K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

衣替え

入れ替えるほど多彩な衣服を所持しているわけではないため、実際には着替えただけという話なのだが、ともかく季節の移り変わりに応じて服装の程度を調整する人間特有の行動原理は、私にもちゃんと備わっている。
このところ、暑いというほどではないけれど、もう寒さを感じることはほとんどないというくらいに平均気温が上昇してきたので、流石に冬用の厚着では問題があるのだ。

 

恥ずかしながら、昨日までの私は一か月前と同じ格好をしていた。
あまり外出しないから、そもそも持っている服の数が少ない。いちいち考えるのも面倒なので、その日に着用する衣類の選択に割く脳内リソースは、ほぼゼロに等しいと言っても過言ではないだろう。
そんなわけで、上は4枚重ね、下は2枚という人によっては重装備と捉えられても不思議ではない耐寒を意識した服装から、それぞれ半分の状態まで布を減らした。
まぁ普通の感覚を持っていたら、今日に至るまでに不快感を覚えて我慢ならず薄着にするとは思うのだけれど、何しろ私は極端な寒がりであり、かつ暑さへの耐性は人並み外れたものを持っているという自信がある。
ゆえに、多少の気温上昇に対しては反応が遅れてしまうのだった。

ただ、いくら暑い環境に強いとはいえ、無駄に熱を纏う必要はない。我慢できないほどではなかったのだが、どうやら最近の水分消費量が増えているらしいという事実に、ふと気づいた。
基本的にお茶とコーヒーしか飲まない私だけれど、冬場は生命維持に必要な最低限しか摂取しないものだから、たとえば2Lのペットボトルを飲みきるには約10日前後を要する。
単純な話で、寝起きのコーヒーをコップ一杯、寝るまでの間にお茶をコップ一杯、それくらいで大丈夫だったのだ。
少なすぎるという風に受け取られるとは思うのだが、昔からの体質で、あまり飲まなくても平気な身体をしている。
もちろん、水分が足りていない時は口が乾くため、体内水分量の調整機構は問題なく機能している。そしてまさに、ここ数日の間に飲む量が増えたという流れがあったのだ。

水分を欲するなら、飲めば解決する。それはそうなのだが、水道水ではなくスーパーでお茶を購入している以上、安いとはいえコストが発生している。節約できるに越したことはない。
より水分を取り入れたくなっている原因は明確で、自分で気づかぬうちに体内の水分が汗となって抜け出てしまっているからだ。
春になり気温が上がることで、冬ほどは体内の水分を維持することが難しくなった。同じように過ごしていては、いずれ干からびてしまう。
感覚的には「暑い」と主張するほどではないにせよ、体内では確実に熱が生じている。水は気化する。より一層、飲みたくなる。
だから、脱いだ。着込んでいる布をパージすることで、その度合いを抑制することができるようになる。

 

ちなみに、この春モードは半年ほど続く。
昨年も一昨年も、確かそうだった。四月になり気温が上がるのと同時に冬着を捨てて、そのまま夏を越して秋まで生きる。やがて再び寒さに見舞われるようになったら、一気に冬モードへと移行する。
だから厳密に言えば春の装いではなく、冬から冬以外へと変化したというのが正しい。

春は本当に好きだ。わくわくする。
気温によるストレスがないというだけで、ここまで生きやすいなんて……これは直近の数年で強く実感するようになったことなのだけれど、それでは以前にどう感じていたかというと、よく覚えていない。
まるで、この二年ほどの間に、別の人間の身体になってしまったかのような……そんな気がしないでもないのだ。