K's Graffiti

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SAOP冥き夕闇のスケルツォ感想

一週遅れになるが、10/22から公開されている『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ』を観てきた。
実はちょうど一年前の日記においても、前作『星なき夜のアリア』の感想を書いていたのだが、もう一年が経ったのかと思わずにはいられない。
私はSAO本編およびプログレッシブの原作を未読であり、既存のアニメはすべて視聴済の完全なる「アニメ勢」なので、感想は原作との比較ではなく初見に感じたことが中心となることを先に書いておく。

 

感染症関連で制作過程にゴタゴタがあったようで、予定よりも遅れた公開となったわけだけれど、まずは無事に観ることができた事実に感謝したい。
SAOは原作において2022年に発売ということで、いよいよ現実が追いついてしまったわけだけれど、それはそれとして2012年のアニメから見続けている身としては、今後の展開を温かく見守っていきたいという気持ちが強いのだ。

さて、今作についての感想を簡単に表すと……そこそこ良作ではあるものの物足りなさも感じる、といったところだろう。
というのも、前作『星なき夜のアリア』があまりにも良すぎたのだ。あれは昨年、というより近年のアニメ映画の中でも、個人的には非常に高水準な内容に感じられたので、それを基準にしてしまうと評価が下がってしまうのは仕方ないところではある。
もともと期待していなかったところに素晴らしい作品を見せつけられて、その続編となれば多少はハードルを上げてしまう。だから、悪くはないけれど期待には及ばなかったというのは、精一杯の褒め言葉ではあると思う。

ネタバレになってしまうから具体的には書かないけれど、以下は良かったポイントとそうでなかったポイントを、ぼんやりと挙げていく。
まず、作画のレベルは相変わらず高い。過去作の『オーディナル・スケール』や『星なき夜のアリア』と比べてどうだったかという話になるとまた評価は変わってしまうのだが、一般的なアニメ映画として考えた場合、良好であると判断するしかないだろう。
特に戦闘シーンの一部においては、そのカットだけで感動を覚えることができるくらい力が入っていたと思う。ここだけで、金を払って劇場の大画面で観る価値を感じることはできた。

一方で、気になったのは脚本部分であり、アスナとミトがメインだった前作とは違ってキリトとアスナの関係性が中心に描かれる構成になっていたのだが、正直なところお腹一杯ではあった。
二人のイチャイチャは本編で十分なくらいに描写されている上に、おそらく原作の展開的に盛り上がる要素の少ない箇所で、今さら中途半端な距離感で親交を深めていく様を長々と見せられても需要を満たすには至らないというか……つまり何が言いたいというと、もっとミトの出番を寄越せ、という話になる。
まぁミトはプログレッシブ原作には未登場の劇場版オリジナルキャラクターらしいから、扱いが難しくて下手に動かすわけにはいかないという事情もあるのだろうが、私が見たかったのは昨年の感想でも書いたようにアスナとミトの尊い関係性なのだ。
幸い、キーパーソンとして重要な場面では大きな役割が彼女に与えられていたから、ギリギリ及第点ではあると思うのだけれど、やはり前作比で言えば「物足りない」と言うしかない。
そして、今後もし続編が制作されるとしたら、はたしてまともな登場シーンが用意されるのだろうかという懸念もある。劇場版プログレッシブにおけるアスナとミトの関係性は、今作にて一件落着したという見方をするのが自然だし、仮にミトの存在が原作で描かれている話を邪魔するようなことになれば、さらなる続編においては活躍を期待できないかもしれない。

映画としては後半に見所が多くて余韻は悪いものではなかったけれど、前半はテンポが悪く茶番めいたシーンが連続していて、途中までは名状しがたい退屈感を覚えてしまった。
これが映画館ではなく自宅の環境で観ていたら、前半部分では集中力を欠いてスマホに視線を移す時間があったかもしれない。ひょっとしたら作品経験の少ない中高生は面白いと思う可能性は大いにあるけれど、多くの名作駄作を摂取してきた私の価値観では、これを全面的に喜ぶことはできなかったのだ。
盛り上がるシーンもあれば、そうでないシーンもある。メリハリはあって然るべきだが、落差が大きいとテンションを持続するのに苦労するため、もう少し隙のない構成を求めたくなってしまう。
繰り返しになるけれど『星なき夜のアリア』では序盤中盤終盤それぞれ形を変えた満足感を得ることができたので、今作も似たような経験を期待してしまった形になるわけだけれど、はたして欲張りだっただろうか。

こうして振り返ってみると作画と戦闘シーンしか褒めているところがないような気がするけれど、本当につまらなければ文句すら言う気にならないから、総合的な評価としては決して悪くはない。
ただ、ちょっと部分的な描写に退屈したり感激したりして、最後に若干の物足りない感覚が残っただけなのだ。
キリトが大好きとか、キリトとアスナの関係性にこそ強い価値を見出す人なら大満足かもしれないし、それぞれ好みによっては前作と今作の感想が真逆になると思う。
ここからアインクラッド編の完結まで続編が作られるのか現時点では不明だけれど、制作が続いていくようなら、いったん上がりすぎた期待値はリセットして、そこそこの期待度で待つことにしたい。

 

特典

特典のポストカードは昨年同様にアスナだった。
昨年はミト狙いでアスナを引いてしまったけれど、今年はミトのデザインで作られていないので、当たりかもしれない。