K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

戦車兵として(成長編)

物事に対する成長のプロセスというのは、おおよそ二つのパターンに分けて考えることができる。直線的か、階段状か。
単純に、スキルのパーツである知識という視点から見れば、学習した分だけ増えていくので前者になるが、能力を発揮した際の総合力は後者になることが多いと思っている。

 

 

本記事は前回から引き続き、WoTについて書いていく。

kk-graffiti.hatenablog.com

 

電子麻薬であるWorld of Tanksのプレイングスキルを示す指標として、WN8というレートがある。
戦車ごとに異なる基準が設定されていて、試合で基準ダメージを出せばだいたい緑色の評価、上回れば青や紫で、下回れば黄色や橙、赤というように、わかりやすく色で評価されるものだ。
WoT界隈では、全戦闘における平均と、直近1000試合分の平均から、おおよその能力を判定するという慣習がある。
WN8自体は非公式だが、最もポピュラーなmodであるXVMに、敵味方のWN8を表示する機能があるため、ほとんどの人はゲームを一年も遊んでいれば、嫌でも自分のレートを知ることになる。

これを使えば、自分よりも下手な人間にマウントを取ることもできるし、過去の自分と比較して自己満足に浸ることもできる。
個人的な話だが、あまりにもレートや与ダメージを重視する風潮は、ゲームの中毒性に拍車をかけていて人格を破綻させかねない。WN8とかいうクソ指標がなければ、こんなにハマることもなかっただろう。
私は、いつからかXVMを使わなくなった。理由としては、色が見えることで判断が変わってしまう(ブレてしまう)のが嫌だったというのと、味方に暖色ばかり集まって開幕から気が滅入ったり、その逆で期待したのに試合に負けてガッカリしたりするから。もしくは、自分より下手なやつに負けるとイラついて仕方ないから。
実際、そういったデメリットでストレスを溜めるよりは、バニラ(modを入れない状態)でプレイしたほうが楽しめるし、成績も落ちるどころか、むしろ上がったようにすら思う。

面白いことに、この界隈ではWN8を絶対視する傾向がある。どんな議論であっても、数字の高いやつには逆らえない。色の良いほうが正しい。
仮に間違っていても正当化を許してしまうため、低レベルプレイヤーは発言権を失い、窮屈な境遇を強いられる。スキルのあるプレイヤーに、他のゲームではありえないほどの権威を持たせてしまう。これは恐ろしいことだ。
数字がすべての世界では、敵にダメージを与えるという事実こそが、何よりも優先される。楽しむという気持ちにさえ先行してしまう。たとえ勝っても、自分が活躍できないのなら、まったく楽しくない。結果、勝ち負けよりもダメージという思考につながり、芋プレイが加速する……アジアサーバーでは特に顕著に思える。


まあ愚痴はこれくらいにして、ここからは成長という点について。
冒頭に、成長のプロセスについて階段状と書いたが、まさにWN8が当てはまる。繰り返しプレイしているうちに、あるとき急激に伸びるのだ。
たとえばここに、私の過去の成績をいくつか貼ってみる。*1

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総合で緑になるかならないか、くらいの頃。ようやく基本的な動きがわかってきたかな、という程度で判断ミスが多かった。
ちなみに、これ以前の記録は保存していなかったようで、見つからなかった。

 

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上達のきっかけなんて細かく覚えているものではないが、短い期間に500近く上がっている。たとえばメインで遊ぶTier帯を変えたとか、よく乗る車輌を変えたとかもあるかもしれないが、一番大きいのは判断力の成長だろう。

 

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しばらくは一定のレート帯で上下する停滞期が続くが、やがてまた急激な上昇がある。
少し前までどんなに頑張っても出せなかった数字が、適当にやっているだけで出るようになる。不思議なものだ。

 

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プレイングスキルは突然覚醒する。コツを掴むということが、これほどわかりやすく表れるものも、なかなか珍しいだろう。

 

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総合が青*2を超えたあたりからWN8へのこだわりがなくなって、いい加減な動きでショボ沈したり、稼ぎにくい変な車輌に乗ったりしていたせいで、3000を切っていた。
最近は一周回ってまた真面目にやっているので、一段上がったような気がする。 

 

このゲームは知識と経験、それから考える頭さえあれば、誰だって青にはなれると思っている。総合で紫になるには、アカウントを作り直すか、相当のセンスがないと難しいとは思うが。
ヘタクソだからと諦めている人は、そのどれかが不足しているだけなのだ。知識と経験は戦闘数を重ねれば自然に増えていくし、頭の使い方だって、うまい人の配信などで学習できる。
上達していけば当然、過去の成績は負債になるわけだから、確かに総合で青になるまでは相当な時間を要する。人によっては絶望的かもしれない。ただ、直近で緑くらいだったら、人間であれば本当に誰でも可能なはずだ。
センスがない、成長の余地がないと嘆くよりも先に、何が悪いのか省みるべきだ。あと一歩で階段を一つ上れるかもしれない。

 

ゲームに潜む闇についても少しだけ書いてみよう。
プレイヤーの中には、数万戦して赤や橙から抜け出せない、びっくりするようなヒトモドキがウヨウヨしているという事実がある。bot以下の動きしかできず、同じ失敗を繰り返し、学習能力がない。頭を働かせていない脳死プレイヤーたち。
なーにがエンジョイ勢だ。勝てなきゃエンジョイできないだろ。

彼らは、青や紫の力を打ち消してしまうくらいの、負の力を持っている。慣れてくると、XVMを入れていなくても動きからヤバいやつだとわかってしまうものだ。ああいうのには近づかないほうがいい。
正直なところ、現実の社会生活もかなり難しいのではないかと思ってしまうのだが、どうなのだろう。回線やPCスペックの問題で仕方ない人もいるのだろうが、しかし、それにしてもなぁ。

わからないことを自分で調べたり、うまくなろうと努力したりするほどのやる気や時間がないのかもしれないが、やっていて悲しくならないのだろうか。

とはいえ、ゲームというのは下手なやつがいないと成り立たないものだ。そういう存在がいたっていい。逆にプレイヤー全員が上達してしまったら、思うように食い物にできなくなってしまう。それはそれで困るから、あれらは必要な存在だと思うことにしている。

*1:WoTLabsより取得。

*2:当時は2300台後半。カラースケールはWoTLabsではなくXVM基準で語るのが通例。