K's Graffiti

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膨らんだ話

食べ物に無関心だからこそ実現できる食事ローテーションの一部に、ホットケーキがある。
メーカーによって変わるものの、高級品を選ばなければホットケーキミックスの単価は一袋あたり100円を切っている一方で、エネルギーは700kcal前後となる。作るには卵と牛乳も必要だが、それでも非常にエネルギー効率が良いため、安価で食事を済ませたい場合に重宝している。

 

もちろん毎食というわけでも、毎日というわけでもない。流石に、そればかりでは栄養バランスが偏って身体に悪そうだから、頻度自体はせいぜい週に二度くらいのものだ。
ただ、それでも平均的な一般人よりは食べているほうだろう。
ホットケーキを常食するようになってから一年以上、ひょっとしたらもうニ年近くになるかもしれないが、これだけ日常の一環として作り続けていると、些細ではあるものの技術の向上を実感できないこともない。
基本的には書いてある分量の通りに作れば、誰だって同じものが再現できるはずなのだけれど、実のところに環境によって細かい部分で変化が生じる。
たとえば、火力に関しては夏場よりも冬場のほうが要求される。寒いのだから、焼けたり火が通ったりするのに時間がかかるのは当然の話なのだが、それによって微妙に出来上がりの感触に違いが生まれるのだ。
突き詰めると、生地に含まれる水分と焼き加減のバランスが肝要ということになる。しかし、その完璧なバランスは必ずも書いてある通りに進めても実現できないというのが、ホットケーキの面白いところだと思う。

なぜ、誤差が出てしまうのか。
まぁ「書いてある通りに」と言いながら、生地を一気にフライパンへと流し込む暴挙に出ているから上手くいかないという説は有力なのだが、小分けにして焼くのが面倒なので仕方ない。
それ以外だと、ホットケーキミックスが同一製品でない場合があり、目安となる牛乳の量が異なるため、仕上がりが変わってしまっているという考えもある。卵も若干、個体差があって、生地の粉と水分のバランスを固定化できない点については長らく悩んでいるところではある。
水分が多すぎると生地がサラサラになってしまい、膨らみにくく柔らかくなる。逆に少ないと火が通りにくかったり、フライパンに固着してしまって上手くひっくり返せなかったりする。あまりにもパサパサな食感は、味にこだわりのない私も食べるのを躊躇するくらいだ。

作る度に変化すること自体は、飽きを生まないという意味では悪いことではない。
けれど、振れ幅があるにせよ、どうせなら一定以上のクオリティで完成させたいという気持ちはあるのだ。
大した手間とは思っていないが、それなりに時間をかけて用意したのに失敗したとなると、少なからずショックを受ける。作ったからには消費しなければならないのに、低品質のあまり食べるのが億劫になると、もはや苦痛でしかないのだ。

 

今日のホットケーキは、素晴らしい出来だった。過去最高作と言っていい。
表示に従った分量と時間ではなく、これまでの経験に基づいて感覚的に作ったのだけれど、これまでと材料は変わっていないはずなのに、直径や厚みのバランスが完璧だったのだ。
店で出てきても違和感のない、最高のホットケーキだった。あまり甘いものを好まないので、特にシロップなどは使用せず、焼いたものをそのまま食べるのだけれど、どことなく普段よりも美味しくなった気がした。

定規で測ると、およそ3cmの厚さを誇っているのに、ふわふわして柔らかい。
厚みを追求するだけなら、直径の小さなフライパンにオーバー気味の量の生地を流し込めば簡単に出来るのだけれど、それでは中が生焼けになったり、焼き上がりの歯応えが粉っぽいというか、生地が凝縮されて詰まったような代物になってしまうため、端的に言うと不味いのだ。

とうとう、食感良好で分厚いホットケーキの作り方を習得してしまったかもしれない。
まぁ今回、たまたま何かが噛み合って出来ただけという可能性も否めないので、次に作るホットケーキのクオリティには注目していきたい。