K's Graffiti

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アニメを見ることができなくなった

十年以上も前から続けてきた習慣なので、それが突然できなくなった時には、どうすればいいかわからないのも無理はないだろう。
今年の夏クールが始まって一か月が経つけれど、私はいまだに予定していたアニメのほとんどに手を付けることができていない。
時間にも体力にも余裕があって、以前ならば何も問題なく視聴できていたコンディションであるはずなのに、まったく身体が動いてくれず……こういう言い方が正しいか微妙なところではあるが、これはアニメオタクとしてのスランプのようなものなのかもしれない。

 

どうにか追うことができているのは、継続作品である『ひぐらし』と『東卍リベ』くらいのもので、他の新作には食指が動かない。
興味があったはずだし、六月の時点でチェックもしていた。あれは見たい、これも見たい、といつものように十本程度の視聴予定は出来上がっていたし、それなりに楽しみにしていた記憶もある。
しかし現実には、まったく進んでいない。一話を見ることすらできずに、見ようとしていたアニメの話数が延々と溜まり続けるだけ。

何が悪いのかと考えてみたけれど、少し前までアニメを見る時間は心身の不調とは切り離されたものだったので、たとえ無意識の領域に生活上の問題を抱えているのだとしても、それがアニメ視聴の習慣に直接的な影響を及ぼしているとは思えない。
すると、可能性がありそうなのは、アニメそのものに対する関心の変化くらいのものだろう。

娯楽に溢れた時代であるから、基本的にパソコンの前に座っていたら、時間を消費することに困ることはない。
特にYouTubeという存在は大きく、動画を好きなタイミングでいくらでも楽しむことができる。
従来のように、約30分弱の時間を拘束されるアニメ視聴のスタイルは、近年の「ちょうどいい動画」に慣れてしまうと、いくら長年の習慣とはいえスムーズに行うことが難しくなってきているのかもしれない。

あるいは、私の感性の変化という可能性もある。
特に深夜アニメを見始めた頃には顕著だったのだが、今では「くだらない」と簡単に切り捨ててしまえる性質のアニメでさえ心から純粋に楽しむことができていた。○話切りなんてしなかったし、事前に評判を調べることなんて滅多になかったのだ。
けれど、いつしかアニメにおける一定のパターンを覚えてからは「ああ、この手のアニメね」という風に、細部まで目を通していないにもかかわらず頭の中で勝手に分類して、肌に合わないジャンルは思考から除外するようになってしまった。
それ自体は、時間効率を追求しながら作品に対する熱量を高めるための手段として有効ではあったのだけれど、ひょっとすると究極的な最果てに待っているのは「アニメを見ないこと」なのかもしれない。

というわけで、すっかりアニメというものに対するモチベーションが失せてしまって、どうしたものかと悩んでいる。
何しろ、ずっと生活の一部であった習慣なのだ。モチベーションがないなら見るのをやめてしまえばいいなんて、そんな簡単に決断できるものではない。
この状態は今期限りの不調であって、秋になればアニメ欲が復活するというのであれば、それほど思い悩む必要はないのだろうが、そんな保証はどこにもない。
これは趣味を一つ喪失するかもしれないという、ある意味で死活問題であるため、容易に処理してしまえる話ではないのだ。
さて、どうしたものか。

 

昨日の夜のことだが、ふと思い立って、目についた新アニメの一話を見始めることにした。
これを機に調子を取り戻せれば、と考えていたのだけれど……残念ながら最後まで見ることができなかった。というか前半パートで見る気力を失って、中断してしまったのだ。
以前の私だったら絶対に取らないような行動に、流石に深刻な何かを抱えているのではないかと疑うようになった。

しばらく考えてみて、一説として浮上したのは次のようなものだ。
続きが気にならないアニメが見られなくなった、という説。
つまり、一話完結型の日常系のようなアニメに対して、苦痛を感じるようになったということになる。
似たような事象は過去に何度か経験があるのだけれど、「アニメ視聴」という習慣そのものが崩壊したことはなかったはずなので、今回が例外的な状態なのか、私自身が別物になってしまったのかは判然としない。
ただ、モチベーションという点で考えるなら、冒頭に挙げた二作品は抵抗感なく見ることができているし、どちらにも共通して言えるのはストーリーに連続性があって「次が気になる」という性質を孕んでいることだ。

新しい作品を見る気が起こらないのは、それがどういう内容なのか把握できていないことと、「続き」というものに意識を向ける土壌が出来上がっていないことが原因で、見ていないのだから当然ではあるのだが、「見ていないから見る気が起きない」という悪循環によってモチベーションが阻害されていると考えることができる。
だから、その悪循環からの唯一の脱出方法は、とりあえず見てみて「面白い。これからどうなるのだろう」というワクワク感を心の内側に作り出すことしかないのだろう。

思考整理はいくらでもできる一方で、身体や行動がついてくるとは限らないため、このまま一切の消化が進まなかった場合は、他に方法を考える必要がある。
今のところ無理がなさそうなのは、秋になってから三か月遅れで、面白そうな作品を一気に見てしまうことだ。上の条件に当てはまる作品なら連続視聴も苦ではないだろうし、求められるのは見始める際のエネルギーだけとなる。

それにしても、昨年の今頃は狂ったようにアニメ漬けだったというのに、どうなるかわからないものだ。