自炊を始めてからしばらく経つけれど、初回のカレーを除けば適当に切って炒めるだけのものがほとんどで、お手軽に済ませてしまっているから慣れてきている気がしない。
具体的に作れるようになった料理というのが、このままでは増えていかないのだろうな。ものぐさな私がレシピを見ながら時間をかけて料理に励むなんてことがあるのかは、今のところわからないが。
一番に考えていることは、はたしてこれだけの食事で一日に必要な栄養を摂取できているのか、ということだ。
あまり準備に時間をかけたくないから、期限の近そうなものから混ぜる感じになってしまっていてバランス重視とは言いがたいけれど、流石にカロリー摂取量だけは意識しておかないと倒れてしまいかねない。
軽く調べてみた感じでは、成人のカロリー摂取目安はだいたい2000kcalなのだとか。まぁこれは平均値であって、私の体重と運動量は平均よりもだいぶ控えめなので、もっと少なくても生活に支障はなさそうに思える。
数値を入力して調べられるサイトで試してみたところ、1350kcalくらい摂っていれば最低限の生命活動は可能だとわかった。痩せすぎのメリットは、食費が抑えられる点にあるかもしれない。
ただ問題は、よく考えずに作った食事だけでその数字に到達するか、ちょっと怪しいところにある。
たとえば朝食に食パン一枚（200kcal）と目玉焼き（130kcal）、昼食は適当な野菜炒め（150kcal）、夕食は冷凍チャーハン（400kcal）だとする。適当に書いたけれど、時間短縮のために手を抜くと、火を使った調理というのは一日一食くらいが現実的なところだ。
上に挙げた数字はおおよそではあるが、合計すると880kcalで、あと1.5倍は食べないと足りない計算になる。仮に三食ともに150kcal程度を追加で摂取したとして、ようやく最低限だ。なかなかに、必要カロリーを満たすのって難しい。世の中の普通の人間は、いったいどうやっているのだろう。
そもそも、この程度では腹が満たされないのが普通なのだろう。私は食べようと思えば入るけれど少なめでも満足できてしまうから、面倒に思いながらもなんとか自炊をすると、本当に最低限すら満たせない程度にしか食べられないのかもしれない。いやはや、これは困ったことになった。
まさか、生きるために食べるということが、こんなに大変だったとは。
……ちなみに食べるのが大変というのは前々から思ってきたことなので、内なる私は上の文章に対して、何を白々しいことを書いているのだろうと呆れている。始める前から、薄々予感はしていたことだったのだ。
問題の対処方法はいくつかあるが、カロリーに限って言えば主に糖質を摂取すればいいだけのことだ。菓子類は好きではないのだけれど、たとえば菓子パンなんかは誂え向きだろう。
昼食は自炊にこだわらず、コンビニで何かを買ってくるという風にすれば、一応は解決するはずだ。菓子パンってカロリーが高いわりに異常に安いし。
しかし最も大きな問題はそこではなくて、たんぱく質の摂取量も深刻なレベルで足りていない点にあるのではないかと思っている。
あれは、炭水化物と違って簡単に水増しできるような代物ではない。肉を食わなきゃならない。なんて面倒くさいんだ。
まず買ってくるのが面倒だし、買ってきてもそのまま食べられないから火を通して調理する必要があるし、あるいはハムとか出来合いの食品ならそのままでもいいけれど正直あまり好きではないしそればかりでは飽きてしまうし、とにかく他の栄養素と比べて精神にもたらす負担が桁違いであるのは確かなことだ。
あいにく私は、以前にも書いたように食事が人生の楽しみというタイプではなく、特に肉が好きというわけでもないから、本当にただの面倒な栄養素としか思っていない。ああそうか、プロテインでも飲んでおけばいいのかなるほどなるほど。
まぁ流石にそれだけで生きようとするのは、人間としてどうかと思うわけで、もう少し真面目に考えたいところではあるけれど……結局のところ、これも他のあらゆる課題と等しく、どこかで妥協しなければならないということだろう。
問題と言えば、もう一つあった。
これは初めからそういう契約になっていたので変えようのない現実なのだけれど、ガスがLPガスのために都市ガスよりも割高なのだ。いちいち調理していたら非常に高く請求されてしまうということが、ここ数日でわかってきた。
自炊は食費を抑えられる。それは確かに正しい。けれど、こういう環境要因があるからには、調理のたびにガス代も計算しなければならないだろう。すると、おそらく一食あたり50円程度は上乗せになるのではないかと考えられる。一か月分、一年分にすると、結構な額になるのではないか。
それを込みでも外食よりは安上がりだから、基本的には自炊を続けることになるとは思うが、栄養失調予備軍の事情を踏まえると、週に何度かは外に食べにいくか、弁当などバランスが偏らないようなものを買ってきたほうが、健康的でいられる可能性は高い気がしている。
まだスタートしたばかりで一か月分のデータすら出ていないし、あまり出費ばかり気にしていても仕方ないのは事実だ。しばらくは、のんびりと気ままに金を使ってみて、それがマズいペースであれば改善する。そのほうが総合的なストレスは少なくて済むのではないか。
ひとまず当面の課題は、足りていない栄養の摂取量をどうやって必要最低限まで引き上げるか、ということになる。消費できるかという話はいったん置いておいて、まずは食材を入手するのが優先だろう。日持ちするものから順に考えていきたい。
