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天皇賞(秋)2023予想

秋の天皇賞は東京2000mというコースで行われるため、王道レースと言われることが多い。実際、過去の結果を振り返ってみると上位に名を連ねるのは名馬ばかりなので、順当に強い馬が勝ちやすいレースなのは間違いないだろう。
しかしながら、トリッキーなコースであるという話も同時に存在している。スタート直後にコーナーがあり、位置取り争いの激しさから枠による有利不利が発生しやすいからだ。ここだけを部分的に切り取れば、まるで有馬記念のようであり……広い府中のはずなのに、小回りの中山2500mとの間に相関があるというは、競馬の面白いところだと思う。

 

圧倒的な人気で支持されている世界ランキング1位のイクイノックスもまた、昨年に秋天有馬と輝かしい結果を残した名馬だ。
まぁ普通は、いくら斤量の恩恵を受けられるとはいっても3歳馬が古馬に太刀打ちするのは難しく、一昨年のエフフォーリアまでは長いこと好走例が出ていなかったわけだが、近年は早いうちから高い完成度を目指して育成するのが主流となっているため、非常に突出した才能を持つ馬であれば十分に戦えるというのが現代競馬の傾向だと考えられる。
ただ、今年は珍しいことに3歳馬も牝馬も出走しないため、全頭が58kgの対等な条件でレースを迎えることになる。すなわち、いつにも増して強い馬が好走しやすいのではないかと思われるのだ。
そういうわけで、本命がイクイノックスになるのは仕方ない。どれだけオッズが下がろうとも逆らう意味がないくらい、その実力の高さは火を見るよりも明らかだろう。

イクイノックスは確定として、ドウデュースも馬券外に敗れる姿が想像できない。すると、3着候補としてどの馬を選ぶかが一般的な競馬ファンの悩みどころだとは思うのだが、実は一週間前の時点では極めて簡単な話だった。ここにスターズオンアースの名前さえあれば、3連複1点で済むレースだったのだ。
脚部不安は生死の問題に直結しかねないため、陣営の判断ならば受け入れるしかない。しかし、スターズオンアースにとってはようやく訪れた適性ドンピシャの舞台であるだけに、走ることができないという事実はファンとして残念以外の何物でもない。
本命か、少なくとも対抗の予定だった。

空いた馬券内の枠に何が収まるのか、これは各予想家が手腕を問われる課題とも言えるだろう。
レース展開は毎年の出走馬によって変わるものの、よくありがちな秋天の傾向としては、直線の加速力勝負になることが多い。ダービーやジャパンカップの2400mでは、後半5Fないし6Fの持続力が問われる展開になりやすいのに対して、こちらは一瞬の脚が勝負を分かつ。前者が米国的なスピードが活きる一方で、後者は欧州的な瞬発力が要求される、と言えばわかりやすくなる。
おそらく、よく研究している人にとっては常識レベルの知識なのだろうが、秋天というのは、いわゆる府中の傾向とは違った要素が介在することになる意外なレースなのだ。

そういうわけなので、まず狙いたいのは血統に欧州要素を持つ馬ということになる。一瞬のキレに優れた馬だ。
もちろんイクイノックスは日本と欧州血統の結晶のような馬だし、ドウデュースにもトニービンが入っていて瞬発力が豊かなのは誰もが知っている。まぁこの両者は単純に地力上位のため、道中のラップに依存せず、持続力・瞬発力どちらに寄ったとしても大きく崩れることはなさそうなので、私の脳内シミュレーションではどうやっても外すことができなかった。

あまり多くはないパターンではあるが、動き出しが4コーナーではなく、ジャパンカップのように3コーナー付近からの場合、持続的な脚が問われることになる。馬券を考える場合、上位2頭が不動である以上は、念のため持続力のスピード勝負に優れた馬を押さえておくべきだと考えた。
したがって、印は以上の前提で評価した形になる。

天皇賞(秋)2023予想

△ダノンベルーガ
△ガイアフォース
どちらも血統構成は父サンデー系に母系が米国型ということで、なんとなく似ている部分はあるものの、どちらかと言えばダノンベルーガは瞬発型、ガイアフォースは持続型だと見ている。
ダノンベルーガは勝ちきれない競馬が続き、流石にGⅠでは足りない印象が拭えないものの、昨年は後続ドスローの展開からイクイノックスに次ぐ上がりの速さで3着に入っているわけだし、今年も空席となった3着を狙うのであれば可能性は十分にあるだろう。
ガイアフォースは高速馬場に強いマイラー気質を備える馬で、かなり速い時計で決着するようなら見込みありと考えている。直線ヨーイドンになったら置いていかれるだろうから、あまり期待値は高くない。

▲プログノーシス
プログノーシスは、自分の中で評価が上がったり下がったりしていて扱いに困る馬だった。
安定して上がり最速を出せるのは魅力的だけれど、前走の札幌記念のようなパフォーマンスが、はたして初めての府中で出せるのかは微妙なところだろう。
スタートが良いほうではないし、いくら欧州的な特性が強い馬とはいえ、ペースによっては差し届かない可能性を考慮する必要がある。
イメージとしては、ディープ産駒で唯一このレースを勝っているスピルバーグ、あの年は淀みない流れから究極の上がり勝負を後方からぶち抜いているわけで、それを期待したい。

◯ドウデュース
ドウデュースは、言うまでもなく現在の競馬界におけるトップホースだろう。海外遠征では不運もあり、ここまで思うような結果が出ていないものの、国内レースに限れば白眉のパフォーマンスを見せている。
ダービーでは最強馬イクイノックスに勝っているわけだし、今でもドウデュースこそが世界最強に相応しいと信じているファンも少なくない……そんな雰囲気を各所で感じるのは気のせいだろうか。
しかし、個人的には今回のレース、コース条件やローテーションなどを総合的に考えると、イクイノックスに軍配が上がるのではないかと思った。
まずドウデュースは、使って強くなる叩き良化型の面があることを思い出す必要がある。使い減りするイクイノックスとは対極の馬だ。昨年の春に最も仕上がっていたのは、弥生賞皐月賞の後に走ったダービーだったわけで、今年の秋もジャパンカップ有馬記念という予定を残している以上は、まだ完全体ではないと推察する。
また血統を比較すると、こちらはより持続力に強みがあると思われるため、イクイノックスを倒すならジャパンカップのほうがより適した舞台だろう。
もっとも、凄まじい成長力によって怪物と化していて、あっさり勝ってしまう展開があっても不思議ではないとも思っている。

◎イクイノックス
イクイノックスは、どうにもここが最後の買い場のような気がしている。というのも、宝塚記念はお世辞にも良い状態とは言えず、事実ギリギリの辛勝だったわけで、昨年の有馬や春先のドバイとはパフォーマンスが雲泥の差だった。成長力を期待されているけれど、実はピークアウトしていて下降線を辿っている最中なのではないか……そんな説も、ないわけではないだろう。
大事に使われてきているから、まだ能力は維持できているとは思うし、フォトパドックを見る限りでは前走よりもずっと体調は良さそうに感じた。昨年に勝っているレースなら、問題なく力を発揮できるだろう。
GⅠを連勝して、これだけ世界で評価されている馬なのだから、次を見据えていたとしても、いい加減な出来では出してこないはずだ。持っている能力からも、コースと血統の相性からも、好走は確約されているようなもの……と考えれば、ここは本命視しておくのが安牌としか思えない。
余談だが、その一方で、世間ではメイチだと言われているジャパンカップに向けては、今のところあまりポジティブな見方ができていない。そもそも短い間隔で使えない体質なのに……それでいて、ドウデュースだけでなくリバティアイランドといった強力なライバルが出てくる。今年で引退という噂があるけれど、妙に納得してしまった。
そうした邪推も込めて、しっかり強い走りを目に焼き付けておきたいという気持ちから本命にしているところはある。

なお、逃げることが予想されるジャックドールは消し評価にせざるを得なかった。
大阪杯はほぼベストの走りができたにもかかわらず、展開的に不利だったスターズオンアースにハナ差まで詰められている。安田記念はともかく、札幌記念では大した見せ場なく沈んだわけだし、秋天は昨年にキレ負けした舞台だ。
大逃げできる馬ではない。スローの引きつけた逃げでは同じ轍を踏むだけだから、選択肢は後続に脚を使わせる若干のハイペースといったところだろう。けれど残念ながら、いずれの展開にしても3着以内に粘れる気がしなかった。
私が思っているよりもこの馬が強いという可能性よりは、最上位クラスでは普通に力が足りていないという可能性を信じたい。ただ、それだけの話だ。個人的な予想から省く理由としては十分だろう。

 

せっかくの好メンバーが揃ったのだから、記念の意味でも軽い馬券くらいは……と思わないでもないけれど、この少頭数にこの人気の偏りでは、どうやっても馬券としては面白くならない。やはりケンが正解だ。
一応、エア馬券の買い目だけ置いておくが、直前までオッズが変動しそうなので難しい。

3連単 フォーメーション(5点)
⑦➝③➝④⑤⑨
⑦⑨➝⑦⑨➝③

オッズ的にはプログノーシスの激走に期待したいところだけれど、こういう時の川田騎手が何をしてくるのか、なかなか難解で困る。
普通に人気馬で決着するなら、単純にレースとしての満足度が上がるから、それはそれで良い。