K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

最近のアニメ事情

春だったか夏だったか、具体的な時期は覚えていないが、アニメを見ることに前向きになれなくなったという日記を書いた。まぁ日にちは調べればわかることだけれど、とにかく半年ほど前の私は、アニメ好きを騙るにはあまりにもアニメに対して注ぐエネルギーが不足していたのだ。
それから、しばらく時が経って……どうやら現在の私は、いつの間にかアニメを見る習慣を取り戻すことに成功しているようだった。

 

今期は、豊作だと言われている。
毎クール、次々と放送が始まる序盤には豊作だの不作だのと意見は出ているけれど、その評価が明確に定まってくるのはクール終盤か、あるいは放送が一通り終了してからになることが多い。
そういう意味で、今期は序盤から終盤まで存分にアニメを楽しめる土壌が提供されていたように感じられるため、世間の風潮だけでなく、主観的にも間違いなく豊作だったと言っていいのではないかと思う。

とりわけ話題を集めていた、あるいは現在進行形で集めているのは『水星の魔女』『ぼっち・ざ・ろっく!』『チェンソーマン』の三作品だろう。
いずれも放送時期が異なれば、いわゆる「覇権」……その期間を代表する作品としてアニメ史に名が刻まれるクラスの大注目作であることは間違いないのだが、それが同時期に集まったことで奇跡的な豊作シーズンになったという見方ができる。

最初の話に戻るが、私はアニメオタクとして重いスランプに陥っていた。
かつては放送される作品の大半を、時間さえ合えば極力リアルタイムで見ることに価値を見出していたほどで、アニメを見ることが余暇の大部分を占めていたこともあった。
テレビ放送だけでなく配信サービスによる視聴がメジャー化した昨今においては、当然のことながらリアルタイム視聴に重きを置く必要はなくなり、近年は一週遅れや二週遅れで見ることも珍しくなくなっていたけれど、それでもアニメ視聴という行為は生活の一部として従来と変わらず機能していたように思う。
しかし、昨年から今年にかけて徐々に……突然ではなく本当に少しずつ、アニメに割く時間が減少していった。己がアニメへの前向きさを失っていることに気づいた時には、もう何から手を付けていいのかわからなくなるくらいで、とうとう新規視聴数ゼロを記録してしまった覚えがある。

ただ、夏にはある程度のモチベーションが復活して、過去に見た作品の続編や、Twitter各所で注目されているオリジナルアニメに興味を抱いたり、熱意を持続させる工夫として某配信者の同時視聴枠を利用するなどした。
おかげで秋クールに入る際には、今年に入ってから最も気分よくスムーズに、新作を見ることへの意欲を獲得できていたように思う。
とはいえ気になった作品を手当たり次第に、というわけにもいかないので、しばらくは評判が出るのを待つ判断をした。得られるものが少ないアニメを見て無駄に時間を浪費してしまうのは、せっかくのモチベーションを再び落としてしまう事態に繋がりかねないからだ。
かくして慎重な姿勢で向き合った甲斐あって、今年の年末はアニメに関して言えば、ポジティブな気持ちで締めくくることができそうではある。

上に挙げた話題の三作品は、いずれも最新話まで追っかけて、今のところ非常に高い満足感を得ている。
本来なら、それぞれ別の記事にするべき価値のあるアニメたちなのだが、今回は「ちゃんと見ている」ということだけ書きたかったので、軽く所感をまとめるだけにした。
今後の展開によっては、別途アニメの感想記事を久々に書く可能性もなくはない。

 

『水星の魔女』については、実のところ視聴を始めるのが随分と遅れてしまった。
ガンダムの新作ということで放送前から注目されていたのは知っていたけれど、私が過去のガンダムシリーズをいずれも未視聴だったために、やや食わず嫌いのような感覚で避けてしまっていたのだ。
案の定、毎週日曜日の夕方にはTwitterトレンドが水星の魔女に関連するワードで埋まり、本当に多くの人間がガンダムを楽しんでいるのだと思い知らされる羽目になった。
見ていないのだからネタバレも何もないわけで、その時点では視界に入った情報が私の心に影響を与えることはない。盛り上がっている人々を横目に、見るべきか否か、かなり迷うところではあった。
ただ、これだけ話題になっている作品を知らずにスルーしたままというのは、やはりスッキリしない。欲求が爆発したのは今月の半ばのことだった。
一晩で一気に10話まで視聴する。なるほど、確かに面白い。練られた世界観と、散りばめられた伏線らしき要素、考察する余地は十分で、話題になるのも頷ける。
現時点では中盤というか、ひょっとすると序盤も序盤かもしれない段階なので、評価を下すには時期尚早ではあるものの、先を見たくなる魅力に溢れた作品であることは明らかであり、見ることにして良かったと感じている。
知ったことで作品にまつわる話を理解できるようになってしまったから、今後はネタバレ回避に努めなければならなくなったところだけ、やや面倒だ。

『ぼっち・ざ・ろっく!』については、既に最終回を迎えた作品なのでガッツリ感想を述べることもできるわけだが……「よかったなぁ」と言いたい。とにかく、この一言なのだ。
最終回を見終えてから、いい作品だった、満たされたと心から思える作品と出会えたのは本当に久しぶりな気がする。
「令和のけいおん」なんて形容されることもあるようで、確かに女子高生の青春をバンド活動という形で描く構図は一致しているから、その表現に文句はない。結果的に、そういう立ち位置として捉えられるのは自然なことだと思う。
けれど、最終話のあとに感想を一言で表現するとしたら、私は誰もが思いつく「令和のけいおん」なんていう言い方よりも、もっとシンプルに「いいアニメだった」と言いたい。
例によって、私は原作未読かつ今後も読むことはなさそうなのだが、このアニメは制作スタッフの手腕が非常に優れているらしい。実際、随所に飽きさせない工夫が凝らされており、ギャグはギャグとして突き抜けつつも丁寧に描くところは外さず、全体のテンポや構成には卓越したものがあった。
楽曲に対するこだわりも素人目線ながら感じられたし、あるいはキャラクター同士の関係性には尊い要素たっぷりで、これを見て好きにならない人はいないのではないかというくらい、終わったあとのロスが凄まじい。
二次創作ネタというか不穏なネットミームというか、一昔前のニコニコで流行ったようノリが通用するところも、古のオタクには刺さるポイントだ。
主人公の後藤ひとりが醸しだす陰キャオーラや陰キャあるある表現は妙に解像度が高く、個人的に極めて感情移入しやすかったのも高評価の一因かもしれない。
これもまた、忘れない作品になるだろう。

チェンソーマン』については、どうにも賛否両論あるようなのだけれど、ここまでは大きな不満なく楽しめている。
キャラクターたちがジャンプ原作漫画らしくない、ちょっとイカれたやつばかりなのがまず面白いのだが、本作はそれ以上にアニメーションとして見応えのあるシーンが多い。
何かと監督が叩かれているのを目にするけれど、私は原作を読んでいないこともあって、アニメとしての表現を追求する姿勢はリスペクトしたい。
漫画をそのまま映像化することを所望している人間も少なくないかもしれないが、アニメはアニメとして独自に描いてもいいと思う。むしろ、漫画とは異なる作品となることこそが、アニメ化の理想形ですらあるのではないだろうか。
この作品には、そのこだわりに耐えるだけの核が備わっているのだから。きっと。
話の展開については非常に緩急が豊かで激しく、やはり令和の作品らしく途中で退屈することはない。冗長な部分は作りすぎない。一方で、見せ場にはしっかりリソースを割く。
短い話数でもキャラクターに想い入れの気持ちが湧いたし、だからこそ劇的な状況の変化には多少なりとも衝撃を受けた。
まだまだ先は長そうだけれど、アニメとして完結するまでは楽しみに追うことができそうだ。
原作は原作で傑出した面白さを誇っているらしいから、気になってはいる。私にとってはアニメが原作みたいなところがあるから、読むとしたらアニメが終わってから、アニメと比較しつつ、になるだろうか。

 

そんなこんなで、軽く書くとは言っても三作品も取り上げたら文章は長くなってしまうもので、別の機会を設ければよかったという気持ちが少しばかり出てきてしまった。
今期は「豊作」だけあって、他にも見ておいたほうがいい、面白そうな作品が複数ある。

古のオタク以外に需要があるのか微妙なので書かなかったけれど、BLEACH最終章も素晴らしい出来で、ぼさろだけは1クールで終わってしまったものの、2クール以上の質の高いアニメが多いから、来年もアニメを見ることが楽しみになっている。
スランプから立ち直りつつある時期に、このような作品群に出会えたことは幸運だった。