K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

ASMR

最近……なのかどうか、よく知らないのだが、このところASMRという文化の流行りに直面している気がする。
Vtuberやプロの声優が担当する特殊なボイスは、どうやら私よりも幾分か下の世代を中心に人気を集めているらしく、軽く調べてみただけでも好んで聴いている人を無数に見つけることができる。
癒やし目的や睡眠導入剤として、あるいは音楽や漫画のように楽しめる消費コンテンツと考えている人も少なくないのかもしれない。

 

個人的な感想を述べると、正直なところ苦手だ。
立体音響が嫌いというわけではなく、たとえば7.1chで音響を体感できる映画館には好意を抱いているし、映像作品内の一部演出として使われるのであれば、それが効果的なら問題ない。
ただ、とりわけ耳かき音声に顕著な片耳に偏った音声コンテンツは、どうしても肌に合わないのだ。

随分と前のことだが、片耳イヤホンというのを買ったことがある。別に珍しいものではないし、日頃から常用している人だっているだろう。
私は、とてもではないが使えなかった。
ややキツい言い方をすると、片方の耳だけで音声を聴き続けるスタイルは、非常に気持ち悪く感じてしまうのだ。一瞬ならともかく、それなりの長さの音声内容を楽しもうとするのであれば、ちょっと耐えがたいものがある。
同様の感覚で、両耳イヤホンを使っているにもかかわらず音源の左右バランスが悪い動画などを視聴しなければならない時には、大きなストレスを受けることになる。普通のバランスが取れたステレオなら気にならないのだけれど、明らかに左右の音量が異なる場合には、PC自体のアウトプットをモノラルに設定するなどの工夫が必要だ。

そういうわけなので、私にはASMRの良さがさっぱりわからない。
新しいものを受け入れられないのは老害の特徴……なのかもしれないが、これに関しては心の問題ではなく体質の問題だから、いくら頭で許容しようとしてもアレルギーのように拒否反応が出てしまって難しい。
インターネットの入口付近において、多感な思春期に触れて慣れてしまえば、ASMRという形式をネガティブに感じることはないのかもしれないけれど、両耳にバランス良く伝わる音声で育った私の身体には、やや負担が大きかったようだ。

 

別視点から見れば、ボイスドラマの幅が広がったと捉えることができる。
楽しむためには一定のハードルを越えなければならないから私には困難な話だけれど、ボイスコンテンツの発展とか、声を仕事にする人間の稼げる領域といった考えで見ていくなら、決して悪いものではない。
まぁいくら栄えたところで、私が楽しめるコンテンツではないという一点においてのみ、もどかしさを感じないこともないが。

今はまだニッチな需要を満たす程度の規模ではあると思うが、将来的にポピュラーな趣味としてサブカルカテゴリに属するようになったら、その時の私はどうするだろうか。
きっと自ら歩み寄ることはないけれど、もし好きな作品に関連するところで触れる機会があれば、どうにか楽しめるよう努めるかもしれない。

日記を書き始めてから頻繁に意識させられているのだけれど、そろそろ私も「若者」から「若者でない何か」になろうとしているような気がする。
だって本当に若い年齢層とは、もう趣味も感覚も合わなくなってきているのだから。