GⅠということで予想に数日は頭を悩ませていたような気がするけれど、近年の競馬は馬の能力だけで決まることは少ないほうで、馬場と展開で着順が大きく変わる傾向にあることから、結局は当日の状況を見ないことには馬券を買いづらい側面がある。
今日の阪神は、極端な前残り馬場だった。
前日までの予想では穴を開けそうな差し馬を紐の候補として考え、点数を抑えるべく切る馬の選択に時間を費やした。
しかし、当日の馬場状況から先行する馬以外の評価は下げざるを得ず、展開予想は概ね二つのパターンに絞られることとなった。
まず、タイトルホルダーが逃げ、ディープボンドなど先行馬が競りかけてペースが上がり、前がバテバテになって後ろから差しが届くパターンだ。その場合は、ズブさがマイナスに働かずスタミナ豊富なディープボンドは馬券内に残り、他の先行馬は飛ぶ可能性が高いと思っていた。
次に、タイトルホルダーが逃げ、先行馬が競りかけず比較的スローで進み、前が止まらないパターンだ。その場合は、菊花賞さながらにタイトルホルダーの逃げきり勝ちも十分にあるだろうし、差しは届かないと思っていた。
いずれの場合においても、ディープボンドを外す選択肢はなく、それ自体は結果的に正解だったと言える。
残念ながら馬券は、血統と斤量で消していたテーオーロイヤルが善戦したことにより外れてしまったが……ともかく、このタフなレースで全馬が無事に完走できたことは何よりだろう。
よく見ると3段目に⑱がある気持ち悪いフォーメーションになっている。
買い目自体は変わらないから今回は問題なかったが、直前に慌ただしく購入して確認不足だったので、反省点としたい。
個人的に、展開を決めるポイントとなったのは、騎手の判断というよりは空馬の存在が大きいと考える。
スタート時に落馬して斤量0で走ることになったシルヴァーソニックが、なんと中盤から絶好位を確保してしまったのだ。本来あの位置は、先行したいアイアンバローズ、タガノディアマンテ、ディープボンドあたりの馬が取りたい場所だったはずだ。
自分のタイミングで、逃げるタイトルホルダーへ仕掛けることができる。そういう大事なポジションを挙動が読めない空馬に取られてしまい、ホームストレッチから向こう正面にかけて前に出していく動きがしにくくなった。
かくして、タイトルホルダーが最終直線まで自らのペースで悠々と走れる展開を作り、ほとんど菊花賞の再現を果たすことになる。
なお、シルヴァーソニックくん自身は非常に上手い競馬をしていたように見えた。結果的に後ろを走る他の騎手に控えさせる原因を作ってしまったけれど、馬の習性とはいえ外枠から自らラチ際に行って暴走せず最後まで好位で走り続けたのは見事だろう。もちろん、ちゃんと騎手が乗っていたら、ああいう自由な動きはさせてもらえないだろうが。
ゴール後に倒れている映像を見たが、疲れて休んでいただけだったようなので安心した。
それにしても、馬場とコースの影響も多分にあったのだろうが、タイトルホルダーとディープボンドの差が7馬身というのは意外に思った。着差は空馬が影響しているのは確実だが、それにしても大きい。
前者は展開がハマったとはいえ、想像以上に脚が溜まっていたのか、あるいは本当に化け物じみて強いのか。3200で逃げて上がり最速なんて、従来の常識では考えられないことだ。
後者は最終コーナーからの伸びが案外なところで、最後にテーオーロイヤルを交わしたとはいえ先頭とは突き放されているから、展開云々に関係なく、どうやっても逆転は難しかったのかもしれない。
ラップタイムは1000mが1:00.5、2000mが2:03.6、3000mが3:03.0ということで、露骨に中盤に緩んでいる。
上がり5Fのタイムは12.0-11.9-11.5-11.7-13.2と最後は流石に脚が上がっているけれど、長距離でこんな競馬をされたら後ろは届きようがない。
血統は父系こそキングマンボ系ではあるが、父母・母父・母母の祖先にはトニービン・モンジュー・ミルリーフといった欧州を代表する名が連なっている。
この圧倒的な逃げをロンシャンでも披露できるなら、凱旋門賞に手が届くのではないかと夢を見たくなる。
勝利ジョッキーインタビューで、横山和生騎手の嬉しそうな笑顔が印象的だった。
昨年は弟が活躍していただけに、心には強く熱い想いが秘められていたのかもしれない。ようやく手にしたGⅠタイトルの喜びは、この上ないものがあるのだろう。
今回はタイトルホルダーが強かったが、強い馬を順当に勝たせる能力こそ、最も騎手に求められていることなのではないかと思う。
今後のさらなる飛躍に期待したい。
来週からはステージを府中に移して、立て続けにGⅠが開催される。
毎週のように芝の状態が変化していくだろうから、これまで同様に天候を含め馬場状態には注視する必要がある。こういう視点は昨年の同時期には持てていなかったから、馬券は当たっていないものの成長は実感できるところだ。
備忘録がてら、現時点の本命候補だけ書いておこう。
NHKマイルC
◎セリフォス
ヴィクトリアマイル
◎ソングライン or ファインルージュ
優駿牝馬
◎サークルオブライフ
東京優駿
◎イクイノックス
安田記念
◎シュネルマイスター or サリオス