競馬を本格的に予想し始めてから最も難解だったと言えるかもしれない皐月賞だが、終わってみれば納得のいく決着だった。
いつもそうだ。予想段階では何が勝つのかわからないというのに、結果を見れば「知っていた」となる。だったら、最初からその通りに買えばいいのに……まぁそう上手くいかないのが競馬の面白いところでもある。
最終直線に入って後方から一気に差し切り勝ちという展開は、先週の桜花賞で見たような気がするわけだけれど、そこに至るまでの過程は随分と異なるものだった。
桜花賞は前が止まらない馬場に反して圧倒的な能力で捻じ伏せる競馬、一方の皐月賞は重馬場のハイペースにより前にいた馬が総崩れの中で、消耗を抑えつつ荒れていない外から展開利を活かして末脚を伸ばした形になる。
どちらも、普通なら2着馬が勝っていたという点は似ているため、勝ち馬が抜けて強かったのは確かだろうけれど、現時点での突出度合いは牝馬路線のほうが明瞭だと私は思う。
とはいえ、ここまで無敗で皐月賞を制覇、完成はまだ先という話から今後の成長も見込めるとなると、やはり三冠を期待してしまうものだ。
2020年のように、ひょっとしたら牡馬牝馬ともに三冠馬が誕生する年になるのかもしれない。
ソールオリエンスの走りを見ていくと、重馬場の最内枠ということもあってスタートはあまり出ていかず後方になってしまったが、騎手が冷静に外側へと誘導して馬のリズムを重視しているのがわかった。
中山でほとんど最後方という位置取りは、普通のレースなら絶望的でしかないのだけれど、今日の馬場とペースなら逆に絶好位になっていたのだろう。
終始、外を回るロスでさえ、これだけ上がりのかかる展開なら溜めた分で収支が上回る。まだ戦歴が浅いため競馬における自在性という点はわからないけれど、今回に関しては馬自身の持ち味が存分に発揮できる競馬になっていたのではないだろうか。
より強みが活きるであろう日本ダービーでは、ほぼ間違いなく1人気に支持されるだろうし、流石に期待せずにはいられない。
2着のタスティエーラは、非常に惜しい走りだった。中団よりも前の位置から伸びているのはこの馬だけで、道悪が得意だったサトノクラウン産駒らしい好走と言える。
共同通信杯から弥生賞というローテは近年のトレンドに反するため、なかなかに厳しい気はしていたのだが、それでここまで走るのだから相当にタフな馬なのかもしれない。
追って一気に伸びるキレは持ち合わせていないものの、持続力のあるタイプなので、とりわけ今年の皐月賞はマッチする舞台だったはずだ。もし、道中のペースがコンマ数秒ほど緩やかであれば、あるいは勝っていたかもわからない。
ダービーでは、スローペースなら難しい気もするけれど、皐月賞ほど極端なハイペースにならなければチャンスがありそうに思える。
3着のファントムシーフは、人気馬に乗るルメール騎手ということもあって軽視するわけにはいかないと思っていたが、しっかり好走してくれた。
ストライドが大きいため馬の適性は府中向きだろうし、重馬場がプラスに働いていたとは思えない中でも最後に伸びることができたのは、ハイペースを読んで下げた騎手の好判断もあったのだろうが……向こう正面で落鉄していたというのだから、やはり世代における実力は上位と言っていいだろう。
一気に伸びるような武器はないけれど、器用に競馬できそうな馬なので、ダービーでも2着3着になる確率は低くなさそうに見える。
4着メタルスピード、5着ショウナンバシットは、失礼ながら予想の段階でほとんど視野に入っていなかった馬なのだけれど……まぁ中団より後方から展開を味方にした善戦という印象で、条件が変われば上位馬に対抗するのは難しそうに思える。
逆に言うと、下位に沈んでいても、ハイペースのせいで潰れてしまった馬に関しては次走で人気が落ちれば十分に狙えるだろう。フリームファクシやベラジオオペラあたりは、ミドルペースなら上位に食い込んでいたのではないかと感じた。
一応、軽く買っておいた馬券は、当初の印が悪くなかったにもかかわらず外れた。
オッズの兼ね合いで1枠1番のソールオリエンスを外してしまったのが敗因だけれど、こういう展開になるとは思わなかった。まぁ購入した3連複は非常に安い払戻額だったから、馬券が外れたこと自体はそれほど悔しくない。
インタビューで輝く武史の笑顔には、この馬券代よりも大きな価値があった。
清々しい笑顔。本当に嬉しそうにしながらレースと馬のことを話す若手には、どうしたって今後の期待感が高まるし、純粋な競馬ファンとして楽しみが増したので、ありがたい限りだ。
ダービーには別路線からの馬も参戦してくることだし、ますます混沌と化すかもしれない牡馬クラシック戦線だけれど、今のところはソールオリエンス軸でいいのではないかと思っている。
強い馬が、見たいのだ。
