K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

ドバイ

夜から深夜にかけて、ずっとグリーンチャンネルを見ていた。
日曜日の日記は高松宮記念の回顧も書きたいから、ドバイについて書くにはこのタイミングしかなく、もはや珍しくもなくなったアップロード時刻を大幅に遅れた更新となる。
複数の大きなレースが行われ、多くの日本馬が出走し、そして劇的な結果を残した。久しぶりに競馬を見て心が震えたような気がする。

 

全レースについて言及していくと長くなりすぎてしまうから、ここではターフとシーマクラシックの二つについて感想を残しておきたい。
ちなみに、今回は海外レースということで、美味しいオッズで買える可能性を検討したけれど……ドバイは香港やフランスと違って日本馬が強い傾向にあり、馬券的に大きく勝つのは難しいと判断して、何も買わず好きな馬を応援するだけの観戦に徹することにした。
おかげで、純粋に楽しめたような気がする。

 

ドバイターフは、なんと言ってもパンサラッサの逃げが通用するのかどうか、という点に最も注目していた。
日本と同じように走れるかはわからないけれど、逃げて複数の重賞を勝っている実力が本物なのか……派手に大逃げしてくれたら面白くなりそうだと思っていたが、実際には溜め逃げという形になったから道中は少しハラハラした。
一方で、日本のマイルで強い実績を残してきたシュネルマイスターの活躍にも期待していた。パンサラッサの逃げ切りか、シュネルマイスターが差してくるのか……いずれにせよ日本馬同士で勝ち負けの展開になったら、非常に熱い。
オリンピックなどには興味を示さず、愛国心に欠けるような考え方をすることの多い私だけれど、普段から趣味として馴染みのある日本の馬たちが活躍する姿を見るのは嬉しい。不思議なものだ。

結果は、現地の有力馬とパンサラッサが同着、ハナ差でヴァンドギャルドが三着となり、直線で思ったほど伸びなかったシュネルマイスターは残念だったけれど、とても盛り上がるレースになったように思う。
昨年のダービー然り、ウオッカとダスカの秋天や、古くは1999年有馬記念における最強の二頭など、ほとんど同着に等しい僅差の決着は、見ていて満足度の高いレースになりやすい。
たいてい、どちらかに軍配が上がるものだが、写真判定で優劣が付けられないのだから神がかり的なタイミングだ。凄い。
あの展開で逃げ粘ったことで強さが十分に示されたことだし、パンサラッサは今後もいくつか重賞を勝てるのではないかと思う。ジャックドールとぶつかったら、どうなるのだろう。

なお、恥ずかしながら昨年に好走したヴァンドギャルドにはあまり視線を向けることがなかったのだけれど、最後に突っ込んできて驚いた。
馬場が合っているのだろう。リプレイを見ると良い脚を使っていたし、惜しかった。ほとんど勝ちと言ってもいいくらいだろう。
日本のコースでは難しいところがありそうだけれど、馬場選びを慎重に上手く海外で使っていけば、もっと勝てるのではないだろうか。

 

ドバイシーマクラシックは個人的に最注目のレースであり、日本の中距離で活躍する一線級が複数出走するということで、数週間前から楽しみにしていた。
あまり海外の馬には詳しくないから、レース中はほとんど日本馬しか見ていなかったけれど、結果的にはそれで正解だったと思う。
昨年のジャパンカップで好走した二頭が先行してペースを作り、最終直線では位置取りの優位を活かして入線という、ある意味で理想的な競馬だったように見えた。
特に、新馬戦から応援しているシャフリヤールは馬券を買うなら大本命にするつもりだったくらいなので、ジャパンカップでは届かなかったオーソリティを交わして、強力な追込馬をクビ差で凌ぎきったゴールシーンには、思わずガッツポーズが出てしまった。
心から応援している馬が期待に応えて走ってくれる感度は、何物にも代えがたい。これこそが競馬の本質的な醍醐味の一つなのだと、あらためて感じる。

世間ではシャフリヤールが成し遂げた偉大な記録に注目が集まると思うが、紅一点で入着したユーバーレーベンの頑張りも良かった。
オークス以降は勝ちきれない走りが続いているけれど、レベルの高いレースで堅実な結果を残しているのだから力があるのは確かだと思うし、いつか展開がハマれば勝利が舞い込んでくることもあるのではないかと思う。
脚質的な重い印を打つのは躊躇われるタイプの馬ではあるものの、密かに応援は続けたいところだ。

 

ややズレた話になるが、ジャパンカップの上位馬が海外のGⅠで見事な結果を残したという点は、個人的に嬉しく感じた。
というのも、シャフリヤールやオーソリティが強い馬だと確かに認識されるようになれば、自然とコントレイルの評価も上がるからだ。
コントレイル大好きマンとしては、昨年の春から秋までの散々な言われように、しばしば心を痛めてきた。本当は物凄く強い馬なのに、諸々の要素が噛み合わなくて「無敗の三冠馬」という幻想めいた期待に応えられず、不当に軽視される空気が蔓延していたのは、今でも意味がわからない。
だからこそ、あのジャパンカップの価値が大事なのだ。レースレーティングに対しては賛否あったようだけれど、今夜の結果で海外からの評価が正しかったことが証明されたような気持ちになる。

日本馬の活躍、シャフリヤールの力強い勝利、その他の上に書いた諸要素による感情が複雑に合わさって、しばらく心地好い放心状態を経験することができた。
馬券で一喜一憂する興奮も悪くないけれど、そうではない形で楽しむことも十分に可能なのだ。
この余韻を維持したまま、今夜は布団に入ろうと思う。