K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

連作の難しさ

今日は私自身の話というよりは、シリーズものの作品に対して思うところを書き留めておこうかなと思った。
きっかけはTwitterで流れてきた某創作なのだけれど、少し批判的になってしまいそうなので、あまり具体的な情報は出さないでおこう。

 

れん‐さく【連作】

文芸・美術などで、同じテーマやモチーフに基づいて一連の作品を作ること。また、短歌・俳句などで、一人の作者が同じ題材でいくつかの作品を作り、全体として一つの味わいを出そうとするもの。また、その作品。

どうでもいいけれど、辞書を見たら「連作」に複数のまったく異なる意味があって意外だった。

 

小説にしろイラストにしろ漫画にしろ、最近は気軽にTwitterで投稿できるうえに、一連のシリーズとして人気が出れば、フォロワーの増加が見込めたり、一定数のRTいいねが確約されたりするため、連作を発表している人の数が爆発的に増えたように思う。

個人的にTwitterなどで行う連作というのは、作者が創造した世界観を徐々に表現物として供給し、作者と読者を含むインターネット上のつながりの中に、概念的な作品世界を構築していく営みだと思っている。ある程度のものが出来上がるまでには時間がかかるし、続けていくほどさまざまな要素を考慮しなければならないため、その分だけ一貫性を保つことは難しく、作者の手腕が問われる部分だとも思っている。
単発作品であれば、作者が一度きりですべてを出すことになり、受け手は出されたものだけで満足することしかできないが、連作であれば話は変わってくる。登場させるだけキャラクターは確固たる存在になっていくし、その作品世界が持つ制約が強くなる。一方で、ますます期待が高まり、キャラクターや物語の可能性は際限なく探られようとする。中には二次創作が作られるものまである。
要は作品が長引くほどに、作者の当初の想定を超えた展開になりやすくなるということでもある。それなりに続いているのであれば、多くの者に支持され一定の人気が出ているということになるのだろうが……長く続けすぎた結果、作者が本来目指していたはずの場所と、大衆に期待されている展開と、その時々の勢いによって実際に表に出た結果には、微妙に差異が生まれていくことになる。

少し前に話題になっていた、100日後に○○シリーズみたいに、初めから話数が決まっているのなら、ある程度は制御することも可能だろう。けれど、大半の連作は勢いでスタートし、反応を見ながら場当たり的に表現したいものを積み重ねていくパターンが多くを占めるのではないか。特に確証はないが、観察した限りにおいて私はそう思った。
連作として続けていくからには、ぼんやりとした到達点みたいなものの設定は考えているのかもしれない。ただ、その過程を頭から尻尾まで緻密に設計しておくことなんてほとんど不可能に近いと思うし、得てして創作とは勢いに任せたほうがうまくいくこともあるものだ。
そして、すべてがそうなるという話ではないけれど、たまに作品の魅力そのものを削ぎ落してしまうような、作品の根幹にヒビを入れてしまうかのような展開に陥ってしまうことがある。いや、陥るという言い方だと失敗のように聞こえてしまうので、語弊があるかもしれないが……つまり作者が初めから描きたかったものである可能性は否定できないわけだが、しかし多くの読者にとって、それは裏切りのように映るはずだ。

長期シリーズには愛着が湧く。人の心を掴むことに成功すれば、注目度は上がるしフォロワーも増えていく。だからこそ、作品に寄せられる期待の総量は、シリーズ開始時点とは比べ物にならない。作者側も、次第に感覚が麻痺していくのかもしれない。もう少し大きな反応が欲しい。最初の案ではつまらない。もっと過激なものに。
そうやって、作品の方向性が少しずつ捻じ曲げられていった結果、どこかのタイミングで一線を越えてしまう。それが偶然、少なくない数の人間にとってネガティブな内容になってしまったとき、猛烈に否定的な言葉が飛び交うことになったとしても不思議ではない。それを見ていると、とても悲しくなるのだが、いわゆる「残当」というやつなのだろう。

長期シリーズで安定したものを生み出し続けている作者の方々は、運を味方につけている部分もあるとは思うけれど、本当にすごいことだ。

 

私はどちらかと言うと、全体的なバランス重視というか、一貫性を大事にしたほうが好ましいと考えているため、何かを発表する前にはしばらく時間を置いて客観性を取り戻してからのほうがいいと思っている。よくも悪くも、創作に励んでいるときというのは視野が狭くなっているし、過度に集中していると正常な判断をし損なうことが珍しくない。

こういう反応になるって、わからなかったのか。
ふと思う。でも、きっとわからないのだ。

勢いも重要ではあるけれど、これまでに育ててきたキャラクターや世界観、作品内の人間関係などは財産なのだから。それらを一瞬で壊してしまいかねない行為に対しては、慎重になるべきではないかと考える。作者だからと好き放題やって台無しにしてしまうのは、あまりにももったいない。
いや、まぁどうしようが本質的には作者の自由だ……けれど少なくとも、自分が発信する立場になるとしたら、できるだけ気をつけたいと思っている点だ。

たまに発生する受け手にとってネガティブな急展開、みたいなものは反面教師としてちょうどいい。
どうしてそうなったのか、作者の心境まで分析できたら面白そうではあるものの、所詮は他人なので、プライベートあるいはデリケートな問題かもしれない部分に突っ込んでいくのは、なかなかに難しいだろうとも思う。

 

ちなみに個人的な感想としては、以前の日記にも書いたように、とりあえず「まぁいいんじゃないの」くらいのスタンスでいる。あまり熱心に見ているシリーズではなくて、TLに流れてくるのを見かける程度のものだったし。
ただ、「お前はそれでよかったのか」という作者への想いもあったりなかったり。