K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

寒さを知り隣を知る

寒いのでなるべく外に出たくないのだが、連日そう思っていたら食料が尽きそうになっていたので、生きるのは簡単ではない。
毎日、就寝および起床の時間が少しずつズレていくせいで、実家から戻ってきた時点では早寝早起きできていた生活がすっかり夜型へと変化してしまった今日この頃、布団から出て買い出しに行く支度が整う時にはもう日が暮れていた。

 

寒がりのわりに、私は昔から防寒具を身に着けることがあまりない。まともにマフラーを使ったことがないから着用方法を知らないくらいだし、手袋も所持していない。
もし頻繁に外出するのであれば、そのあたりのアイテムを活用できるようになったほうが幸福度が上がりそうではあるけれど、今のところ週に一度くらいしか外気に触れる機会なんてないもので、購入しようとすら思わない。
まぁ単純に、わざわざ装備するのが面倒というのが最も大きな理由なのだ。たとえば出先で暖かい室内に入った時などを想定すると、いちいち外すのも億劫に感じるから、一時的な寒ささえ我慢できるのであれば使わないほうが余計なエネルギーを消費せずに済む。

昨年末以降、本格的な冬が到来してからというもの、実質的な買い出しは今日が初めてだった。
年末年始の帰省前は、賞味期限や消費期限を考慮してスーパーに行くのを控えていたし、年が明けてこちらに戻ってくる際に立ち寄って少しだけ買い込んだものの、基本的には限られた食料でやりくりしていたのだ。
本当にすっからかんになってしまうと、買い出しの帰り道がそれなりの重量になって大変だから、長持ちする品を地道に買い溜めておくことが重要なのだと、いまさらのように思う。
大きいビニール袋に入った大量の食料を細腕で運ぶのは、夏も冬も変わらずしんどい。

夏は暑さで汗が出てくるし息が上がりやすい、冷凍食品が解凍されてしまう、などの問題があるけれど、一方で冬は手先へのダメージが大きくなることが悩みだ。
とにかく冷える。感覚がどうにかなってしまうくらい、この時季の夕方以降は指先に厳しい。
悩むくらいなら手袋をすればいいという話ではあるのだが、春が訪れるまでの短い期間に週一でしか使わない物を用意するのは気が進まない。片側は上着のポケットに突っ込んで寒さを回避できているから、数分に一度、持ち替えれば済んでしまう。
日常的に手袋を使いこなしている人間からすれば、バカみたいに映ることだろう。そういう性格なのだから、仕方ないのだ。

 

震えそうになる身体を懸命に動かして、帰宅しようした瞬間だった。
ガタガタと音が鳴って、私の部屋の手前にあるドアが開いた。隣人だった。
一昨日の日記で書いた、新しい入居者と鉢合わせる形となる。本当に間が悪い。互いに30秒でも行動時間が変わっていたら会うことはなかっただろうに、まさか私の帰宅のタイミングにドンピシャで隣人が出てくるとは……別に顔を合わせたからといって何が起こるわけでもないのだけれど、これで嫌でも隣にいる人間の存在を認識せざるを得なくなるから、できれば会いたくはなかった。

隣人の情報として、不明だった性別は女だと判明した。年齢は不明だが、おそらく20代〜30代だろう。
まだ行動パターンの把握はできていないが、深夜に鼾が聞こえてくる以外には非常に静かで、日中は大学生だとしたら通学しているし、社会人だとしたら出勤しているのだと思う。
今日はなぜか昼間に在宅だったようなので、確かなことは言えないけれど、この感じが続くのであれば、鼾以外に不満を抱くことはなさそうだ。

互いにマスクをしていて、しかも一瞬のことだったから、正直なところよく覚えていないし、逆に覚えられているという可能性も考えづらいだろう。
記憶に残るのはパッと見の印象くらいのもので、それならばきっと、私と同様に相手が得た情報も大まかな年齢と性別くらいのものだったはずだ。
しばらく長い隣人関係になるだろうし、なるべく穏やかに、悪いイメージを与えないように過ごしていきたい。