K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

過去最大の筋肉痛

深夜の話になる。
昨晩、夜に仮眠を取ることで睡眠時間を調整して、体調も整えることができた。
幸い、日中ずっと降っていた雨は夜中には止んでいて、やや湿度は高いものの気になるほどの暑さはなく、自分のコンディションと外の環境が運動に適した状況になっていたのだ。
ここ数日、そろそろ散歩の習慣を再開したいという話をしてきていたし、この機会の逃す手はなかった。

 

世間の活動レベルが最も低下する、普通の人は寝静まっている時間帯……深夜の3時半に、私は足音を立てないよう密かに玄関から外に出た。
上は半袖一枚、下はジャージという考え得る究極の軽装で散歩に臨む。この格好になるだけで、身体が軽くなるようだった。
たかが散歩と侮ってはならない。なぜなら、私が行うウォーキングは一般人のそれとは基本的な速度が異なるからだ。
普通に人混みの中を歩いていても、次々と他の通行人を抜かしてしまうくらいに普段から速歩きがデフォルトの私だが、身体を存分に動かす条件が揃ったら、さらに勢いが増す。
それは、十か月ぶりというブランクを経ても変わることはなかった。現時点で出せる自らの限界……そんなものは特に考慮せずに、初めから全力で飛びだしていった。

久々ということもあったが、今回は音楽を聴きながらではなく、景色を楽しむことにした。散歩コースを以前から若干、変更したこともあって、それなりに新鮮味を感じることができた。
マンネリ化を避けたいという目的もあったが、一番の理由は虫を避けたい気持ちからだった。全力で歩いていると、特に夏という季節には当たり前のように顔や身体に虫が纏わりついてくる。できれば、虫に遭遇しやすい林道を通りたくなかったのだ。
その結果、これまで距離は約3.9kmのルートだったけれど、今回は約4.5kmと延長することになった。
散歩はジョギングとは違って、途中で脚が止まるほど息が上がることは滅多にない。身体への負担は増加するにせよ、少し長くなる分には問題ないと判断した。

ペースは……どうだっただろう。長い休養明けにしては、やや速すぎたかもしれない。序盤で既に、下半身の節々が悲鳴を上げ始めた。
しばらくペースを緩めずに歩いていると、マラソン中のようなゾーンに突入して、一息が入る感覚になる。昨年の好調だった時期には、この状態になれば最後まで速度を維持できたものだったが……流石に今回はバテるのが早かった。
半分を過ぎたあたりで、心臓に強烈な違和感を覚え始める。全身に血液を送るために、頑張りすぎてしまったようだ。昨日、心拍数の日記を書いたけれど、回数だけでなく心臓が発するインパクトとでも言えばいいだろうか、普段の動悸とは比べものにならないほど強いバクバク感を全身で味わう羽目になった。
心臓への負担は、記憶の限りではこれまでの人生で最大だった可能性がある。道半ばにして、体力的な限界を迎えた。

アドレナリンが出ているからだろう、それまで脚の痛みは感じていなかったけれど、意図的にペースを落として負荷を軽減すると次第に下半身全体の動きが重くなってくる。
ギリギリのところで、信号に引っかかった。グタグタになっていた心肺機能は、これで少し回復することができたけれど、逆に脚は疲労を自覚することになる。青に切り替わって一歩を踏み出そうとした瞬間、足の甲から臀部全体にかけて痛みが走った。
通常、筋肉痛とは運動後しばらく経過してから顕在化するものだけれど、これはそんなレベルではなかった。日常で使用しない筋肉を急にフル稼働させたせいで、その時点でもう大半の筋肉がズタズタに崩壊していたのだろう。次に止まったら、すぐに動けなくなりそうな恐れさえあった。

 

数字の話になる。
昨年の散歩で使っていたルートは3.9kmで、タイムはおよそ31分前後だった。
実際には信号待ちの回数で変わってくるが、素の歩行時間では31分付近に収束していたように思う。無理をしても30分を切るのは不可能に近く、調子が悪い日は32分や33分になるという感じだった。
道中の疲労具合、上り坂、下り坂、などなど場所によって速度に変動はあるものの、平均すると1分あたりに120~125mを進む計算になる。

今回の散歩は4.5kmなので、当たり前だが時間を要することになる。以前の慣れたペースであれば、約37分くらいになるが……おおよそ39分弱くらいだった。
ただ、信号で停止した時間が1分以上あったことと、心臓が苦しくなって数分間ペースダウンしたことを考えると、序盤から中盤にかけては、実質36分台のペースだったと言っていいだろう。
推定ではあるが、これは明らかにポテンシャルを超えるハイペースだ。
久しぶりの運動で、身体に無理のない速度勘を忘れていたのかもしれない。運動不足だからキツいのかと思っていたけれど、現実的には体力が万全の状態でも苦しくなりかねない過剰な運動だったということになる。
次からは、ちゃんと最後まで持続できるバランスの良いペースで歩きたい。

 

帰宅したのは夜明け前だったが、仮眠のおかげですぐに眠気は出なかった。
再び布団に入るのは日の出から少し経った早朝だったけれど、歩行中から生じていた筋肉の炎症は帰ってからひどくなる一方で、本当に歩けなくなりそうな勢いだった。

次に起きてから、これを書いている現在までの間に、痛みが楽になるということはない。少しでも動こうとすれば、下半身のどこかが痛みを訴える。
徐々に、ある程度の時間が経過した後の筋肉痛……すなわち普通の筋肉痛に痛みの質が変わってきた感覚はあるけれど、これは決して嫌なものではない。しっかり身体を動かしたという証でもあるから、心地好さすらある。
ただ、かつてない痛みの強さと範囲に、治るまで一週間近く必要なのではないかと思ってしまう。
ほとんど室内の移動しかない生活ではあるが、当分まともには動けないだろう。

せっかくなので、来週またどこかのタイミングで散歩しようとは思っているが、生活リズムと脚の回復速度によっては再来週になるかもしれない。
ある程度、筋力と体力が戻るまでは、三日おきといったような定期的な運動は難しいだろう。