K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

秋華賞2022回顧

世代の牝馬最強決定戦……オッズ的には「4強」に見えた今年の秋華賞だが、結果を見ると実質的には「3強」だったようで、直線の圧倒的な抜け出し方には感動すら覚えた。
私が強いと信じて疑わなかった馬も、しっかり実力があることを示してくれたし、逆に軽視していた馬が意外なほど強いこともわかったので、疑問視していた世代のレベルに対しては認識を改めようと思っている。

 

阪神の内回りは少々……いや、かなり癖のあるコースで、基本的には内前有利なバイアスが働く。
だからこそ、4コーナーの位置取りが最後方であったり、大外を回ることになったりすると、物理的に大きなディスアドバンテージを抱えたまま最終直線を走らなければならない。
よく言われるように、ある程度は先行して好位を確保し、なるべくロスなくコーナーを回って抜け出せる器用さのある馬が勝ちやすいのだ。

勝ったのはスタニングローズだった。
もちろん弱いとは思っていなかったけれど、坂井騎手が言っていたように前哨戦とは見違える強さを発揮していたように感じられた。
そもそも、あの厳しいオークスで2着になっている馬だから、地力はあるのだ。なぜか私は軸から外して紐の2番手くらいに据えていたのだけれど、今なら多くの予想家が「軸向き」と言っていた理由がわかる。
コースを問わず、常に好位を取れる優等生だからこそ、逆に真の強さに気づけなかった。強力な末脚といった武器を持っているほうが、わかりやすく強く見えしまうものなのだ。
レース映像を見返してみても、この馬の動きには文句の付け所がなかった。強いて言うなら、スタート時に2着馬、3着馬に不利を与えたことくらいで、これがなければ勝ち負けが絶妙に入れ替わっていた可能性はある。
とはいえ、これも競馬ではよくあることなので、勝ちは勝ち、負けは負け、と受け止めるしかないだろう。

2着になったのは、出走馬の中では最推しのナミュールだった。
やはり、この馬は条件が向きさえすれば相当に強い。最後の直線では差しきれるのではないかと期待したけれど、惜しくも勝ち馬の粘りが強く届かなかった。
トロールビデオを見たところ、4コーナーで大きく外を回ってしまっている。着差は、ほとんどこのロスが響いた形になるのだろう。器用さの部分で負けたというか、3コーナーまでの立ち回りと脚力では決して劣っていなかったように思う。
大味な競馬のほうが向いているようだから、阪神外回りのマイルや東京コースなら、古馬と戦っても上位の成績を残せるのではないかと思う。桜花賞では強烈なトラックバイアスと馬体減りに泣く羽目になったけれど、たとえば外差しが有効なマイルCS安田記念なら、この状態のまま向かえれば良い勝負ができそうだ。

3着は残念ながら牝馬三冠を逃すことになったスターズオンアースだった。
それにしても、負けはしたが一番強い競馬をしたのはこの馬なのではないかと、誰もが思ったに違いない。この馬はバケモンだと、今後のレースへの期待感は膨らむ一方だ。
スタートで出遅れ、さらにスタニングローズにタックルされたナミュールと、逆サイドのアートハウスに挟まれる形になって位置を下げざるを得ず、ほとんど最後方からのレースになった。
コースの特徴を考えると向こう正面の時点で絶望的と言っていいくらいで、4コーナーを回る段階では馬券になることさえ期待できない位置だった。
それが、なんだろう。あれは。厳しそうなスターズオンアースは見切って、先頭付近のサウンドビバーチェ、アートハウス、スタニングローズに視線を移す。外から追い込んでくるナミュールに注目する。ゴールまで残り短い。そんな時にもう一頭、とんでもない脚で突っ込んでくる馬がいることに気づくのだ。
上がり3Fのタイムは33.5……最後方から3着まで上がってきたのだから速いのは当然だが、それにしても規格外というものだろう。
展開が向かず勝つことはできなかったけれど、強い馬はちゃんと強いのだと思い知らされる結果となった。
次走はエリ女かJCか、どこでもいいけれど、まだ複勝率100%を維持している馬だし、どこに出てきても好走してくれるのではないかと期待感が高まる。

総じて、結果に納得できる満足度の高いレースだったし、上位3頭は今後も重賞戦線で活躍が見込めそうだから楽しみが増えた。圧倒的な存在感を持つ牝馬が引退した今の競馬界を、是非とも盛り上げてほしい。そんな気持ちが強い。

 

さて、実はこのレース、私は競馬場で観戦していた。流石に阪神までは行けないので東京競馬場ではあるが、昼から府中で競馬を楽しむ一日だったのだ。
いつもはテレビで観戦しているけれど、競馬場の空気を感じながら、周りにいる多くの人と息を合わせつつレースを楽しむのも、たまには悪くないと思った。

馬券はネットではなく紙で購入したから、いつものように貼る画像はない。
買い目は予想の記事に書いた通り、ナミュールとスターズオンアースの2頭軸から流す6点の3連複で、結果は非常に安いけれど10.9倍の払戻しとなった。
リアル馬券で的中したのは皐月賞以来だから嬉しかったし、競馬場観戦時に当てられたというのも気持ちの上では大きな意味を持つ。
来週からも、少額ではあるが馬券による楽しみを満喫していきたい。