K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

尻で歩く

朝、散歩をしていて気づいたことなのだけれど、同じ歩行という行為であっても意識するのとしないのでは、速度から身体への負担まで、様々な違いが出てくる。
ただ単に速く歩きたいからと無理をすると、無駄に息が上がったり足が痛くなったりして、健康を目指した運動であるのに結果的に身体に悪影響が出かねない。
一方で、一歩一歩をしっかり踏み出しながら歩くことを考えていると、スタミナの消費は抑えられるし、適切に筋肉が使えて痛みが残りづらいのだ。

 

イメージの話になるが、脚で歩くか、尻で歩くか、という違いがある。
いやいや、脚で歩くのは当たり前ではないかと思われるかもしれない。実際、動かしているのは右脚と左脚で、どんな意識を持ったとしてもその構造に変わりはない。
けれど、その脚を動かしているのは、別に脚の筋肉だけではない。脚の付け根にある大臀筋は、あまり気にすることはないけれど、身体全体を支える土台のような役割を果たしている。
より大きな力を脚に伝えて推進力とするためには、むしろ大臀筋こそが、最も人間の動作において重要なのではないか。専門家ではないけれど、体感としてそう思ったのだ。

臀部を意識しない歩行においては、ひたすらに前方へと脚を動かすことが動作の中心となっていた。
それでも前には進めるし、身体を大きく使うことになるから運動として捉えるなら問題ないかもしれない。しかし、疲れやすいフォームで歩くことになる上に、脚をしっかり使えている感覚に乏しく、ほとんど筋肉痛にならないということが多かった。

臀部の筋肉をしっかり使うことを意識し始めたら、歩行に対する感覚が大きく変化した。
まず、一歩を踏み出すために使っているパワーがまったく異なるのだ。確実に地面を蹴っているという感覚と、腰から爪先までエネルギーが流れる感覚が合わさって、とても心地好い。
これまでになかった、しっかり脚を使っているという自覚が持てる動きは、自然と持久力につながる。以前ならバテていたところを、ハイペースを維持したまま歩けるようになったので、歩くのが楽しくなった。
当然、使っていない筋肉なので歩いた後は大きな疲労が襲いかかる。おそらく大臀筋というのは身体の中で最大の筋肉だろうから、日常生活において大臀筋に過度な負担がかかることなんて、滅多にない。そこが筋肉痛になっているということ自体が、非常に新鮮なものだった。
翌日や翌々日に至っても、超回復は終わらない。しかし、徐々に尻の筋肉が成長している感覚を味わえる。
数日後には、自分の身体ではないくらい力強い一歩が踏み出せるようになり、体幹に安定感が生まれたような気さえした。


スポーツ科学的な観点から、はたしてこれが正しい行いなのかはわからない。
ただ、過去の歩行とは違う歩き方ができるようになったのは明らかになので、これからも尻の力を意識した散歩を継続していきたいと思った。

散歩中は信号に引っかかりそうになることがあるのだが、その場合は小走りすることがある。
歩行だけではなく、もちろん走りにおいても大臀筋は働いていて、歩行と同様に尻へと力を集中させるイメージで走ると、軸がブレず息が上がりにくく、素速く移動できることに気づいた。
これが短距離走などに活かせるとしたら、高校までの体育では随分と無駄な走り方をしていたことになりそうだが……とにかく走る機会のめっきり減った今の生活において、歩くことや走ることに新たな知見を得られたのは、とても面白いことだと思う。

まぁあまりにも歩くことを頑張りすぎて、日中に疲労で寝込むことになったのは、反省点ではある。