K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

普段は質素な食生活のため肉を食すことはほとんどないのだが、今日の夕飯は珍しく外食だったので「たらふく」食べた。
全体の量自体は普段の数日分くらいだった気がするけれど、そのうち肉に関して言えば数週間どころか数か月分はあったかもしれない。それくらいに肉が多かったのだ。
体力に乏しく、疲れやすく、回復が遅い。そんな私の困った体質は、もしかしたら肉不足が一因の可能性がある。大量に肉を摂取した影響がどのような形で表れるのか、今後の数日間は身体の変化に注目したい。

 

肉の話はさておき、食事というのはエネルギーを使う作業だ。食が人生の喜びではない私は、それゆえにできる限り消耗を避けようと、日常的な食事に費やすコストを下げている。
生きるためには仕方ないこととはいえ、本意ではないのだ。用意をするのにも、胃へ運ぶのにも、時間と活力が要求される。まぁ食べないと動けなくなるのが道理であるから、そこは必要経費として割りきるしかないわけだが、節約できるのなら越したことはない。
そういう文脈で「外食」について考えてみると、これはもう他者との関係性以外には目的を見出すのが難しい。私は食べることに興味がないのだから、家に一人でいる時には絶対に生じない食への苦労に直面することになる。
大量の肉を食うという時間は、胃のキャパシティとの相談でありつつ、まさに体力との戦いでもあった。

実際に胃がびっくりしたのかどうか知らないけれど、いわば「肉」という存在は私にとって非日常だった。突然、過去に経験がないほどの肉を胃に放り込んだら、確かに困惑しても不思議ではないだろう。
消化のプロセスはどんな食材でも似たようなものだろうが、たとえば油分の多い食事の後には腹を下す確率が飛躍的に上昇するわけだし、慣れない肉の処理を任せた場合にもイレギュラーな事態に陥ると考えるのが、むしろ自然ですらある。
どうなるか事前に予想して備えておくということはしなかったが、案の定、食べ始めてから長く経たないうちに、猛烈な苦しさを感じる羽目になった。
幸い、どうしようもない腹痛だとか、吐き気だとか、その場で平静を保っていられなくなるほど切羽詰まった状態ではない。ただ純粋に、胃に入れた物量に圧倒されて、余裕がなくなっているだけなのだ。
意味がわからなかった。私の胃は、こんなにも小さかっただろうか。頑張って咀嚼を試みるも、一向に皿の上から減っていかない。もともと食べるのが極端に遅いというのに、これだけ一口ごとに詰まっていたら周囲との差は開くばかりだ。私だけ周回遅れのような感覚に等しく、あらためて食べるということの作業感を思い知らされることになった。

たんぱく質は、身体を作るのに必要な材料だ。日頃から不足しがちな私は、しかしながら少量の補給で生きていけるように身体が適応し、最低限の食事で健康体を維持していける体内バランスを得ることに成功している。
だから、こうして数週間分のたんぱく質を一気に摂ってしまうと、何が起きるかわからない。
炭水化物や脂質は、どちらかと言えば控えめなほうだったと思う。今回の食事だけで不健康に体重が増えたり、病気になったりすることはないだろう。問題があるとすれば、取り込んだ材料を肉体へと変換してくれるのか、あるいは活用できずに大半を排出してしまうのか、という部分になる。
非日常的な大食いを行うと、たいてい翌々日くらいにトイレへ行く回数が増える。文字通り、食べた分だけ出す量が増えているのだが、私の場合は体質的に変換比率が非常に高いのではないかと考えている。
苦労して食べても、なかなか己の一部とすることができないのであれば、いったい食事の意味とはなんなのだろう。

 

食べすぎると、もちろん腹が膨れる。けれど、数時間もすれば元通りに凹むし、体重は食後をピークとして、数回の排泄を挟むことなく自然と食前のレベルまで減少していく。
体内でどのような処理が働いているのかは不明だけれど、本質的に太れない人間には「あるある」の現象だと思う。

何度も書くが、日常の平均的な量を遥かに超えた食事を摂るのは、大変に負担の大きい作業なのだ。食べている最中は精一杯の力を使っているし、食後は意思に関係なく消化にエネルギーを使う。
大量の食事による副作用は、食後半日に及ぶ。血が胃に持っていかれるからか知らないが、頭の働きは悪くなるし妙な眠気が引き起こされる。
私は胃に物が入っている状態で横になると十中八九、腹痛に苦しむことになるから、ある程度まで消化が進むまでは起きていなければならないのだが、この時間が苦痛でどうしようもない。
覚醒時の身体を支えている燃料が、消化のために費やされているのだから、ほとんど抜け殻みたいな状態のまま耐えなければならない。

生活リズムの都合上、次の睡眠は翌朝に行うのがベストだと考えているのだけれど、このまま体力の減少に従って動くとなれば、思わぬ早寝早起きのパターンに入ってしまうかもしれない。
それならそれで、別に都合が悪いということはないが……生命維持のエネルギー補給が目的であるはずの食事が、逆に体力を奪い行動力を低下させるなんて、なんとも皮肉めいている。
やはり私は人間に、というより生命体に向いていないのではないだろうか。