K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

髪型

引っ越した後に困ることの一つは、散髪をどうするかという問題だ。
以前に通っていた店に行こうとすると交通費と往復の時間が非常に痛いので、できれば近場で探したいところなのだが……なかなか簡単な話でもない。
一発目から自分にとって都合がいい形に切ってくれる人なんて、滅多にいるものではない。初回はどうしても不満が残ってしまうものだろう。ある程度は、そうやって心の余裕を作っているつもりだった。

 

もっと強く主張すればよかったのだ。
どうですか、と鏡を広げられて後ろ髪の長さを確認させられる。「え、もう……?」とつい声に出してしまいそうになった。これまでの慣れ親しんだ感覚では、あと倍は時間がかかっていただろうに。
こちらがファッションに詳しくなくて、具体的に要望を挙げられなかったのが一つの要因だったのだとしても、これではあまりにも手抜きではないか。「おまかせ」なんてロクなものではない。前と後ろという、比較的わかりやすい部分だけカットされたような印象で、全体のボリュームは大して変わっていなかった。
帰宅してからあらためて鏡とにらめっこをして、適当に水を付けたり引っ張ったりしながら、やはり不十分であったという事実を確かめる。髪型の変更には自分自身の慣れも必要だけれど、はたしてこの失敗作に慣れることなんてできるのか。まったく自信がない。
もっとバッサリと切ってもらうように言っておけばどうなっただろうか。次はちゃんと伝えようと思いつつも、もう行くことはないかもしれないという風にも考えてしまう。

流石に不満が大きいので、これから別の店に行ってもっと短くしてもらうという手もある。馬鹿みたいな出費になるから、きっとやらないけれど。自分で手を加えるのはリスクが高すぎるし、慣れるしかないのだろうか。
数日後に実家に戻る予定があるから、あるいは母親に頼ることも不可能ではない。これは要するに、それくらいに不出来な頭になってしまったという話だ。

基本的に家の外に出ないのだから、髪型なんてどうでもいいという考えはあるのだ。散歩に出かける時は夜中であまり人目につかないし、これを見ることになるのはほとんど自分一人なのだから、鏡の前に立つ瞬間だけ我慢すればいい。
しかし、残念ながら今月中に家族以外の人間と会う予定がある。こういう時に限って……というより予定があるからこそ切ることにしたわけだけれど、運の悪いことにハズレを引いてしまったものだから焦っているのだ。このままでは、見知った衆目に晒されるのは非常に恥ずかしい。
髪型というのは、少し伸びてきたくらいがちょうどいい具合になることが多い。だから本当の評価をするまでは、もうしばらく待ってみてもいいのかもしれない。予定がなければ、それでもよかった。
とりあえず自分なりに、シャワーを浴びた後のドライヤーなどで上手くまとまらないか試してみる。それでダメなら、日常的に使う機会のない整髪料に手を出してみるとか……まぁ慣れなさすぎて余計にひどい有り様になるかもしれないけれど。

これだけ悩むことになるのなら、安さ重視ではなく、もっと技術的な観点で評判を見てから判断すべきだった。