K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

名作……名作?

三日前の夜から毎日一本ずつ、『エヴァ』の劇場版『序』『破』『Q』を視聴した。
事前に聞いていた噂では一気に取り込もうとすると死ぬだのなんだのと、怖い話があったので少しばかりビビっていた節がある。
ただまぁなんというか、思っていたほどの衝撃を受けなかったものだから拍子抜けというか、世間で言われているようなトンデモ作品には思えなかったというのが正直なところだ。これは、はたして名作なのだろうか。

 

私は2000年代後半からのアニメ隆盛期に深夜アニメという世界を知ることになったので、エヴァンゲリオンが出てきた1990年代の作品については知識がほとんどない。
それでいて、ここ10年ほどの間に作られた数々の刺激的な作品を知っているからかもしれないが、エヴァに初めて触れたことで喚起されるとされる複雑な感情というものが、一昔前の人間と比べると相対的に弱くなってしまったものと考えられる。

言ってしまえば、「あっこれどこかで見たことある」「元ネタはこれだったのか」というような感想が先立ってしまい、純粋に作品世界を楽しむことが叶わなかった感じだ。
しかし逆に考えれば、私が触れてきた膨大な数のアニメ作品の多くは、少なからずエヴァに影響を受けているのだろうと言うこともできる。いわゆる「王道」の展開であったり表現であったり、今なお使われることのあるインターネットスラング接触した最初のきっかけが、このエヴァという一つの作品に集約されているとしたら、20数年前から追い続けているファンにとっての作品に対する熱意というものは、「ニワカ」の私には計り知れない。

 

特に思い入れもない上に、劇場版の尺ということで細かい描写がカットされまくっているのだろうと思ってしまった私は、いまいちキャラクターの関係性や心情を理解することができなかった。
情報量が多いということと、わざわざ説明されないという点から、ハマった人間には考察が楽しい作品ではあるのだろう。思い返せば、『序』『破』『Q』それぞれ公開当時にネット上を賑わせていた数々の話題についていけず面白くなかった私だが、「あれはこういうことだったのか」と、作品それ自体よりも過去の不満が解消されたことに意義を見出したくなった。
その上で、新作の情報がまったく目に入らない現状から推測される本編の内容は……どうなのだろう。多くのエヴァファンにとって、それなりに納得のいく構成になっているのだとしたら、私も少しは新鮮な気持ちで楽しめるだろうか。

とはいえ、せっかく3作も観たのに感想がこれだけでは寂しいので、簡単に所感を書いておこう。

『序』は世界観の説明と、わりと激しく戦闘シーンが続いていくので退屈はしなかったし、これからどうなるのだろうというワクワク感もあった。キャラクター自体は嫌でも目に入るから知っていたし、掴みは悪くないといったところだ。

『破』も同様で、強力な敵に立ち向かう際の葛藤や、そこで生じる犠牲などはそれなりに刺激的ではあった。終盤の「歌」にはややポカーンとなりつつも、それは当時の評判通りという感じで個人的には特に問題なし。

『Q』は前作からの続きでどうなるのかと身構えていたら、丸々すかされた気分で正直リアクションに困った。これをどう解釈していいものか、「何を言っているのかわからない」というシンジの言葉はまさに視聴者の代弁であり、その疑問点が紐解かれると思われる新作に大きな期待が寄せられるのは当然の流れであるとも感じた。
掲示板やTwitterでたびたび取り上げられている「飲み会コピペ」が、状況を的確に表していると知ることができたのも面白かった。

というわけで、結局のところ新作を観てみないことには何も言えないのかもしれない。
私は熱心な作品のファンではないし、ある意味で問題の『Q』から新作までを最速で摂取することのできる幸運な観客であるので、下手なことは言わずに劇場へ足を運ぶのを楽しみにしていればいいのかもしれない。

……まぁでもやっぱり、思っていたほどの爪痕を私の心に残してくれなかったという点は、ちょっと残念ではあった。