K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

契約の話

個人的に、労働という風には考えたくないのだけれど、人が動いて金が発生するということになれば、形式的には労働という扱いになる。
労働は人と人、あるいは人と組織との契約関係で成り立つものだから、なんでも適当に済ませてしまいがちな私においても、そろそろ考えておく必要があるなぁと思い始めた今日この頃。

 

今のところは、まだ口約束をしたに過ぎないのだ。一応、関わることになりそうなメンバーとの顔合わせはあったけれど、予定している作業というのはまだ確定した未来ではない。
先日から心の奥底に留まり続けている気持ち悪さ……不安というよりは、不安定感という表現のほうが近そうだが、過去にあまり体験したことのないネガティブな感覚の原因は、ここまでで契約関係の話がまったく行われていない点にあるのだと考える。
一般的な、普通の企業との堅苦しい間柄というわけではなく、言ってしまえば互いに過去の様々なエピソードを共有している親しさが接着剤として機能している部分もあるものだから、主目的から逸れた事務的な手続きについては、つい後回しになってしまうのだろう。
もちろん混沌に飛び出したばかりの私が不慣れであることも要因の一つで、また相手が多忙ゆえに先出しするほどの余裕がないというのも要因の一つなのだ。もう少し具体的に物事が決まっていくまでは、はたして検討する余地があるのかどうか……今はただ、待つしかないのがもどかしい。

主観的な事情はさておき、状況を整理するなら、どうしても事前に確認しておくべきという結論に至る。ネットで調べてみても、真っ先に確認を取るべきだという意見が大半を占めていて、うっかり失念したばかりに失敗したという体験談も散見された。
ただ、やはり細かい部分は来月か再来月にならないと見えてこないだろうという先方の状況は理解しているから、今の段階であまり強く迫っても意味がないと考えている。
今後の関係性を考慮するなら、スタート前の現時点からギクシャクしてしまうのは絶対に避けたいところだ。なるべく穏やかに、それとなく問い質せるのが理想ではあるが……しかしそんな都合のいい手段があるのだろうか。
というわけで、まずは会話を進めるための材料が必要だと思った。今後、私がどのような立場に置かれる可能性があるのかを複数パターン考えてみて、それぞれにおける契約上の差異を見極める。どう進めていけば互いの不利益を最小限に抑えられるか、利益を最大化できるのかという観点で、次に会った時に前向きな提案ができるよう試みる。

 

しばらく、慣れない法律絡みのページを眺めていて感じたのは、結局のところ自分一人では何も決められないということだった。
知識を増やすのはいい。交渉材料を手に入れるのは、ボス戦前にレベル上げをしているような感覚で結構なことだ。
けれど、それは心の介在していない、ただの武器でしかない。磨いていないうちはナマクラだ。個別のケースに適用させるには、あまりにも形式的すぎて役に立ちそうにない。もう少し実践的に考えるには、相手の意見が不可欠なのだ。

今の私にできることは、いつか直面するであろうお金の話題になった時に、あの人がどのような考えを私に投げてくるかを想像してみることだ。状況に応じて、こちらの返答を変えることができたら好ましいのだけれど、臨機応変というのは多少の経験あってこそ可能となる行動にも思えるので、些かグダグダしたやり取りになることは不可避かもしれない。
まぁ今後やろうとしている事柄は、アイデアを出し合って一から創り上げていくイメージに近いし、慣れていないことを始めるのだから探り探りになるのは致し方ないところがある。それなりの型が出来るまでは、もうしばらく時間がかかるだろう。

 

今さらになって思うのは、あの人と私が臨もうとしているのは、他の人からではわからない信頼関係の上に初めて成立することなのではないかということだ。
普通ではあり得ないような、ちょっぴり特別な関係。それは、なんというか、とても喜ばしいことであると同時に、かつて労働に従事していた時のようなメンタル面におけるいい加減さが許容されないことを意味する。
別にプレッシャーを感じているわけではないし、むしろ自分でも驚くほど積極的に取り組みたいと思っているから疑問視しているわけではないのだが、これまでの人生で感じたことのない意欲が湧きつつあるので、不思議な感覚であることは否定できない。
まぁここまで真剣に考えるようになっているのに、実は騙されていた、なんてことになったら一生モノのトラウマで絶望感に浸るしかないので、それさえなければなんでもいいというのが本音かもしれない。

私は生まれて初めて、家族以外の人間から本当の意味で信用され、あるいは他人を信じようとしているのだと思う。半年後くらいにどうなっているのか、非常に興味深い。