K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

三年という謎のこだわり

主に会社で言われることで、三年は続けたほうがいいとか、三年以内離職率とか、個人的にはどうでもいいと思うのだけれど、信じている人は結構多い。

 

ちょっと暇があったので、所属している会社の、私の同期がどんなものだったかと調べてみた。
一年以内に辞めたのが約9%、二年以内が約27%、三年以内が約36%……とまぁなかなかひどい有り様ではあるが、逆に言えば6割以上は続いていることになる。
一年目の9%は、多いのか少ないのか微妙なところだけれど、辞める理由としてはわかりやすい。単純に合わなかった、残業過多でつらい、給料が少なすぎる、など。転職するなら早いほうがいいという考え方も、よくわかる。
二年目で一気に増えているのは、やはり一年間は頑張ろうと思う人が多いのかもしれない。頑張った結果、やっぱり駄目だと見切りをつける。
三年目も似たようなもので、大して能力が身につかない現実と、増えるよりむしろ減り続ける手取りに嫌気が差して、もっとマシな環境を目指すということなのか。
結局、他人の事情はわからない。でも、なんとなく想像できてしまう。

実際のところ、とてもいい会社だと思っている。大企業なりに各種制度は充実しているし、社員に関しては全般的に人柄がいい。部署によって差はあるにせよ、居心地がよいと感じる人も少なくないはずだ。
ただ、明らかに新卒で入るには適していない。とにかく育成力がない。現場は人手不足気味で、成長するまで待てるような体質ではない。基礎能力の高さのほうが重宝される。
能力不足の人間は余計な作業を繰り返して残業が嵩み、能力のある人間には仕事が集中してさらに残業が増える。私のように、ほとんど定時で終えられる人は全体の中で僅か一握りだ。*1

給与については、三年目までに住民税が増えていく関係で、どこの新卒者も似たような苦労をしているはずだが、一方で会社によって昇給率には大きな差がある。
ただでさえ基本給が微妙なのに、三年目までの二回の昇給を合わせても、昇給率は平均すると2.3%に満たない。私は実家暮らしで貯金に余裕があるからあまり当てはまらないが、地方から出てきて独り暮らしをしている若手にとっては、どんどん生活が苦しくなっていくはずだ。
その分、残業で稼ぐ機会は多いような気もするけれど、残業しなければまともな給与水準に達しないという点で、つまり有限の時間を犠牲にする必要があるという点で、あまり望ましい労働環境とは言えないだろう。少なくとも私はそう思う。

階級が上がれば、同規模の企業の同年代比で平均的あるいは平均以上の給与水準になるようだが、そこに到達するまでには入社から十年以上の歳月が必要だ。
さまざまな可能性を持っている20代の若手が、この先の貴重な期間を薄給のまま拘束されることを考えると、いい具合に人生の岐路というものを考えさせてくれる。
印象では、社内の人口は階級が上がりきった40代が一番多く、きっと彼らが美味しい汁を啜っているのだろう。また、外から入ってきた人がかなり多い。そういう意味で、やはり新卒ではなく転職で入社するのが正解の会社だと思った。

ちなみに、一応は完全年功序列ではなく能力評価の制度があるのだけれど、高評価だったところでもともとの昇給幅が少なすぎるから雀の涙であるうえに、昇格すると各階級の最低水準になってしまう関係で、せっかく評価されていた分がリセットされてしまうというバグを孕んでいる。
そして何年か働いてようやく昇格することになっても、確か5%に届かない程度の昇給だったはずだから、本当に長く続けられる人しか得をしない。
消費税が上がってもベースアップなんてなかったし、人柄がよすぎるというのも考えものだ。顧客の奴隷になりがちなのも、たぶんそういうところが原因だぞ。
こういう話、あまり詳しく書きすぎるとコンプラに引っかかりそうで怖いのだが、これくらいなら大丈夫かな。

もっとも、意欲的に日々の仕事を楽しくこなせる人は、ずっと続けられるのだろう。次々と新しいことを学んでいきたいという上昇志向。会社の人間として生きていくという強い自覚。それらがあれば、悩むことは少ないのかもしれない。
あるいは、居心地のよさに依存して定年まで脳死で生きようとする人。中年まであまり増えない給料と、特に変化のない日常を受け入れられるのであれば、問題を起こさない限り比較的安定した生活ができる。

私は、純粋に面白くなかった。これ以上、こんなものに縛られるのは耐えられない。
だから続けようとは思わないのだ。

*1:人によって差が大きく運もあるが、私はとにかく自由時間を守る立ち回りをしていた。