K's Graffiti

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glow雑感

水瀬いのり4thアルバム『glow』を一通り聴いてみた。
2019年は武道館、2021年は横浜アリーナと、直近のライブツアー関東公演に現地参戦している私だが、今年も秋に横アリへと向かうことになってしまったので、今から予習をする必要があるのだった。
身体を動かしながら聴いていると頭に残りやすいから、ちょうど運動不足解消の散歩を再開したところでの発売はタイムリーとも言える。

 

曲をそれぞれ取り上げて事細かに所感を述べるほど聴き込んではいないから、ここではアルバム全体を通じてパッと感じたことを書いていこうと思うけれど……まず一周目の感想としては、「思っていたのと違う」だった。
ネガティブな意味というよりは、単純に予想を外されたというニュアンスだ。
というのも、アルバムに収録された新曲はいずれも既存曲とは大きく異なる歌い方で表現されていて、これまでの曲たちを好む人が新たに期待する方向性とは、かなり違う路線であることが明らかだったからだ。
これはこれで、彼女の新しい一面……そう捉えることはできるけれど、なんとなく聴きたいと思っていた雰囲気とのギャップを受け入れることに、まずは少しだけ時間を使わなければならない。
第一印象は、だから深く聴き入って感動を覚えるというよりは、やや困惑に近い形だったと言うしかないだろう。

新曲と比較してみると、アルバムに収録された既存曲は逆に浮いてしまっていることに気づく。
それらは単体で個性を持つ魅力的な楽曲たちではあるが、分類するなら過去のアルバムに収録されていると考えたほうがしっくりくる曲調であり、今回のアルバムが目指したコンセプトとは微妙にズレるのではないか……別に浮いているのが悪いことだと主張する気はないけれど、順番通りに聴いているとテンションが忙しくなってしまう。
要するに、新曲とは分けて耳に入れたくなったのだ。

少し時間を置いてから、今度は新曲のみ順番に二周目を聴いてみた。すると、不思議なことが起こる。
心構えというか、行為の前に何を求めているかの違いが結果に与える影響というのは、自分が想像している以上に大きいのかもしれない。
大まかな雰囲気を掴んだ上で聴いてみると、どれもジワっと心の中に広がってくる良さがあった。
なんでもかんでもこういう表現をするのはどうかと思うけれど、今回のアルバムは全体的にスルメ感が強い気がする。
初めて聴いたその時から全身に突き刺さってくるようなダイナミックさには欠けるけれど、彼女が新しく目指した歌の在り方は決して空疎なものではない……そう次の瞬間に確信した。

 

意外な味わい深さを予見させる二周目を経て、これは散歩に最適なお供かもしれないと感じた。
単発の攻撃力が高い曲は確かにライブ映えするし、運動中に流れてきたら気分を上向く。ただ、逆にペースを乱す要因にもなるし、あまり刺激物ばかり摂取していると繊細な感受性が機能しなくなる可能性もある。
日常的に寄り添ってもらう音楽としては、どちらかというと起伏を減らしつつ、飽きにくいものが最適とも言えるのではないか。
既存曲を抜いたglowこそ、最もその考えに近い空気を纏っているのではないかと思った。

そうは言ってもライブ会場では新たな数曲だけではなく、歌唱タイトルは全部で20曲は超えることになるだろうから、どのように構成するのか気がかりではある。
明らかに表現方法を変えている楽曲がアルバムの半数以上を占め、そして3rdまでに積み上げてきた表現力の集大成とも言えるような、まったく対照的な曲がいくつか……それらをセットリストという一連の流れに上手くまとめ上げるのは、どうにも至難の業のような気がしてならないのだ。

もっとも、私はライブで叫びたいタイプの人間ではないから、ご時世的な都合も相まって、落ち着いて聴くことができるのは歓迎したいところではあるけれど。