K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

生存記録(20240628)

某インタビュー記事に目を通したのだが、なかなか興味深い示唆に富んでいて、まずはこれを無料で読めることに感謝したい。
様々な創作形態の一種であるシナリオという分野は、部分的には正解と言える形式が存在するのだろうけれど、大局的に見れば絶対的な正解はない。なぜなら、それが実在するのではあれば確実にヒット作を生み出せるからだ。ある形が「答え」になった瞬間、それはもう輝きを失う。多くの人の琴線に触れる唯一性こそが、より偉大な作品としての格をもたらすわけで、亜流の量産は受け手をうんざりさせるだけだろう。つまるところ、一定の成功を目指すクリエイターは、常に暗中模索する必要があるということになる。
売れているタイトルを客観的に分析することで、ある程度の戦略を立てることは可能なのだと思う。実際、制作者や制作チームの明確な意図によって、狙った形でヒットを作っていることもある。ただ、その狙いが的中するかどうかは、出してみるまでわからない。完全に運とまでは言わないけれど、ここには目に見えない要素が介在していると私は考える。
社会情勢や、それが受け入れられるコミュニティの空気感、時代や地域によって異なる形で解釈される性質……そのような変数を読み解くことは、一人の人間には不可能だ。アタリをつけて、ああでもないこうでもない、と試行錯誤の末に偶然にも当たったものが、結果として正しいとされるのではないか。それは個々が思い描く理想とは程遠いかもしれないし、より良い方策へのアイデアはいくらでも転がっているかもしれない。しかし忘れてはならないのは、現在の成功者は、そうならなかった無数の屍の上に立っているということだ。理想は幻でしかない。
インタビューの内容について、なるほどそういうことだったのかと、私はどちらかと言えば好意的な感触で受け止めることができたものの、中には納得できずに不平を漏らすことしかできない人間もいるだろう。そもそも日本語を読めていない論外は除外するとして、真っ当に受け取ったうえでどう感じるかは人それぞれ自由だ。ただ、コンテンツに執心する立場でありながらネガティブな感情しか掻き立てられないようであれば、十全に楽しむことができている私からは不憫としか映らない。
誰でも好きに意見を述べられる時代なので、記事を引用して感想をアウトプットしている人間を一望するのもまた興味深い試みなわけだが、同じ文章を読んだはずなのに真逆の感性を刺激されているような輩を観測することができるので、人間というのは本当に不可解で面白い。