K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

バレンタイン

昔から日本ではお馴染みの季節イベントとして盛り上がってきたバレンタインとかいう催しだが、私には語れるような経験がない。
どちらかと言えば、ふと心に浮かぶのは気分が沈むような思い出で……毎年この日になると、あれから何年が経ったのかと想いを馳せることになる。
今年は、もう二十年になるらしい。

 

家庭のプライベートな話になるから、具体的なエピソードを書くつもりはないし、長々と婉曲表現で引き伸ばすつもりもない。
ただ二十年前の今日、私の周囲に不幸があったというのは忘れられない事実なのだ。
学校から帰ると、母が悲しい顔をしていた。あの表情は今でもわりと鮮明に、私の記憶に残っている。

そういうわけだから、主にTwitterやソシャゲ界隈で盛り上がる今日という一日に、特別な好感はない。
別に悪いという話ではない。ただ昔の出来事を思い出すだけの、なんでも日なのだ。日常で関わる相手のいない私からすれば、周囲で妙な動きが発生することもないし、唯一メリットを挙げるとすれば、ひたすらにバレンタインのかわいいイラストがTL上に流れてくることくらいのものだろう。
まぁできれば私も、年中行事に合わせたイラストを描いていきたいのだが、意識しすぎると一年中アレもコレも描かなければという強迫観念に駆られかねないため、あえて考えないようにしている側面がある。
そういうイラスト催促用のイベントカレンダーみたいなものがあればいいのだけれど……気づかぬうちにその日を迎えていたということが多いから、仮に年中モチベーションが高かったとしても、いい加減な私には難しいかもしれない。

 

そういえば、随分と前の話になるが、学校でチョコレートを食べている少年がいた。これも記憶に収められたシーンの一つで、印象的だったものだ。
その少年は、親しい女子に貰ったらしきチョコレートを口に入れる。嬉しかったのだろう。この手のやり取りにあまり興味のない私も羨ましく思ってしまったくらい、微笑ましい光景だった。
しばらくすると、その少年に事件が起こった。鼻からポタポタと鮮やかに血が滴り落ちる。咄嗟にティッシュを取り出して止めようとするけれど、止まらない。ちょっとした騒ぎになった。

そういう体質の人間がいるということを、その時に初めて知った。
チョコレートに含まれるカフェインの興奮作用により血行が促されて、鼻の粘膜にある毛細血管が切れてしまうのだとか。細かい仕組みは知らない。しかし、それは生きるのが大変そうだと思った。
私は普段チョコレートを食べることは滅多にないけれど、コーヒーはほとんど毎日のように飲む。カフェイン耐性が低い体質だったら、そもそもコーヒーを愛飲するようにはならないという話はあるが、他にもお茶などカフェインが含まれている飲食物はそれなりに多い。
日常的にお茶かコーヒーしか飲まないから、カフェイン断ちするとなると、飲めるものがなくなってしまう。
甘いものはそれほど好まないから、チョコレートが駄目ということになっても困りはしないが……スーパーに行ってもお菓子コーナーには目もくれない珍しいタイプなので、普通の人からしたら退屈な人間に見えるかもしれないが、そういう風に育ってきたから仕方ない。

みんなが喜んでいることや楽しんでいることに、つくづく共感しにくい子供時代だったことを思い出した。
まぁそれは今も変わらないか。