K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

音楽趣味

もう5年以上も前の話になるが、音楽を聴くことにハマっていた時期がある。
毎日、行き帰りを1時間以上も電車に揺られる必要のある生活をしていたから、その間に意識を向ける娯楽は必須と言っていいくらいだった。
体力的に余裕があれば読書をすることが多かったけれど、乗り換えを含む歩行時間も決して短くはなく、また電車はターミナル駅を利用していた関係で座れるのが常だったため、眠気を誘発されることが多かった。音楽は、ちょうどよかったのだ。

 

もともと神経質なせいか、外にいても私は自分の世界が脅かされることを極端に嫌う。
読書をしていたら、意識が本の中に入り込むから雑音は気にならないことが多いけれど、少し疲れて目を瞑っていたり、うとうと軽い眠りに落ちていたりする時には環境音が異常なほど耳障りに感じられるから、耳を塞いでいないと耐えがたいストレスを受ける可能性があった。
そういう意味では、鼓膜を響かせて半ば強制的に心地好く望ましい空間をもたらしてくれる音楽という存在は、当時の生活において欠かすわけにはいかなかった。

いわゆるアニメオタクなので、頻繁に聴く音楽はアニメの主題歌や、関連アーティストの楽曲が中心だった。
今でこそ、激しい曲よりも落ち着いたバラード系を好きになることが多い私だけれど、一昔前は心に刺さる曲ならなんでも大丈夫な傾向があったので、曲調の幅は広く、見たアニメの曲はほとんど音源を入手していた気がする。
最近は音楽サブスクが普及してきているけれど、あの頃は曲によっては、集めるのが非常に手間だった記憶がある。便利になったものだ。

大雑把に種類を分けると、無数にある大量のアニソン、水樹奈々fripSideだった。
後ろ2つはアニソンと被る部分もあるけれど、個人的な感覚ではアニメのタイアップではない曲のほうが名曲が多く、シングルやアルバムが発売される度に、刺さる曲が収録されているかどうか確かめたものだった。
特に、fripSideについてはアニメよりも、美少女ゲームの主題歌において打率が高く、そのシリーズを初めて耳にした際には大きな衝撃を受けたのを覚えている。

 

fripSideといえば、現在ちょうどボーカルの南條愛乃さんが卒業ということで、第2期から第3期へと移行するタイミングとなる。
週末にはファイナル公演が行われるようで、私にあと少しでも行動力があればチケットを取ろうと努力していたかもしれない。一度は生で歌を聴いてみたかった。
新しいボーカルによる新曲は既に公開されているけれど、まだ誰が担当しているのかは明らかになっておらず、声の質を含めて上手く受け入れていけるのかはファンとしての心持ちが試されるところではあると思うが、主観を述べるなら問題はなさそうに感じた。
第1期時代をほとんど知らない私は、fripSideイコール南條ボイスという風に身体が覚えてしまっている。ただ、こういうのはアニメで声優交代が起こった時にもそうであるように、時間とともに徐々に慣れていくものだ。
ビフォーアフターで違いを感じることはあれど、少しずつそういうものだと適応していく。

ここ数年は、あまり音楽を聴く機会がなかった。
毎日、外出して電車に乗るという習慣が撤廃され、一週間以上も家から出ないということが珍しくなくなってしまったので、日常で音楽を求めるシーンが失われてしまったのだ。
昨年は、暖かい時季に運動不足解消として散歩を取り入れていたものの、メインで聴いていたのは別のアーティストの曲ばかりだったから、本当に数年間fripSideとは縁がなかった。
だから、というわけではないけれど、新体制を迎えるということもあり、少し昔を振り返りつつ、以前に好んでいた楽曲を久々に聴いてみた。
端的に言うと、全身に活力が漲るような素敵な体験をすることができた。ああ、あの頃は毎日これに元気をもらっていたのか……と。
日課のように聴いていると飽きてきて効力は落ちるのだろうが、こうして間隔を空けてから摂取する「神曲」の衝撃は凄まじいものがある。直近の日々では覚えがないほどに、高まり、昂る。この上なく気持ちがいい。

かなり曲数が多いから、もちろん全部が「神」とは言わない。しかし、一部の曲については本当に好きだったのだと思い出すことができた。
まったく同じ種類の快感とはもう出会えないという意味では、第2期の終焉を残念に思うところはあるけれど、第3期はボーカル2人体制みたいだから、きっと新しい別の形で「楽曲」を生み出してくれることだろう。
いつまでも、fripSideを好きでいたいと思った。