれど、エフフォーリアやコントレイルと比べたら一枚落ちるくらいの評価になるのだろうか。
それから、距離への不安もある。これは血統云々と同じくらい個々の適性が大きいとは思うけれど、シャフリヤールにとって2400は、おそらく展開次第では長い。ダービーは最後の最後まで脚を溜めることができたからこそ鋭い末脚を披露できたが、前半スロー後半ハイペース気味の展開になると最終直線だけの勝負というわけにはいかないから、実力を完全に発揮しづらいところがあるのだろう。
そういう面を考慮すると、来年は大阪杯に出てくるなら本命にしたいと考える。もちろん良馬場で。もしマイラー方向へ適性変化があるなら、安田記念でも。

コントレイルは、まさに格が違った。疑われていた実力評価を払拭する、圧巻のパフォーマンスだったように思う。
よくディープ産駒のダービー馬は一瞬のキレが持ち味と言われている気がするけれど、実はコントレイルに関しては、そこまでパンパンの良馬場が合っているとは言いがたい。
上がり最速を出していることが多い。ただ、キレが強みと言われる他馬と比べると上がり3Fの数字自体はわりと遅めで、どちらかと言えばタフなレースに強い傾向が見て取れる。データとしては表示されない上がり5Fにおいてこそ、この馬の能力が突出しているのではないか。だから菊花賞でも走れたし、稍重くらいなら問題なかった。そういう意味で今日のレースは、コントレイルが実力を完璧に発揮できる条件が3コーナーまでに揃ったように感じる。
ディープインパクトの正統後継者として、産駒の活躍が今から楽しみだ。

ジャパンC_3連単

馬券は秋天以来の的中ではあったけれど、去年と同じく人気決着で払い戻しは微妙だったから当たった気はしない。
やはり海外馬は走らないし、サンレイポケットは意外に強かった。キセキは残らず、穴馬に出番はなく、振り返ってみると福永ルメール川田といういつもの決着だ。
彼らが実力馬に乗っている時は、深く考えないほうがいい可能性は高い。

 

初めてコントレイルを見たのは、確か一昨年の年末だったように思う。初めてネットから馬券を買ったのはアーモンドアイが飛んだ有馬記念で、競馬初心者だったその頃に出会った未来のスターがホープフルステークスのコントレイルだった。
昨年は初めて、クラシックを最初から見た年だった。好きになった馬を応援して、勝つ姿を見ることができる。こんなに嬉しいことはない。恵まれた競馬人生のスタートだったと思う。
ちょうど一年前に初の敗北を喫してからは、悔しいレースが続いた。今年は王道の流れで楽しめるかと思ったら年3戦で、純粋にファンとしては外野からの厳しい声が悲しかった。
もっと強い走りが見たい。
様々な想いが重なって、福永騎手や陣営が背負うプレッシャーは相当なものだったと思う。レース後の涙が、それを如実に表している。気持ちは痛いほどわかったし、もらい泣きせざるを得なかった。

最後に素晴らしいレースが見られて心から安堵すると同時に、もっと見たいという気持ちが溢れる。
これからコントレイルには大きな仕事が待っているから、なんとも言えない。ただ、やはり……こういう気持ちになるのも競馬の醍醐味なのだろう。まだ競馬歴が浅いから慣れていないだけで、好きな馬との出会いは今後も続いていくはずだ。
とにかく今日は、コントレイルおめでとう、そしてありがとう、と言いたい。