K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

生存記録(20231204)

「反動」というものは事前に想定さえできていれば、そのために備えることは容易だ。耐えられるよう多めにバッファを確保しておくとか、あるいは一時的に力尽きても構わないよう余裕を持たせておくとか……いずれにせよ、事が起こる前か後に何かしらの空白を作ることが肝要となる。
しかし、見立てが甘かったとしたらどうだろう。どれだけ慎重に検討を重ねたとしても、その通りに現実が動くとは限らない。むしろ、場合によっては物事が順調に進むことのほうが珍しいと言っても過言ではないかもしれない。
週末の私は、まさに自らが想定していた以上の出来事によって、主に体力面において多大なるダメージを被ることになった。土曜日の昼から夜にかけて、外に出て人と会い、やや長めの会話に時間を費やした。こうして短い文章にしてしまうと、大したことはないように見える。実際、同じように振る舞っても翌日には元気を取り戻せるという人が、きっと世の中にはたくさんいるだろう。だが、私には難しい話だったのだ。
まず外出するということ自体が非日常なイベントであり、さらに人と会って会話するとなれば普段は使わない能力を駆使することになる。まだ、これが数時間程度の用事なら大した反動はなかったはずだ。けれど、あの日の会話は私が考えていた以上に内容の濃いもので、いつの間にか外が暗くなっていたくらい、時間の経過に無頓着にならざるを得ない充実具合だった。様々なジャンルについて思索を巡らせて、長いこと休んでいた脳の一部を延々と回転させながら会話のキャッチボールを成立させる……それは他者とのコミュニケーションという観点で大きなブランクのある私にとって、決して楽な営みではなかった。
会話そのものの価値は凄まじい。そもそも、私がほとんど手を抜くことなく己の考えを発露して、それを正面から咀嚼した上で投げ返してくれる人間なんて、本当に珍しいのだ。つまらない世間話に終止するわけではなく、互いの思想を擦り合わせるような全力の会話が通用する機会なんて、過去を振り返っても年に一度あるかないか、それくらい貴重なことだった。
あまりにも慣れないことに体力を使う一日だったせいか、日曜日の大半を睡眠に充てても全快する様子はなく、さらに翌日の月曜日も大部分を布団の中で過ごす羽目になった。連日、いくつか荷物の受け取りを予定していたのだけれど、せっかく持ってきてもらったのに反応できなかったり、置き配にしても通常は即座に回収するというのに半日近くも家の前に放置してしまったり、ぼんやりと頭の中で予定していた出来事が何も上手くいかず困惑するばかり……まぁ流石に、自覚のない疲れが積み重なっていたのだろう。
たっぷり眠ったつもりではあるので、明日から調子が戻ればいいが、最悪の場合は次の週末まで犠牲にすることも覚悟しなければならないかもしれない。