K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

季節の変わり目

冬に入った時から早く春になれと願っている私は、近頃の変動しやすい気候に翻弄されている。
昨日は、ようやく暖かくなったと思ったら急に雨が降り、夜には再び冷え込んだ。今日もまた日中こそ比較的過ごしやすかった気がするけれど、日が暮れてからは冬に戻ったかのような寒さを感じて、相変わらずエアコンを止めることはできない。


日々の気温差が大きいから、うっかりしていると風邪を引いてしまいそうに思う。寒さと花粉を嫌って滅多に外出しない今の生活は、はたしてメリットとデメリット、どちらが多いのか。
運動不足で体力が落ちているのは確実だから、ちょっとしたことで健康を損ねてしまいかねない現状を鑑みると、食事と睡眠だけは怠らないようにしなければいけないような気がしてきた。あいにく、どちらも不完全なのでそのうち本当に風邪を引きそうだが。

まぁ免疫力が体力に比例しているものなのか、よくわからないところではある。体力という観点では若者に比べて圧倒的に劣後しているはずの老人は、しかし必ずしも不健康というわけではない。
歳を重ねるほど、より多くの菌と触れる機会があるから、それだけ耐性も多く持っている。まさに免疫というのは、人生の経験のようなものかもしれない。
一方で、大きな病に罹ると治りにくいとか、重症化しやすいというのが、年老いた人間の明確な特徴の一つだろう。確率的には若い人間よりも風邪を引きづらいが、いざ罹ってしまうとマズいことになると。

風邪を引いたら普通に怠くなるし、喉の痛みや際限なく湧き出る鼻水に苦しむことになるから、そんな症状はないほうがいいのは当然だけれど、まだ若者に属する私は高確率で軽症で済むのだから、あまり恐れる必要はないのだろう。
もし具合を悪くしたら、日頃の不摂生が祟ったのだと反省することができる。大袈裟なようだが、今後の生き方を改善するチャンスにさえなるのだ。
……などと思うのは勝手だけれど、これまでの人生で風邪を引いたことで自らの生活習慣を真面目に省みたことなどあっただろうか。

そういえば、個人的に思うのは、風邪というやつは人によって表れやすい症状が異なるのではないかということ。
すぐに発熱する人、そこら中に咳を撒き散らす人、頭痛に苦しむ人、鼻が詰まって口呼吸を余儀なくされる人、喉が腫れて会話や食事が苦痛になる人……などなど、あるいはいくつかの複合タイプや、日毎に症状が変化するパターンもあるだろう。
私の場合、最も多いのは喉から来る風邪だ。まず喉の奥が痛む。その時点では風邪かどうか判断できず、一晩眠れば何事もなかったように回復することもある。
翌日になっても痛みが続いていたら、いよいよ風邪を引いたのではないかと疑い始めることになる。次第に症状は喉から鼻へと移り、さらに翌朝には呼吸が苦しくなり、黄緑色の痰が鼻や喉に絡んだようになる。一時間に一度程度ティッシュを消費しながら、なんでこんな目に……と現実を恨めしく思う。しかし風邪で最も苦しいのは、ここから先なのだ。
次の日、さらにその翌日になると、鼻から喉にかけての空気の通りは随分と好転する。なんだ、もう治ってしまった。そう油断するのも無理はない。
けれど残念ながら、風邪はまだまだ続く。しかも、完治まではさらに一週間近くを要することもある。
最後の難関は、咳だ。
身体の中で暴れていた悪いものが、最後の足掻きで喉に滞留しているかのような苦しみが、昼も夜も関係なく私の心身を苛める。ふとしたタイミングに、猛烈に咳を催すのだ。咳をしなければ、なんとしても悪いものを吐き出さなければ。そうやって、避けられない身体反応が横隔膜の震えを促し、その瞬間に私は呼吸困難に陥る。
家にいる時であれば、いくらでも楽な体勢になれるし周囲に気を遣う必要もないから、ただ苦しいだけで済むのだけれど、それが外出中であると本当に地獄だ。人前で咳き込むことは憚られるし、あまり物音を立てたくない静かな状況ということも珍しくないから、必死で咳を堪らえようとする。我慢すればするほど咳というのは爆発力を高めようとしてくるから、これを抑え込むのは本当に大変だ。自然と涙が溢れて止まらなくなる。
死闘の末、波が去ればしばらくは落ち着く。けれど、いつまだ発作が起こるかわからない。風邪を引いている時に外にいなければならないというのは、私にとっては寿命を削るような覚悟が必要なことだった。

私の典型的な風邪のパターンは、はたして一般的なものなのか否か……私は熱を出すことがほとんどない、というか中学生の時が最後だったので、Twitterなんかで高熱を測った体温計を見せている人の気持ちは、よくわからないのだ。
熱を出すことがどれだけつらいのか、わからない。それはつまり、仮に発熱してしまったとしたら対処方法がわからず途方に暮れる可能性があるということにもなる。
今は一人暮らしなので誰の手を借りることもできないし、想像したらいよいよ大変そうに思えてきた。
いつ「いつもの風邪」以外のものに苦しめられることになるかもわからないので、やはり健康を意識するに越したことはない。

さて、そんな私は今日もおそらく十分な栄養が取れていない気がするので、たまには適当な自炊で済ませるよりも、外食にするか出前を取るかして、ちゃんとしたものを食べる機会を作るべきなのだろう。