K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

無視される

もう、どうでもよくなったのだろうか。
仕事をしろ。仕事を。

 

というのも、属している機関から脱出するためには面倒な手続きが必要なわけなのだけれど、先週あたりから何をすればいいかメールで尋ねてみても、まったく反応がない。
以前は、基本的に一日以内には返事をくれたのに……悲しいけれど、いなくなるやつには誰だって、冷たくなるものなのだ。

いや、でも、それにしたって上長なら必要な情報を提供する義務があるだろうに。今は特に忙しいというわけでもなさそうだし、意図的に後回しにしているようにしか思えない。後回しにした結果、いつの間にか失念して、結果的に無視したのと同じことになっている。たぶん、そんな感じだろう。
残りの時間は限られていて、あまり余裕がないから頼りにしているというのに、そこで放置されてしまったら何もかもが中途半端のまま終わってしまう。
仕事として考えるなら個人的には気持ちが悪いし、あちらとしてもそのまま出ていかれたら困ると思うのだ。それで構わないというのなら別にいいのだけれど、実際そんなわけがなく……意地悪されているのではないにせよ、業務上の判断における私の優先度が下がっているのは明らかで、特に想い入れのない私がそこはかとない寂しさを感じているから、無視というのはかなり効率のいい精神攻撃なのかもしれない。

流石の私も複数の確認事項に回答が貰えないのは我慢ならないから、もうメールなんて回りくどいことはやめて、電話で直接聞き出すしかない。電話は大嫌いだし、できれば使いたくない方法だが、テレワークでメールが事実上の不通状態となれば、なりふり構っていられないだろう。
面倒だが本当に時間がないのだ。ああ、どうしてこうなった。

本当は先々週あたりから話しておくべきだったのかもしれないが、その頃は確か、次々と厄介な作業を投げられていた時期で私自身に余裕がなかったような覚えがある。
やっぱり会社ってクソだ。


無視と言えば、私は他人を無視していた時期がある。中学生の時分、あるクラスメイトに対しての行動だった。
彼は、事あるごとにちょっかいを出してきた。それは、見方によってはイジメであり、イタズラであり、ただの戯れだった。くだらない。
ガキだったのだ。彼も。そして私も。
私の主観からすれば、私は一方的に被害を受けていた立場だ。全面的に奴が悪いと思っていたし、今から思い返しても、彼がまともであれば問題は発生しなかったはずだと結論づけられる。
ただ、私の振る舞いのどこかしらに、彼の嗜虐心をくすぐる要素があったのだろう。私はそれに気づかず、一向に改善することができなかった。

あるとき、まとわりつくような彼の嫌がらせに耐えられなくなった私は、一つの方法で回避しようと試みた。それが、無視することだった。
話しかけられても、徹底して反応しない。腕を捕まれても知らんぷり。物を取られても平静を装い、隙を見て無言で奪い返す。廊下で鉢合わせそうになったら遠回りし、授業などで必要が生じなければ、とにかく近寄ることを拒む。存在の拒絶。否定。
文章にしてみて行動だけを切り取れば、逆に虐めだと捉えられてもおかしくないような対応を、彼に対して向けるようにした。
目論見は成功して、彼は面白くなくなったのか次第に私から興味を失い、その後は関わることがほとんどなくなった。

無視とか無関心というのは、それだけ相手に与えるダメージが大きい。話しかけているのに何もリアクションがないと虚しくなるし、不安になる。
余計な関わりを持たない。見ないふりをする。そういうのは安全に生きていくには重要だけれど、まだ同じ組織に所属しているのに急に態度を変えられると、どうしたって困惑してしまうものだ。いつぞやの日記にも書いたけれど。
結局、私には彼らの気持ちがわからないし、どういう意図があるのか想像するのも難しい。所詮は会社だけの関係だと割りきっていた私のスタンスが、今さら反動となって厄介な状況を作り出している。

気づかされる。溶け込めていなかった。この期に及んでまともに会話ができない。相談もできないし、する気にもならなかった。浮いていることでしか、存在を保てない。息苦しい。視線が刺さる。真顔で作り上げた仮初めの肉体を、なんとか流れに逆らわせずに動かすのみで、真に心の居場所なんてどこにもなかった。
会社なんてものは、やっぱり私には合っていなくて、だからこうなるのは必然で。
もう、どうにでもなれ。