K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

羅小黒戦記

「ロシャオヘイセンキ」と読む。中国制作のアニメーション映画だ。
世間では鬼滅人気ばかりが取り上げられているけれど、他に何かいい作品はないかと上映リストを眺めていたら見つけたもので、そこそこ観客も入っているようだったから、Twitterで評判を調べてみた。
ざっと見たところ概ね好評だったので、損はしないだろうと思い、さっそく観にいくことに。感想としては、期待を外れることなくとてもよい作品だと思った。

 

テーマは、人と自然との共存・対立という王道のもので、展開の持っていき方もありがちではあったけれど、大自然から都会へと色彩豊かにシーンが流れていくおかげで、少しずつ作品世界に入り込むことができた。
作画はほとんど手書きで主線が太めだったので、序盤は画面からやや大味な印象を受けたけれど、中盤以降は慣れてきて、激しい戦闘シーンなどではむしろ迫力を増す効果を高めていたようにも思う。CGを駆使した日本のアニメに慣れている私にとっては、少し懐かしい感じもした。

ポイントは、なんといってもキャラクターの魅力度が高いこと。吹き替え声優がことごとく「つよい」こともあって、作品を支える要素である作画・脚本・演技のそれぞれがバランスよくまとまっていた。
事前にキャストの確認はしていなかったので、この声は誰だろう、という私にとってはお馴染みの習慣も発動したけれど、メインキャストについてはほとんど正解した。ダメ絶対音感は衰えていないらしい。

結末は読みやすいものではあったけれど、ハッピーエンドと取るか悲劇と捉えるかは人それぞれかもしれない。個人的には、予定調和の流れだったので違和感は少なかったものの、これでは悪役に救いがなさすぎるため、「善」から見てもう少しモヤモヤした終わり方でも満足したと思う。まぁそもそも「悪」ではないのだけれど。
普通の人間と、人間に変化する妖精と、異能力を持った人間。三つ目の存在が強すぎるせいか、人間と妖精との関係は境界が非常に曖昧に見えた。終盤には化け物じみた能力者が次々と登場したけれど、あれは本当に人間なのだろうか。
人間が無力というのも、妖精が特別な力を持っているのもわかるが、それでは力のある人間とはどういう存在なのか。その疑問に対する答えはおそらく描写されていなかった気がするので想像するしかないけれど、まぁいい具合に考察箇所が残っていると思えば、コンテンツとしては悪いものではない。設定資料などが読めたら、きっと面白いのだけれど。

なんとなくではあるが、このところ随分と時間を吸われているゲーム「原神」にも近い雰囲気を感じて、中国が作り出す二次元コンテンツのエッセンスが、少しずつ自分の中に形をもって定着し始めている感覚がある。自然と人工物の狭間に対するイメージとか、それらに附随する音楽とか。

 

そういえば、最後のほうに突然出てきて強キャラ感を出していたナタちゃんくんが非常にすこでしたね……あれは久々に心の中に棲むオタクが疼くような魅力を孕んでいて、もっと出番があればいいのに、と思えるくらいに目で追ってしまった。
担当された水瀬いのりさんは演技幅がそこそこ広いけれど、中でもああいう演技は個人的な好みの上位に入るので、そこもグッドという感じ。

男性キャラのメイン二人は、どちらも耳を妊娠させることが得意なので、映画館という音響レベルの高い空間で二人の会話を聴くことができるだけで、もう鑑賞料金のもとは取れた気さえする。

本作は、もともとWebで公開されているFlashアニメの過去の物語(外伝的な感じ?)のようなので、今後また別の形で目にすることがあるかもしれない。
原作も吹き替えたうえで、テレビ放映なり配信なりしてくれたら、是非とも見てみたいところ。