K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

インフレの捉え方

ゲームとは徐々にインフレしていくものだ。
非常に強力なキャラクターやカード……つまり全プレイヤーにおける使用率の高い存在が、アップデートを重ねていくうちに環境変化の影響を受けて、かつての威容を失っていくという現象は、定期的に更新が繰り返されるオンラインゲームでは基本的に必ず起こる。
一強体制はマンネリ化からのユーザー減少を招くし、常に何かしらの手が加えられて新しい刺激が提供されていくのは、健全なことと言ってもいいだろう。

 

先日、アニバーサリーのタイミングで大型の追加更新が行われたウマ娘に対して、様々な意見が飛び交っている。そして比較的、ネガティブなものが多い。
追加項目が膨大だから一概にどうこう言うことはできないけれど、やはり感想の大半は新シナリオに集中しているから、今回は「URAファイナルズ」「アオハル杯」に続く「Make a newtrack!!」について書いていきたい。

ちなみに、私自身は今回のアップデートをあまり改悪だと思わない。
遊んでみてみて感じたことだが、確かに要求されるプレイ時間は倍増していて、決して周回向きとは言えないものの、ゲームとしては幅が広がったという感覚が強いのだ。
そもそも育成のメインシナリオ、キャラクターの個別ストーリーに焦点を当てた過去二つの育成モードとは、根本的なコンセプトからして異なる。今回のクライマックスシナリオは、完全に別ゲーとして楽しむべきだという考え方をするほうが良いかと思う。

一つ不満を挙げるとすれば、これは各キャラクターに固有のイベントを極力取り除き、ただひたすらにレース出走および能力値を追求することに特化した育成モードであるために、育成を通じて出来上がるウマそれぞれに対するイメージが上手く形成されないことにある。
だからたとえば、クライマックスシナリオで育成可能なのは、URAかアオハルのどちらかでクリア済みのキャラクターに限る、といった制限があったほうが、「シナリオを軽視している」といった意見を減らせたのではないかと感じるのだ。
間違っても、ゲームを始めて最初に遊ぶべきモードではない。

今回の最も特徴的なところは、育成中にアイテムの購入および使用が任意のタイミングで行える点であり、買える商品がランダムという部分は相変わらずの運ゲーではあるけれど、ステータスを効率的に上昇させるパターンを作りやすいことから、全体的にステータスや評価値を盛りやすいところにある。
ゲームモード追加後数日の現時点で、既にアオハルでは出せなかった過去最高評価点を更新している人が大勢発生しているところからも、今後の競技場育成やチャンミ育成の主流となっていくのは確実と言っていいだろう。
ただ、簡単に強く育成できるというわけではない。上に書いたように、しばしば非機械的な選択が求められるため、頭を使う。時間もかかるから気軽にポンポン強いウマを生み出せるわけではないのだ。
傾向として、URAは課金額、アオハルは運が大事だったが、今回のクライマックスは前の二つに加えて実力が重要となってくるような気がする。

 

まぁここまではいいだろう。
懸念点は、明らかにインフレしているということだ。
冒頭に書いたように、ゲームがインフレしていくのは健全な現象だから、それ自体に問題があるわけではない。しかし、そのペースについては、あまり急激すぎないほうが好ましいと思われる。
少しずつ緩やかに環境が変わっていくのと、シナリオ追加の度に激変するのでは、ユーザーが経験することになる刺激やストレスの量に大きな差が出ることになるのは言うまでもない。
前者は退屈だと感じる人が増えるかもしれないが、一時的にゲームを遊ばなくなっても戻ってきやすいという点でゲームの寿命は伸びやすくなるだろうし、後者は強烈な新鮮味に惹かれる人が増える反面、プレイにおける負担もそれに比例するため疲弊を招きユーザー離れを引き起こしやすい。
どちらが正解かは未来人しか知らないものの、常に運営が工夫していかなければならないという点において、後者を選んだウマ娘のゲームとしての寿命が、少し心配になった。
コンテンツとしては漫画やアニメ、競馬そのものの魅力も合わさって当分は大丈夫だと思うが、ゲームについては昨年から不安視する声が少なくなかったから、これから先、半年後や一年後にどう変化しているのか、注視していきたいと思った。

対人向けに仕上げるためのシナリオとしてはクライマックスが今後も頂点であり続けて、追加シナリオは新たなウマ娘としての魅力を深掘りできる形であったり、時間のかかる育成ではなく完全に異なるギミックでの実装という風になれば、現状の勢いが急速に落ちていくということはなさそうだが、はたして。

そういえば、新シナリオに頻繁に出てくるウマ娘同士の関係性を描いた短いエピソードは、なかなか上質な公式供給として面白いと思った。
賛否あるだろうが、育成ウマ娘のエピソードがほとんど丸々カットされている分、これまでに知らなかった様々な娘たちの物語が得られるのは個人的に好感触なので、やはり総合的には満足度として悪いものではないと感じる。