K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

引っ越し・前編

先日の続きの話になるけれど、朝から出かけて暗くなるまで作業をする、そんな一日だった。疲れた。
取り寄せた重い品々を運び、雨の中で搬入作業を行い、手先をボロボロにしながら組み立てる。とても一人ではできなかっただろう。心から純粋に感謝の気持ちが出てくるのは珍しいことだが、今日ばかりは頭が上がらない。親とは仲よくしておくものだ。

 

すべて完璧に揃ったというわけではないものの、とりあえずの最低限は整ったように思う。ということで、今夜は初めての夜……まぁ特に普段と変わりのない、パソコンの前に向かうだけの時間が過ぎていくだけではあるが、しかし時間の使い方、空間の使い方が完全に自由となったわけで、これまでとは心の持ちようがだいぶ異なる。
とりわけ大きな違いとして表れてくるのは、私を管理する意思が介在していないということだ。食べるのも眠るのも、すべて自らの裁量で遂行しなくてはならない。これは、長年ずっと実家で暮らしていた人間には新鮮そのもので、精神的な意味合いで言うならば、まだ強烈な異物感が私に付きまとっている、という感じだ。
そのうち慣れるに違いないけれど、それまでは相当なストレス要因になりそうだという予感がある。

最初の晩餐は、コンビニで買った軽食だった。
自炊はするつもりではあるが、今のところ食材を買っていないし、というか冷蔵庫もないし、外食に行くのも面倒なので、消去法的にコンビニ頼りにならざるを得ない。ただ、大きなゴミが出てしまうのも面倒なので、ビニール系で包まれたパンとか、おにぎりとか、何も考えていないとそのあたりのものばかり買ってしまう。
栄養の偏りは自炊を始めれば解消されるだろうし、とはいえ毎食は時間的に厳しいから自ら作るのは一食分として、なのでここに住み続ける限りは徒歩二分の場所にあるコンビニには相当にお世話になりそうだ。

部屋の掃除で体調を崩すなどの瑣末なアクシデントはあったが、この数日、家でじっくりと体力の回復に努めたので、今朝は比較的元気だった。昼頃も元気だったはずだ。ただ、なんというか太陽が沈むに従って徐々に活力が衰退していくようなイメージで、午後になってから夕方にかけての肉体労働は非常にこたえた。
手伝ってもらっておいて情けない話ではあるが、途中で何度か投げ出したくなったくらいには身体的な負担が大きく、今も両手が、両腕が、ついでになぜか臀部も痛い。階段を使って重い荷物を運ぶことの労力といったら極上のもので、私は一生かけても引っ越し屋とか配達の仕事を果たせる人間にはなれないだろうと感じた。
彼らは本当にすごい。これまでは日常のありふれた存在として大したことだとは思っていなかったけれど、今では持ってきてくれたら「ありがとう」と自然に言えるようになった気がする。自分にできないことを軽々と成し遂げる人間に対しては、やっぱり少し特別な尊敬めいた感情が芽生えるので、何事においても「できること」ばかりではなく「できないこと」に取り組んでみて難しさを知るというのが、人生にはわりと重要なことなのではないかと思った。

 

さて、今回「前編」としたのは、「後編」を想定しているからだけれど、その理由としては大きく二つある。一つは、旧自室の片付けがまだ四分の一ほどしか済んでいないこと。もう一つは、片付けに関連するが、持ってくるべき家具や生活雑貨などがまだたくさんあること。おそらく、あと二往復は必要なのではないかと予測している。
こんなことなら初めから業者に頼めばいいのかもしれない。しかし、私の腰の重さ、動き出すまでの遅さ、一向に進まない整理整頓の具合などを鑑みれば、多少の期間を使って環境に慣れていきながら、段々と移行するほうが合っているというものだろう。
私のことは私が一番よく知っていて、恥ずかしながら導き出した妥協策は、意外と理にかなっているのだ。
いや、本当に恥ずかしいことだが。

明日は受け取る荷物があるから、しばらく滞在しなければならない。明後日は旧自室での作業がメインになるだろうから、明日の夜にはいったん帰宅となるだろうか。
行ったり来たりで、出不精的には慌ただしくて疲労感との縁が切れない生活になってしまっているけれど、まぁ来週の半ばには落ち着いているだろう……落ち着いていたらいいなぁ。