K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

自身の不眠症に関する検討

先月の途中から、半ば冗談のつもりで不眠症になったという話を何度か書いてきたけれど、一向に改善する気配がないため症状を調べてみた。すると、一般的な不眠症の診断に用いられる項目の全部に該当してしまっていたので、どうやら本当にマズいかもしれない。
すぐ命に関わるような問題ではないから、放置しておけばいつの間にか治っている可能性もある。ただ、あまりに続くようだと体調不良の慢性化は免れないし、きっと見えないところで寿命は減り続けているのだろう。

 

そもそも普通の健康的な生活を送ることが「当たり前」ではなくなってから、どれだけの時間が経過したことか……自身の認識が相当に歪んでしまっているがゆえに、多少のイレギュラーな事態に陥っても危機感を覚えづらいというか、なかなか深刻に捉えるのが難しくなっている状況がある。
身体の一部が痛むとか、寝付きが悪い、寝起きの機嫌が悪い、一日ずっと倦怠感に包まれている、ちょっと活動しただけで疲れきってしまう……そんなことは日常茶飯時だった。
標準的な肉体を持つ恵まれた人間には理解しにくい事象かもしれないが、痩せすぎて体力の少ない私からすれば、これこそが幼少期からの常だったと言っていい。
物心がついた頃から食への関心に乏しく、体格は誰が見ても細身で、健康診断の機械的な判定においては「痩せ」でなかったことはない。それでも、運良く生まれつき運動能力は高かったおかげで、学生時代には身体的なディスアドバンテージを感じることが少なかった。
まぁそういう意味では、直近の数年は「やりすぎ」なのだ。ただでさえ標準体重までの道のりが果てしない長さだったというのに、ほとんど外出しなくなったことで痩せ方向に拍車がかかって、今や自力では健康体に近づくことが不可能なくらい衰弱してしまっている。せいぜい、入院推奨ラインの前後を行ったり来たり、現状維持することで精一杯という感覚だ。

非常事態に慣れきった身体は、多少の変調には動じない。たとえば、骨や筋肉ではなく血管か神経あたりに異常がありそうな痛みが手足に生じることがあるのだけれど、これも珍しい出来事ではなく、たまに起こる不具合としてスルーしてしまう。概ね、何日か経てば解消されるものだから、特に不安になることもないのだ。
異様な眠気や頭痛についても、眠れば治ることがほとんどだったから気にしたことがなかった。自身が何かの病気に罹っているという考えに至ることはなく、病院に行くという選択肢は私の思考回路では現実的なものとならない。
要するに、細かな問題は不断に発生しているけれど、大半が一時的なものであり、意識を失ったり身体が動かなくなったりするような重大な状況に直面することがないから、どうしても真剣に受け止めるための準備ができないわけで……いつしか全身がボロボロになっていたとしても、それをネガティブに考えられなくなるのではないかという恐れはある。
なお、眠れなくなる、という単純な不具合は「眠ればいい」という解決策が通用しないから、今回の一件はシンプルに致命的だった。

 

眠いのに眠れない、という悩みは昔から存在した。音に対して神経質すぎるため、たとえば意識が睡眠状態へと移行しそうなタイミングでちょっとした物音を耳にすると、一気に現実へと引き戻されるということがある。
かなり疲れている日、強烈な眠気に襲われている日は別として、通常30分から1時間程度は入眠に要するものだし、酷い日だと2,3時間は目を瞑りっぱなしで、しかし意識はハッキリしてしまっている、なんてこともある。
日中、外に出ることの多かった日々では、疲労感を利用して自らを眠りに引き込んでいたものだが、在宅が増えて眠れない日が増えたのは確かだろう。
ただ結局、起き続けていたらどこかで脳が休みを欲するらしく、気づいたら限界を迎えて眠っていた、というパターンが多かった。

さて、ここまでは昔も今も変わらない、睡眠に至るまでの問題だが、ここからの話は直近の悩みとなる。
途中で目が覚めてしまうのだ。おそらく、まだ脳が十分に休息できていないにもかかわらず、予定している起床時刻の遥か手前で、なんらかの力により強制的に意識を覚醒状態まで引き上げられてしまう。
もう何週間も、自ら設定した目覚ましアラームによって健全な起床を果たすという日常を味わえていない。まだ眠い気がするのに、二度寝できる感じではない。渋々ながら目を開いて確認すると、最後に見た時刻から2時間程度しか経過していない絶望感を、健康的な人間は知る由もないだろう。
不思議で仕方ない。自然に寝落ちできるくらい強烈な眠気を感じられるまで意識を保った末に、満を持して横になる。あるいはハードな散歩によって肉体的疲労を蓄積し、気を失うかのような勢いで睡眠に向かう。なるべく熟睡できるよう、お膳立ては済ませているはずなのに、それでも浅くて短い眠りだけで目が覚めるのだ。
これならば、きっと6時間は起きないだろう。以前の感覚を頼りにするなら、そう確信できる状態だったはずなのに、その半分の時間すら眠りに使えないとはどういう了見だ。

私はショートスリーパーではない。
遺伝的特性で、短時間の睡眠だけでパフォーマンスを落とさずに活動できる人間がいるらしいけれど、私は睡眠が不足した分は着実に発揮できる能力の上限が下がるし、実際のところ露骨に、集中力や記憶力、判断力などが下がったという自覚がある。
足りていないのだ。2時間程度では。
それは当然の話なのだが、しかしながら厄介なことに、身体が満足できるまで眠るという当たり前のことができなくなっている。
睡眠不足なわけだから、目を覚ましたといっても決してスッキリしたものではない。頭が冴えるような感覚を、もう随分と長いこと味わっていないような気がする。それなのに二度寝はできないし、けれど起き上がると全身が気怠くて、今すぐにでも横になりたくなる。
ただひたすらに、具合の悪い状態を延々と継ぎ足しているような毎日を送っている。地獄のようだ。

外に出たり、新しく人に会ったりするのが億劫なので、通院のハードルはかなり高い。
まだ、どこかのタイミングで急に眠れるようになるのではないかと、根拠のない希望を抱いている側面もあるのだ。だって、普通は眠かったら眠るではないか。眠れないなんておかしい。そのうち、無限に惰眠を貪るターンが来るかもしれない。
一日の大半が睡眠に支配されてしまったら、それはそれで困ってしまうけれど……要はまだ、これを深刻なものとして考えるには少しばかり早いのではないか、という判断をしているということになる。

気持ちよく眠れなくなった最初のきっかけは、なんだったろうか。生活リズムおよび自律神経の乱れ、諸々のストレスや不安、隣人の騒音問題、etc……何かひとつということはなく、あらゆる状況と体質が悪い形で絡み合った複合的な問題にも思える。
現状維持で快方に向かう見込みが立たなければ、まずは生活習慣を改めるところから始めてみて、それでも難しそうなら医者に頼るという流れになるのだろうか。
もしくは一時的に実家へ戻って、心身の崩れたコンディションを整えるという選択肢も、まぁ一応の候補として頭の隅に置いておこう。