K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

生存記録(20231130)

初めての経験だった。私は非常に神経質なので、些細な物音に反応せずにはいられない面倒な人生を歩んでいるのだけれど、そのせいで寝付きは悪いし熟睡しにくく、自ら設定したアラームが鳴る前に目を覚ましてしまうことも珍しくない。今日の寝起きも、まさに予定よりも早い起床だったわけだが、しかしながらその原因については過去に例のないパターンだった。
外的要因により覚醒することは多い。一方で内的要因となると、どうだろうか。たとえば、腹痛に耐えかねて飛び起きる、なんてことは何度か経験がある。昔から睡眠中には尿意を感じない体質のため、実はトイレに行きたくなって起きることは極めて稀なのだけれど、それでも一切ないわけではないのだ。ただ、今回は違った。
厳密に、身体の内部の問題と言っていいのか微妙なのだが、音がしたのだ。キーン、という金属音のようなイメージで延々と響いてくる……それは周辺の環境音などではなく、確かに耳の中で鳴っているものだった。うるさくて、仕方ない。それが周囲から発せられるものであれ、体内で響くものであれ、聴覚を刺激するのであれば私を目覚めさせるのに十分な効果を発揮する。つまりこれは、いわゆる耳鳴りというものなのだろう。
個人差の話になってくるため人によっては当てはまらない可能性はあるが、耳というのは意識せずとも、多かれ少なかれ常に雑音を感じ取っているものだと思っている。まったく音のない静寂なる空間においても、血管を血が巡る僅かな振動を鼓膜は知覚することができるのだ。あるいは天候や気圧により体内のバランスが変化することで、他人には聞こえない特定の種類の音を認識できるようになる。なんとなく意識してみると、ザワザワとかジージーとか、はたまた今日のようにキーンと鳴り響く音を耳にする経験は、以前にも存在した。
だが、睡眠状態から意識を引きずり出すほどの強烈なノイズには覚えがなかった。頭の中で何か異様な事態が生じているのではないかと疑いたくなるくらい、その耳鳴りは凄まじいものがあったのだ。ひょっとして、これまでに私が知っていたそれは、本物の「耳鳴り」ではなかったのだろうかと思うほどに。
起床後、しばらく過ごしていたら慣れたのか治ったのか知らないが、気になるレベルではなくなった。あれは、なんだったのだろう。いや、今でも鳴り続けているのかもしれない。先日、健康診断の件で楽観的なことを書いたわけだが、気づかないところで徐々に病が進行しているなどという展開になっていないか、やや不安になる。