K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

聖夜の戒め

年に一度の聖なる夜に、どのような文章を書こうかと数分悩んだ末、私は自らが犯した過ちについて反省することにした。
過ちと言っても犯罪とか変なことではなく、なんと表現すればよいものか……まぁ便宜的にゲームの勝ち負けのようなもの、という設定にしておこう。

 

なぜ今晩に限ってこんな日記を書かなくてはならないのか、本当に不本意なことなのだけれど、それはあまりにも精神に負ったダメージが大きかったものだから忘れてはならないという想いが非常に強くて、仕方のないことなのだ。
本記事を書くに至った過程で、私は食事を摂ることを忘れ、睡眠欲に抗い、結果的に最悪の結末を招いた。
最悪というのは、つまり数日前には予想すらしていなかった悲劇的な事態に陥ったということ。最終防衛ラインのようなものを無意識に決めていたにもかかわらず、それを容易に打ち砕かれて自身の甘さをかつてないほど自覚する羽目になったわけだ。
余計なことをしなければ、何もマイナスになることはなかったのに……と後悔しても過ぎたことは取り戻せないから、これは次の機会に向けた経験値なのだとポジティブに思い直すしかない。

そのゲームにおける今年の成績は、はっきり言って年初の想定以上の成果を上げていた。
一週間前の時点で満足していれば……というか一定の満足はしていたのだが、無駄に調子に乗らなければ……きっと今頃はもっと穏やかに安らかに、年末の時間を過ごせていたに違いない。
けれど、私は失敗した。
もう少し、もう少し、という風に変にこだわって終わらせることができず、気が緩んだ際に出たちょっとしたミスによって、これまでに積み上げてきた輝かしい結果を犠牲にすることになる。
基本的にゲームで勝つためには、長期的な視野を持って分析力を活かした計画に基づく勝負か、頭を使った咄嗟の判断力と瞬発力による勝負をする必要がある世界だから、甘いムーブをすると一瞬で命を刈り取られるような厳しさがある。もちろん何事においても絶対ということはないため、楽勝というケースもないわけではないけれど、あまりにも緊張感の欠けるパターンに慣れてしまうと、いざという時に対応が遅れて死んでしまう。

私は、これまでたまたま調子がよかったものだから、積み上げた戦果そのものを、敵に隙を見せる余裕であると勘違いしてしまった。どこまで行っても防具なんてなくて、裸のようなものなのに。これくらいのキズなら、いくらでも巻き返せる。まだいける、まだ……しかし気づいた時には、手遅れになりかけていたという次第だ。
ミスで切り捨てていいのはこれだけ、という事前に考えていた想定を遥かに超越する圧倒的な痛手に、じわじわと精神が崩壊していく気持ち悪さを感じることとなり、それと同時に正常な判断を行う思考能力を一時的に喪失したらしく、私は逃げることを忘れてさらに果敢に、もとい無謀にも立ち向かう選択をしてしまった。
そして、とうとう私という存在自体を脅かすレベルにまで致命傷を負った私は、ふと気づいたのだ。そういえば、何も食べていないし寝ていない。こんな身体ではもう無理だ。疲れた。
結果が出ないながらも粘りに粘っていた最前までの姿とは対照的に、ぷつりと糸が切れたように戦場との接続を断ち切り、とっくに夜が明けて朝日が差す部屋の中で、私はとりあえず朝食を摂ることにする。
脳にエネルギーが回ったせいか知らないが、そのタイミングでようやく冷静になることができた。いつもの思考回路が動き出す感覚を掴むことができ、やがて大きく悔いる感情が溢れてくる。
今まで何をやっていたのか、本当に信じられない思いだったけれど、私が支離滅裂に動いていたことは残っている履歴から明らかで、これはもう反省する以外に気持ちを落ち着ける方法が見当たらなかった。

一応、自分の名誉のために書いておくと、今回の年末の流れで一気に成果が削られた形になってしまったけれど、年内通算で計算すれば、これでも十分と言えるくらいの数字ではある。
じゃんけんで勝率八割を記録していた名人が、うっかり連敗しまくって七割まで落ちてしまった程度のものだ。まぁ本人にとっては最悪の事態に他ならないけれど、客観的に考えるなら最終的な成績でも文句のつけようがない。
だから、最後までに到る過程については不満ばかりであっても、手元に確保した現実は確かなものとして、いったん別物だと考えるほうが精神衛生上よいかもしれない。

来年も引き続き、この勝負は行うつもりではある。ただ、いきなり大負けしてしまうと立ち直れなくなるかもしれないから、今度こそ慎重に立ち回ることを徹底しなければならない。
あまり熱を入れすぎると生活に影響が出てしまうし、調子に乗らずほどほどにやる、ということを覚える必要がありそうだ。

ちなみに、最初に書いているが「ゲーム」は例えであって、実際に誰かと対戦しているとか、命のやり取りをしているとか、そういう話ではない。

 

それでは、メリークリスマス。