K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

生存記録(20240503)

両隣から物音が響きわたる最悪の一日だった。先日も書いた外国人については既に管理会社へと相談済みで、まあ返事が来るのは連休が明けてからになるだろうから、しばらく辛抱するしかない。一方の女について、このところ静かだったのは、やはり一時的に帰省していたからだったようで、いざ戻ってくると生活音が凄まじくて仕方ない。ただ、どうにも今日は様子が変だった。
朝から夕方まで、複数の声と激しい物音が断続的に発生していて、また友人を招いて騒いでいるのかと思ったのだけれど、それにしては会話の雰囲気や音の性質に違和感がある。やたらと出入りも多く、明らかにこれまでの騒音とは質が異なる。いったい誰が来ていて、何が目的なのだろう。ふと感じた疑問を解消するため、私はインターホンの機器に近づき、カメラだけをオンにした。自室の前という限られた空間だけだが、これで一方的に外部を監視することができる。答えはすぐに見つかった。捉えた映像からわかったことは、来訪者が隣人の両親であること、そして何か荷物を運搬しているということだった。
ひょっとしたら、しばらく留守だった理由にも説明が付けられそうだし、この春から生活スタイルが大きく変わって出ていくことになったのかもしれない。いや、ぬか喜びに終わる可能性もあるため期待しすぎてはいけないが、これを引っ越しの準備と考えることはできないだろうか。わざわざ親を呼ぶなんて、一人では困難な重作業が必要になったに違いない。頼むにしても、友人ではなく親というのがポイントだ。
午前中から夕方までガタガタと音を発生させ続けた隣の部屋は、夜になると静寂に包まれた。両親とともに出ていく姿を、ばっちり目撃できたのだ。夕食にでも行ったのか、そのまま実家へと戻ったのかは知らないけれど、ひとまず今夜は静かに過ごせそうではある。どちらかと言えば、直近のストレスは大半が反対側の男によるものだから、この女に対する個人的なヘイト感情としては一時的ほど強くはない。また以前のように音を立てるようになったら、その気持ちが元に戻るのも目に見えているけれど……男は今日も意味不明なほどの長話を昼から夜にかけて延々と続けていて、防ぎようのない反響音を強制的に聞かされているものだから頭がおかしくなりそうだった。深く考えずこんな住宅に決めてしまった数年前の自分も悪いが、隣人ガチャ失敗を繰り返している運の悪さに対しては、さすがに嘆いてもいいだろう。早く出ていきたい。