K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

着信履歴

今どきの若者なので自宅に固定電話を置いておくメリットがあまりなく、必然的に各所に登録したり記載したりする連絡先は携帯電話の番号になっているのだが……私は電話というものを心から嫌っている。
まぁそもそも常にサイレントマナーモードにしているため気づかないことも多いのだが、例外は家族くらいのもので、たとえ使用中にかかってきたとしても、基本的には無視することにしている。

 

人との付き合いが絶望的に少ない私ではあるが、世の中からまったく相手にされていないわけではないらしく、たまに電話がかかってくることがある。
たいていの場合は保険の勧誘のような取るに足らない用事なので、役に立った経験はほとんどないのだけれど、見知らぬ番号から着信があれば気になるのが人間の性というもの。
先月から今月までの間にも数件の着信履歴が残っていて、いずれも通話はしていないのだが、一応どこからのものなのか、それぞれ番号は調べている。

一つは、契約している電気会社からのものだった。
先週と、それから今日。二件の着信はどちらも「ただいま電話に出ることができません。発信音の後に〜」というタイミングで切られており、用件は不明のままだ。
こういう電話は非常に迷惑というか厄介なところで、もしかしたら請求関連で何か変更があるのかもしれない、などと余計な不安を感じてしまうから勘弁してほしい。
メッセージを残していない点から、どうせ大した用事ではないと推測されるし、おそらく「お得なプラン」の紹介みたいな聞くに値しない電話なのだろうけれど。

余談だが、このご時世だというのに、この電気会社は契約時にも電話しか寄越さなかったのを覚えている。
メールによる案内や、書面による通知が一切ない。唯一、送られてきたのがマイページにログインするための番号とパスワードくらいで、契約に関わる詳しい説明や情報の提供は何も行われなかったのだ。
仲介業者に丸投げしていた私が悪かったわけだけれど、問い合わせ窓口が電話限定なんて、ふざけているにも程がある。
口コミの評判は最悪だし、私も実のところ過去半年の間に若干の不利益を被っているので、さっさと倒産してほしい。


もう一つの着信は、先月の連休前のことになるが、謎の番号からの電話だった。謎というのは、090から始まる個人の携帯番号のため、検索しても出てこないからだ。
午前中に二件、夕方に一件の着信ということで、間違い電話でもなさそうだし、それなりの用件があるのではないかと想像できる。
まぁそれなら、どうしてメッセージを残していないのか疑問だが……何度か電話して捕まらないようなら諦めようというスタンスなのだろうか。わざわざメッセージを残して私の時間を奪うほどでもないと。
ただ、ひょっとすると学生時代の知人という可能性もあるから、折り返したほうがよかったのかもしれない。
こういう時、コミュ力お化けの人は知らない番号に電話をかける勇気があるのだろうか。

私が昔から使っていた電話帳は、二代前のスマホが故障した際に引き継ぐことができず失われてしまっているので、今の電話帳には家族と親しい友人の数人しか入っていない。
というより、LINEが一般化してからは連絡の大半がLINE経由となっているから、現時点においてそちらで「友だち」となっていない人間との縁は切れたものとすら思っている。
そういうわけなので、昔の知人であったとしても、どうでもいいと言えばどうでもいいのだが。

こういう謎の着信は年に何回かあるので、珍しいことでもないのだけれど、一日に同じ番号から何度も(メッセージなし)、というのは初めてだったので、少し気になった。
しかし、どれだけ調べても誰なのかはわからない。
ふと、そういえば前の端末はどうだろうと思った。二年前の三月まで使っていたスマホなのだが、今でも充電すれば動くので、ちゃんと保管している。
通話中に自動で録音するアプリを入れていたから、もしかしたら音声履歴が残っているかもしれない。

というわけで久々に起動してみたところ……半分、予想が当たっていた。
どうやら、ちょうど三年前にも同一の番号から電話がかかってきていたらしいのだ。これには流石に驚いた。
録音されていたのは自動音声で、相手の声が入る前に切られてしまっていたから結局のところ人物の特定には至らなかったのものの、これで相手の候補が相当に絞られたような気がする。
つまり、過去三年のうちに初めて関わりを持った人間ではないということだ。

そこまで考えて、しかしながらそれ以上は何もヒントがないことに気づいて、私は推測するのをやめた。
この三年の間に相手が何をしていたのか知らないが、仮にかつて付き合いのあった人間だとしても、流石に時間が経ちすぎている。メッセージが残っていないのだから、私がわざわざ気にかけることでもないだろう。

あるいは電話ではなく、SMSで「Who are you?」と尋ねるのも面白いかもしれない……ああ駄目だ、思いついたら試してみたくなってしまった。
着信から二週間以上が経過してから反応するのも変な話なので今回は我慢することにして、もし今度またこの番号から着信があったら、やってしまうかもしれない。