K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

体力の差

無理は若いうちにしておけ、という意見を耳にすることがある。
それ自体は別に不思議なことではなく、老いれば体力が減っていくのは自然の摂理であるから、使えるリソースは使えるうちに活用するという意味では納得できる話ではある。
けれど、その「無理」について話を聞いていくと、どうにも持っている感覚が根本から異なるのではないかと思うことが、少なくないのだ。

 

これは貧弱な身体で極端に体力が少ない私から見た、ある程度は一般的であると思われる「体力」についての認識なのだが……普通の人は、早朝に起きて出社あるいは登校していき、夕方から夜の間に帰宅するくらいの感じが、多少はしんどさを伴いながらも大きな負担なく続けていける生活スタイルなのだと思っている。
やらなければならないことがあって、それに拘束される時間としては、およそ半日程度までが、きっと健康でいられる上限なのだろうという話だ。
毎日のように数時間の残業をこなし、まともに睡眠も取れないまま次の日を迎えるなんて、とても普通とは言えない。

翌日が休みだからと、金曜の夜に多少の無理をするくらいなら、まぁないことはない。一方で、月曜から残業となると一週間のコンディションに響くし、徐々にモチベーションも低下していくことだろう。少なくとも、私はそうだった。
だから不思議で仕方ないのだ。若い頃は飲み会の後に徹夜でカラオケに行って、その足で朝になったら出社して、平気で仕事をこなせていた……なんていう言い分には、どうしても同じ人間とは思えない力の違いを感じてしまう。
彼らはなんなのだ。化け物か。

会社でなくてもいい。毎日のように徹夜して、そのまま授業に出て、夕方にはバイトをして。いつ休んでいるのか知らないけれど、もう二日も三日も徹夜しているんだぜ、と寿命を削っている自慢をする連中が世の中のどこかにはいる。
大学生というのは、確かに最も元気な年頃なのかもしれない。ただ、それでも私には決して真似できない行動だった。

思い返すと懐かしいけれど、学生時代には親しい人間と一緒に徹夜でカラオケを楽しむことが何度かあった。あるいは麻雀であったり、朝まで飲みながらゲームで騒いだこともある。
大学生の姿としては珍しくもなんともない、ありふれた光景であることだろう。
しかし、そんなことをすれば、反動でその日は夜まで潰れることになるし、さらに翌日に至っても体調不良に悩まされることがほとんどだった。
とてもとても、そのまま寝ずに活動できる体力なんて残っていないし、そもそも頭が働きを停止して気絶するように眠り込むのが常だったのだ。
それを知っているから、私は予定のある前日には徹夜の誘いに乗らなかったし、飲酒も控えめにしていた。もし遊ぶことが避けられない状況であれば、次の日の用事はキャンセル一択だった。


若い頃は○○ができた。
そう言うのは自由だし、実際にできる身体を持っていたのかもしれないから、否定もしない。
ただ、そんな化け物じみた経験談を、さも当然のことのように話すのは、ちょっと違うのではないか。
誰もが体力に満ちた元気溢れる日々を生きているわけではないし、むしろ暗いことのほうが多い社会なのだから、ギリギリのところで健康体を保っている人のほうが多いと思うのだ。

30歳を過ぎたら〜とか、40歳を過ぎたら〜とか、アドバイスをするのは構わないが、私からすれば彼らにとっての「できなくなったこと」は初めからできないし、今でも十分にエネルギッシュで生き生きとしているように見える。
ああ、別に特定の誰かに向けて言っているわけではないのだけれど、どうにも体力という個人差の大きいものを、主観的な話ではなく一般論として語っている人が多いような気がしたので、今回はそういう輩に対する文句のような内容になってしまった。

もちろん、何か達成しなければならない課題があって、時間や人員が限られているとか、逃したら今後チャンスが訪れないかもしれないとか、特別な事情があるなら話は変わってくるし、人生経験として無理をしたらどうなるかということを知っておくのも、きっと悪いことではない。
ただ、何かしらの難しい挑戦をするために頑張ることと、身体をいじめるだけの無理を重ねることは、まるで違うのだ、ということが言いたかった。

体力への認識の基準が異なると、あらゆる作業において見積もりがズレてくる恐れがあるため、そのあたりの感覚は初期のうちに共有しておいたほうがいいだろう。
これは将来の自分への教訓として残しておきたい。