K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

今年初の映画

年々、時間の経過速度が上がっているように感じられるのは、おそらく人類に共通の抗えない運命なのだろうけれど、いつの間にか今年も六月ということで、意識を改めていかなければならない。
先日、映画の予定を入れた話は日記に書いたけれど……ふと、映画鑑賞の記録を調べてみたところ、最後に観たのが昨年の十月末だった。なんと、今年に入ってから初めてということになる。
いくら出不精が極まっているとはいえ、これでは映画好きを名乗ることなんてできないだろう。

 

引きこもりの性分は、映画鑑賞のスタイルにも影響が出ている。どうせ映画館に向かうのだから、一度に複数の作品を見てしまおうと考えるのだ。
なるべく間隔が空かないように、連続して別作品の予約を入れる。過去に何度も経験のあることだから、私にとって珍しい行動ではないけれど、流石に久々の映画館ということもあって、体力的な心配が少しだけあった。
結論から言うと、体力面には問題なかったし、途中で眠くなることもなかったけれど、痩せ型の宿命である尻の痛みから逃れることはできなかった。なるべく動かず、じっとしていたい気持ちとは裏腹に、体勢を変えなければ尻が痛すぎて集中できなくなる。
こればかりは、一般的な体型の人間には共感されない特性だと思う。

 

さて、今回は『シン・ウルトラマン』と『トップガン マーヴェリック』の二作品を鑑賞してきた。
それぞれ、しっかり噛み応えのある映画だったので、感想を書こうと思ったら長々と個別の記事にしてしまえる気がするけれど、そこは体力との兼ね合いで、頭に残ったイメージを忘れない程度にアウトプットするだけに留めておこうと思う。

まず『シン・ウルトラマン』だが、面白かった。そう、面白かったのだ。
ただ、なんと言うべきか……何かと随所にコメントしたくなる作品だったのも事実で、手放しに絶賛という感じでもない。
どうやら私は無意識のうちに『シン・ゴジラ』のようなものを期待していたようなのだが、そもそもウルトラマンゴジラは別物であって、単純に比較するべきではないのだろう。
ゴジラは、どちらかと言うと大衆受けする魅力が豊富だった。一方でウルトラマンは、ニッチ寄りの雰囲気が強くて、楽しむためにはまったく異なる形の心構えが求められるように思った。
どちらが優れていて、劣っているというわけではなく、ただコンテンツとしての在るべき姿を探った結果という感じだろう。

観ていて気になった点は、やや台詞や演出にわざとらしいところがあり、そういう表現が一度ではなく何度も使われていたので、少し作品世界に置いていかれた感があったところだろう。
自然であることが絶対的な正義ではないけれど、不自然さを感じることは別に罪ではない。私の感性には、そう映ったという話だ。
そういえば、やたらと顔のアップが多かったのが思い出される。あまり、他の映画では見られないようなカットが多かった印象で、どうにもストレートには心の中に入ってきて繰れないような、もどかしさがあった。
また、登場人物の性格や言動……キャラクター設定や口調などに、二次元的なものを感じたことにも触れておきたい。上に述べた「わざとらしさ」や「不自然さ」とも関連する話だけれど、おそらくアニメであれば、大きな違和感なく飲み込むことができただろう。
まぁ私が久しく特撮というものを楽しむ機会から離れているせいで、本質的に見るべきポイントを見誤っていた可能性は低くない。

ただ、それにしたって状況に対する危機感が低すぎる気はした。眼前にカイジュウが迫っているというのに、はたまた地球の命運を左右する状況の渦中にいるというのに、どうにも緊張感が足りない。
これはこれで、エンターテイメントとして捉えるなら悪くはない。そこに生じるシュール感は、確かに慣れない面白味として評価できる。ただ、緻密なドラマとは言いにくいところがあった。
そんな中でも、ウルトラマンと異星人との対話シーンでは、生命というものについて問うようなところがあり、非常に趣深く思った。何しろ、人間の登場人物がことごとく脚本の操り人形であるのに対して、人類に脅威をもたらし得る外的存在こそが最も人間味を溢れさせている。なんとも皮肉めいた構図だ。

あとは、ところどころ聞き取りづらい部分があったし、部分的に情報量が過多になるシーンがあったので、大筋は理解できたけれど字幕が欲しかった。
私はウルトラマンシリーズを幼少期に少しだけ親しんだ程度であり、詳しいオタクではない。かなりオマージュが多いらしいのだが、細部は随分と見落としてしまった感が否めないため、決して考察する領域には至っていないだろう。
そういうわけで、意図せず文句ばかりになってしまったけれど、最後に主張したいのは、決して面白くなかったわけではないということだ。
積極的に他人に薦められるかどうかはさておき、個人的な価値観においては疑いなく好きと言ってもいいくらいだった。満腹感は強い。

 

次に観た『トップガン マーヴェリック』だが、こちらは対照的に、わかりやすく面白い映画だったように思う。
話の大筋は王道そのもので、特に終盤の手に汗握る見どころは観ているこちらの心拍数まで上がりそうなほどハラハラした。
この先には、どんな展開が待っているのだろう。そういう期待を裏切らないところが、名作たる所以というか、揺らがぬ凄味であるように思う。
そもそもの話として、本作で描かれるような展開が嫌いな人間はいない。戦闘機を自在に操るカッコよさと、熱い人間ドラマといった二つの魅力に挟まれて、気づかぬうちに作品世界へとのめり込んでいた。
初めは、人間関係や世界観の把握に頭を使っていたはずなのに、次第に考えなくなっていった。圧倒的没入感の前には、もはや感じるしかなくなっていたのだ。
心から楽しかった、面白かったと絶賛できるのは、いつ以来だろう。余計な言葉は必要ない。とにかく全身で味わえる素敵な映画だった。

過去作を予習しておけば、もっと楽しめたたろうに……そう思わずにはいられない。
登場人物とその過去について知っているだけで、様々なシーンの魅力がグッと増したはずだった。細かいシーンの意味など、途中からは気にならなくなったけれど、やはり時を経て作られた続編には変わりないので、あらかじめ諸要素を頭に入れておくことは全力で楽しむ上では大事だったはずだ。
もし今後、暇があれば過去作『トップガン』を味わう機会を作りたい。

 

ウルトラマンが鑑賞後に考えさせる作品だとしたら、マーヴェリックは心を満たし余韻に浸らせてくれる作品だ。
この順番で観たのは、きっと正解だった。前者の感想はいくらでも出てくるけれど、後者は一切の文句がない分だけ、とても儚いものだ。
だからこうして、しばらく幸せな気分になることができる。良いものを観ることができたというポジティブな気持ちで、今日という日を終えることができる。

特段、トム・クルーズのファンというわけではなかったけれど、ミッション・インポッシブルの新作が楽しみになった。