K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

手紙作戦

例の鼾モンスターに対するストレスが一定量を上回ってきて、そろそろ我慢するのが難しくなってきた今日この頃、いよいよ直接的なメッセージによって状況の改善を試みようという気分になった。
簡単に言うと、鼾がうるさいからどうにかしろ、という主張を何重ものオブラートに包んで文章化し、それを相手の郵便受けに投函する作戦だ。

 

今回、慎重に事を運ばなければならないポイントは、なるべく相手に協力の姿勢を取ってもらうところにある。
というのも、鼾というのは個人差はあれど生理現象に分類されるものだろうから、反対側の住人が頻繁にやるような半ば意図的な、能動的な騒音迷惑とは根本的な性質が異なるからだ。
強い言葉で行動を制限しようとしたところで、眠ってしまえば意味がない。意識がない状態の相手に向かって、いったい何を期待できるというのだろう。
また、これも個人差があるところだろうが、人によってはセンシティブに感じやすい問題でもある。自覚的ならともかく、そうでなかったとしたら相手にとっても少なからずショックな事象という可能性は否定できない。
自らの睡眠中の状態なんて、むしろ事細かく熟知しているほうが不自然だ。他人に指摘されて初めて、鼾をする体質だと気づくケースも珍しくないのではないだろうか。
そういうわけで、被害者たる私の状況は反対側の騒音に対するものと大差ないにもかかわらず、事態の解決に向けては正反対のアプローチが要求されるかもしれない……そんな風に感じている。

一昨日も、昨日も、そして今夜も……このところ隣人は毎晩のように、盛大な音を立てて眠りを謳歌している。
きっと図太く鈍感で、些細なことを気にしない性格なのだろう。私なんて隣人の目覚ましアラームで隣人よりも先に目覚めてしまうくらいだから、もし鼾なんて発生させていたら即座に自らの衝撃で目を覚ます自信がある。
そうではなく、ほとんど夜中の間ずっと低音振動を響かせ続けている隣人のことだから、気がついていない蓋然性を想定しておく必要がある。
そんな相手には、もうシンプルに事実を突きつけてやるのが一番なのだ。お前がどれだけ私を苦しめているのか、しっかりと教えてやろう。

それにしても、不快感に任せて文章を生成するのは、ここに越してきてから何度目だろうか。
何も問題がないのなら、わざわざ他人に向けて文章を書くこともないから、ある意味で必然的な流れとも言えるかもしれない。
表面的には敬語で取り繕いつつも、露骨に不快感を滲ませた表現を重ねることにも、もう随分と慣れてしまった。
一度でも筆を執れば、あとは最後まで一直線だ。ほとんど刹那のような一瞬で下地は出来上がる。
あとは、これを数時間から数日間、寝かせておくだけ。流石に勢い任せに書いたものを、そのまま相手に投げる行為はリスクが高い。単純な誤字脱字を避けるためというのもあるが、客観的にそれを読んだ時にどのような印象を受けるか、つまり与えるか……これが事態の行く末にかなり左右すると思うのだ。
伝えたい事実と主張の要点を押さえつつ、相手を不愉快にさせない程度の体裁は最低限であり、目的は喧嘩ではなく問題の解決なのだから、可能であれば協力してもらうくらいのスタンスのほうがいい。
残念ながら、反対側の隣人は知能が低すぎるのか知らないが、話の通じないゴミクズという烙印を押さざるを得ないのだけれど、今度の相手は真っ当にコミュニケーションできる人間であることを願いたい。
眠っている時は爆音を奏でる怪物ではあるが、起きている時には理性を働かせられるのが普通に育った人間というものだろう。


前日の日記と繋がる話でもあるのだけれど、多くの夜は不快な音に塗れている私の部屋では、規則正しい早寝早起きが実現することはない。
もはや夜に布団へ向かうことは諦めて、今夜は多少の眠気を耐えながら、日の出以降の就寝および久々の快眠を目指そうと考えている。