K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

スイーピー

昨日の正午からウマ娘のガチャに実装されたスイープトウショウというキャラクターのシナリオについて……正直に言うとゲームを始めて以来、五本の指に入るくらい感動することができたので、この気持ちを書き残しておきたいと思った。
なお資金に十分な余裕のない私は、ガチャ更新の度に引くことはできず、また残念ながらゲームの性質上必須級と言えるキャラではないため、実は自ら手に入れたわけではないのだけれど、他人のシナリオ読み配信にて彼女の歩んだ旅路を味わうことができた。

 

詳しく書くとネタバレになってしまうので避けたいところではあるが、あのシナリオは競馬史から読み取れる様々な要素を詰め込みまくったという感じなので、実のところ感想を上手く言語化できるほど、まだ頭の中で整理がついていない。
おかげで昨日の夕方、そして今日の夕方と別の配信者で二度も見ることになったのだが、やはりその完成度の高さに感服するしかなかった。

終わってからの余韻も凄まじく、スイープとそのシナリオから受けた「よかった」という気持ちが強く残っているのはもちろんなのだが、時が経つにつれより一層、ウマ娘世界の輪郭と現実の競馬の繋がりへの解像度が上がる感覚があるのだ。
これは過去の話で言うと、マンハッタンカフェのシナリオを読んだ後に近いものがある。
当然、別のウマだから両者のシナリオの流れは大きく異なるのだが、共通しているのは登場キャラクター数が多く、関わり合うそれぞれの物語を補完するような描かれ方をしているということだ。
そして主役となるウマのエピソードを超越して、プレイヤーに俯瞰的な世界への観点を提供してくれる。
競馬への知識に乏しくキャラゲーとして楽しみ始めた頃の自分では、これほど感銘を受けることはなかっただろう。ある程度、過去の名馬の流れを知り、そしてウマ娘という存在にアニメや漫画、ゲームを通じて親しんできたからこそ、ここで展開される物語の素晴らしさを存分に楽しめたような気がする。

現代の競馬においては、強い牝馬の存在はそこまで珍しいことではない。しかし、彼女の現役時代はそうではなかった。
今に至るまでに歴史へと名を刻んできた、名牝たち……彼女らが活躍するようになる新時代の到来を大きく期待させるような、過去の常識を覆す眩い輝きをウマ娘という再構成された形で目の当たりにして、私は週末の宝塚記念ではデアリングタクトを買いたくなってしまった。

育成に入る前の無料で読めるウマ娘ストーリーにおいては、懐かしいラノベを想起させる馴染み深い描写がメインとなり、序盤から確かな面白さがあった。古のオタクは破顔し笑みをこぼすこと必至で、すっかり虜になるに違いない。
基本的なキャラクターの性格を掴んだところで、しかし育成シナリオでは新たな側面を軸として進んでいくことになる。
ジュニア期、クラシック期、そしてシニア期へと……同世代や近い世代との関係を複雑に絡めながら、これほどまでに大きな成長が描かれたウマ娘の話は、これまでにあっただろうか。
全体を通じて情報量は物凄く多いのに、不思議と長いという気分にはならなかった。ああ、終わってしまう。何時間も見ているのに、終盤には惜しむような気持ちにさえなった。

第一印象は生意気な娘だった。それでも軸はブレず、徹底して己の正義を追い求める姿を見ているうちに、もはや立派な魔法少女……いや魔女としての偉大さを感じざるを得なくなった。
したたかな娘だ。扱いの難しさは強く描かれていたけれど、気性難というネガティブ要素でさえ、ウマ娘というキャラクターを描く過程で前向きなモチベーションに持っていく手腕は見事なものだった。

終始、魔法というのがキーワードになるのだが、魔法を操る魔女に対する要素として出てきたライバルの作り方にも、とにかく感心する一方だった。
ここで、こういう風に出してくるのか。驚きとともに、純粋な感動のあまり涙が出てくることも何度かあった。一つひとつの描き方が、本当に丁寧なのだ。
初期キャラのシナリオは比較的あっさり王道というイメージが強かったのだけれど、最近の実装キャラは明らかに物語が巧妙に、精緻に作り込まれている。
やはり、ストーリーが真のメインコンテンツなのだ。あらためて実感した。

 

現状、個人的に好きなストーリーを挙げるとすれば、今回のスイープトウショウがトップ、次いでマンハッタンカフェセイウンスカイといった感じになりそうだ。
すべてのキャラクターを引けていたら、もう少し候補に幅が出てきそうなのだけれど、良シナリオという噂のカワカミプリンセスアドマイヤベガは未所持なので、まだ読むことができていない。

まぁそれを言うならスイープも引いていないから読まない可能性もあったのだが、実装直後に配信をしてくれる人がいたことと、ちょうどそのタイミングで私の気が向いたことが大きかった。
シナリオの質が高い分だけ、読むための消費カロリーも増すものだ。こういうのは、一度きっかけを逃すと再度チャンスを得るのは難しくなる。
またチャンミ育成が始まればストーリーに体力を割く余裕は少なくなるし、この小休止の期間に最高の物語に触れることができて、心から嬉しく思う。