K's Graffiti

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虫に対する反応

あまりニュースを見ないので世間の流れと比べたら随分と速度感に欠ける話題かもしれないけれど、どうやら巷ではコオロギについての議論が活発に行われているらしい。
強く惹かれる内容ではないから、ざっくりと流し読みしただけなのだが、なんでも食糧危機への備えとして、たんぱく質の確保のために虫を食事に取り入れようという案が出ているらしい。

 

先に個人的な是非だけ書いておきたいのだが、普通に考えてリアリティのない、にわかには信じがたい荒唐無稽な話に思える。
これだけSNSで騒がれているのだから、実現可能性ゼロというわけではないのだろうけれども……昔の戦時中でもあるまいし、野生生活を余儀なくされるわけでもなく人間社会で暮らしていく前提なら、まともな神経を持っていたら思いつかないようなアイデアだろう。
ただでさえ虫なんて生理的な嫌悪感を覚える人間が多い存在だろうに、それをレギュラーメニューとして食するようになるなんて、既存の価値観では決して肯定することはできない。

ちなみに、私は食えと言われても断固拒否したいところだし、そもそも一部の虫に食感が似ていると言われる海老などの節足動物自体を苦手としているから、より一層、普通の人よりも険しい要求ということになる。
イナゴの佃煮が大丈夫だから平気という人もいるだろうが、それは佃煮の味付けが正義なのであって、別にイナゴである必要はないとも思っている。なお、私は佃煮の味も駄目なので、何がどうなっても虫を食べる流れを受け入れることはできないだろうと考えている。

 

まず味云々の前に、安全の問題がある。そこをクリアした上で、生理的心理的なハードルを乗り越えて、ようやく普及するかどうかといったレベルだろう。
本能的に刻み込まれた価値観を塗り替えるのは相当に大変だろうし、表向きは人口増加への対策となっているが、日本は人口減少の一途なので、そんな乏しい動機に乗っかって賛同する物好きはいないだろう。
いや、まさに虫が平気だという物好きだけが、安全が完全に保証された虫を食べてやらないこともない、程度の感覚で許容できるのかもしれない。

正直、肉体的にも精神的にも健康被害が生じなければいいという話でもあるから、味や風味や見た目に影響なく効率のよい栄養源として確立されるのであれば、無意識的に受け入れる余地は存在すると思っている。
パッケージに「虫入り」なんて書かれていたら、それだけで避けてしまいそうではあるものの、普通の人間は日頃から食べ物の成分を細かく調べているわけではないのだから、目立たずこっそり混ぜられていたら気づくことはない。
気分を害すことなく食費のコスパが上がるなら、結果的に幸福度は上がりそうなものだが……まず、当たり前のように虫の粉末のようなものが食品に混ぜられている状況を、今から常識レベルにまで昇華させるのは無理筋としか思えないので、やはりどう考えても意味不明な議論ということになる。
まぁ数十年後なら、時代に合わせた価値観の変化があるから期待値は低くないかもしれない。しかし、現代人には難しいだろう。