K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

人のを見ると自分でやりたくなるやつ

昔話になるけれど、私は幼い頃になかなかゲーム機を買い与えてもらえなかった。まぁこういうのは、時代や家庭によって差が大きいことだろう。パソコンだって大学に入るまで自分のものは買ってもらっていなかったし、比べてみると今の子供は恵まれている。
小学校の低学年では学童クラブに通っていたのだが、よく他人のゲームプレイを横から眺めていた。欲しかったけれど、親に言っても買ってもらえない。
今でも覚えている。夏休み、親の実家に遠路はるばる足を運んだ際、祖父に頼み込んだのだ。これが欲しい、と。

 

親としては予想外の展開だったようだが、与えられてしまったものを取り上げるほど鬼ではない。一日あたり30分という時間制限付きで、ゲームで遊ぶことを許された。
今から思えば、これは非常に厳しい制約だ。たとえば宿題を終えてから、というような条件だけであれば、鞭と飴が上手く作用する気がするけれど、たったの30分という短い時間ではなかなか進捗を生み出すことは難しい。
夏休み中には学童クラブに持ち込むことができたため、毎日数時間の幸せがあった。しかし、夏季休暇の終了とともにゲーム生活にも終わりが告げられる。

短時間にせよゲームで遊ぶことが日常の一部となった子供は、より多くの楽しみを求める。祖父から与えられたゲームをクリアしてからは、次のソフトを親に買ってもらうしかなかった。
なんでもないタイミングで欲しいと言っても、当時は聞き入れてくれない。何かをお願いするのであれば、クリスマスと誕生日に限定されていた。基本的には年に二本だけ、新しいゲームで遊ぶことが可能になる。
明確な時期については記憶が曖昧だけれど、自分でお小遣いを貯めて購入するという現実的な選択肢が生まれたのは中学に入ってからだったと思うので、それまではゲーム選びとプレイ時間という二つの側面で制限があったと言ってもいい。
なんでも買い与えられる子供と違って、限られた範囲で可能な限り遊び尽くす。広く浅くよりも狭く深く、といった性格的特性が強化されたのは、こうした成長過程があったからかもしれない。

中でも最も遊んだのは、ポケモンシリーズだ。
プレイ経験のあるソフトを発売順に挙げていくと、青・銀・サファイア・ルビー・ファイアレッド・エメラルド・ダイヤモンド・プラチナ・ソウルシルバー・ブラック・ブラック2・X・アルファサファイア……となる。
間違いなく、総プレイ時間は他のあらゆるゲームシリーズよりも多いだろう。
生活環境や興味関心の変化などにより、サン・ムーン以降のシリーズは遊んでいないのだけれど、今でも新作の情報には目を通している。

先日、第4世代であるダイヤモンド・パールのリメイクバージョンがリリースされた。
Twitterにはスクリーンショットが無数に流れているし、YouTubeを開けば有名なYouTuberがライブ配信をしている。
今作については否定的な意見も散見されるけれど、盛り上がり方を鑑みるに、相変わらずの人気コンテンツと言っていいだろう。
個人的に、第4世代というのは歴代シリーズの中でも特に遊んだ時間が長い。ガッツリ対人バトルを楽しんだのはブラック2の第5世代環境ではあるものの、やはり魅力に溢れた個性的なポケモンが多数登場したダイヤモンド、そしてプラチナには強い思い入れがある。
ちょっとだけYouTubeでプレイ配信を見ていたのだが、他人がクリアするのを見たら満足できるかと思っていたら、自分でも遊びたくなったのが意外なところだった。
幼き日に経験した、独特のもどかしい気持ち。あれを思い出すような感覚だった。

情報を追っていると上に書いたけれど、実際にプレイしているわけではないため、新規追加ポケモンだったり、フェアリー周りのタイプ相性だったり、バトルに役立つアイテムや技の知識などなど、いまいち理解が十分でない点も多い。
最後にシリーズを遊んだのは、アルファサファイアが発売された頃だから……もう7年も前になる。
今さら知らない知識が要求される新作に熱中する気にもならない私にとっては、やり込んだ懐かしい作品のリメイクである今作が、もしかしたらポケモンに触れるための最後の機会なのかもしれない。

 

さて、ここまで書いておいてなんだが、一番の問題は私がSwitchを所持していないことにある。
今どきSwitchを持っていないなんて人権がないのと同じようなものかもしれないが、これまでに困ったことがなかったので買おうと思わなかったのだ。せっかく買っても、あまり遊んでやれる気がしない。話題を共有できる友人はいないし、クリアするまでの時間を捻出するのが難しそうなので、どうしても食指が動かない。
今回のポケモン欲だって、どうせ一過性のものだろうから、しばらく我慢すればなんでもなくなるだろう。

少し、悲しさというか、寂しさみたいな感情はある。
昔あれだけ遊びたかったゲームだが、大人になり自由を手に入れた結果、以前ほどの熱量を向けることができなくなった。
まぁ人間の趣味嗜好なんて、きっと大半はこんな風に冷めていくものなのだろうけれど。