K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

生存記録(20240308)

日本のみならず世界的にも影響力の大きい漫画家の訃報ということで、一時的に旧Twitterのトレンドが関連ワードで埋まっていたけれど、そんな世間の悲しみの声に反するように、私の気分は極めて平静を保っていた。著名人の死去なんて、ほとんど毎月のように発生するイベントなわけだし、いちいちショックを受けていたら心の安寧を保つことなんてできない。だから、この手のニュースに対して、私は昔から努めて無関心を貫くようになっている。
実際のところ、その死者への感情というのは自身の経験によって左右される部分が大きいだろう。演者にせよ作者にせよ、目にする機会の多かった人間の死はきっと悲しいものだろうし、一方で名前を聞いたことがある程度の認識ならばほとんど動揺することはない。人生の一部をサブカルコンテンツに捧げているタイプの人間としては本当に珍しいかもしれないが、私は彼の生み出した作品について主観的な一切の経験を持たないのだ。もちろん、いくつかの名作のタイトルは知っているし、彼のイラストを見たことだってあるけれど、作品を通じた作者への信仰心のようなものを構築することなく、ここまで生きてきた。直撃世代ではなかったというのと、学生時代にも周囲で話題になることがなかった上に、たまたま彼の関わるゲームなどに触れることもなかった。だから、とある偉大な人間がこの世からいなくなったという単純な事実をただ漠然と受け止めるだけで、それ以外には何も思うところがなかったのだ。
もっとも、そのサブカルの歴史を紐解いていくと必ず名前が挙がるであろう先駆者的な人物だろうし、彼の影響を受けたクリエイターたちは数えきれないほど存在しているだろう。私が幼少期から現在に至るまでに咀嚼してきた無数の名作が、その大いなる影響下にあった可能性は否定できない。直接的には知らずとも、おそらく間接的には彼のエッセンスを摂取している。言ってしまえば、顔も名前も知らない先祖のようなものかもしれない。
まぁ先祖呼ばわりするには若すぎるし、近い世代にしても年齢層が上の方々においてもダイレクトに触れていた人が多いのだろうから、今回のように大きな話題となっているわけだが……少数派の私は世間との温度差を感じてしまってどうにも息苦しいけれど、しかしながら悲嘆に暮れるよりはマシだろうとも思う。