K's Graffiti

文章を書いたり絵を描いたりします。

消費と嗜好

しばしば散歩のため外出機会は作っているけれど、どう考えても日中の気温は運動に適していないため、たいていは深夜帯だ。
まぁ先週は映画というイレギュラーな予定があったが、基本的には昼間の空気というものに身体が慣れていないから、目的に関わらず外に出る際には心の準備を必要としている。大袈裟かもしれないが、本当に腰が重い。
今日は二週間ぶりに、近場の某スーパーへと買い出しに向かった。先週末あたりから平均気温が一層の上昇を見せているせいか、開店直後の時間だったのに想定していた数倍は体力を消耗してしまって、午後は動けなくなった。この時季、太陽が出ている間に外を歩くのは、もはや虚弱な人間に耐えられる営みではなくなっているのかもしれない。

 

毎日のように外出することを余儀なくされている人間からすれば、甘えるなの一言で一蹴されてしまうかもしれない。あるいは、気候に関係なく外の空気を吸わなければ息苦しさを覚えるタイプもいるだろうから、私のスタイルが必ずしも世間一般の認識と一致しているとは思わない。けれど、流石にこれほどの暑さとなれば、常に在宅を求める気持ちも大衆に共感が得られるレベルになっていそうだ。
そういうわけで本音を言うと、秋になるまで一歩も外に出たくない。運動だって、室内で完結させられたらどれだけ楽なことだろう。
実際のところ、運動不足にさえ目を瞑れば、まったく家から出ないという生活も普通に成立してしまう。便利な時代ゆえ、その手のサービスを利用すればいいからだ。
ただ、配達料であったり商品単価であったり、様々なコストを考慮すると、倹約家である私はその選択を全肯定するわけにはいかない。
とりわけ日常的に消費する飲食物に関しては、通販よりも自分の足を使って入手したほうが圧倒的に安価で済む場合が多い。あまり長持ちしない食パンや豆腐、あるいは卵や牛乳などはもちろんのこと、ペットボトルの飲料でさえ地元のスーパーが最強なのだ。
タイミングによって価格設定が異なるため比較するのは簡単ではないけれど、たとえば2Lの緑茶を買うとしたら、これを書いている現在Amazonでは8本入りの箱が1,400円弱(170円/本)程度、スーパーでセールになっているものを選べば1本あたり150円を下回る価格で手に入る。
手間を考えたら些細な差と思う人もいるだろうから、このあたりは個人の価値観次第ではあるものの、生きるために欠かせない消費アイテムだからこそ、長い目で見ると日頃の節約が活きると考えている。

なお、今日は冷蔵庫の中が空になっていたため、わりと現実的に限界のラインだった。外に出るのが嫌だとか言っていたら、逆に脱水症状からの熱中症になって倒れかねない。
食べ物ならパスタや冷凍食品など、いざという時の備えは大量に置いてあるし、私は食欲を感じない体質のため仮に切らしていても耐えられる。けれど、水分は備蓄しておくにも場所を取る上に、絶えず摂取しなければ死んでしまうから困ったものだ。
最悪、水道水を頼る方法もあるけれど、それは本当に最終手段なので、あまり気が進まない。数少ない嗜好品というか、基本的に緑茶かコーヒーしか受け付けない口になっているから、飲み物の欠乏は死活問題と言っていい。

 

これは勝手な想像に過ぎないため、的外れである可能性はあるが……いわゆる「一般人」というやつは、スーパーに行くとお菓子やコーラのようなジュース類をついでに買うのが普通なのではないだろうか。
なぜ、こんなことを思うかというと、私が一切そのような品々に興味を示さないからだ。
逆に、というか、わりと普通から外れた選択をしがちな私の「当たり前」をひっくり返すと、むしろ一般の感覚に近くなるのではないかという説がある。
記憶が正しければ、生まれてから今まで、私は自らの意思で菓子類やジュース類を買ったことがない。
別に、親の躾とは思っていない。そもそも、それらを欲したことがないから、そういう風に生きることを強いられたわけではないだろう。もし求めたら、ちゃんと買い与えてくれる環境ではあったと思う。昔から欲がなかったのだ。
母親が甘いものを好んで食べる人間ではないことが、少なからず影響していた可能性は否めない。遺伝か環境か、要因は定かではないけれど、過程はどうあれ今の私はジャンクフードや甘い食べ物にポジティブな意識を持つことができない。結果として、必要な飲食物を揃える際に、それらは最初から選択肢にないのだ。

おそらく、普通の人が知っている「お菓子の知識」が私には存在しない。
家庭の中だけで育ってきたわけではないから、お菓子を食べたことがないわけではないのだけれど、直近の十年くらいで出てきたお菓子のブランドはほとんど知らないだろうと思う。
よくある論争の「きのこ」「たけのこ」も、どちらも片手で数えられる程度しか食べたことがない。正直どちらでもいいというか、前者はチョコレートの量が多くて、後者はクッキー生地が美味いらしいという話しか知らない。実体験に基づく好みなんて持っていないのだ。

幼少期にコーラやサイダーに馴染みがなかったせいで、いまだに炭酸飲料は苦手としている。かろうじて炭酸の入ったアルコール飲料なら大学時代に我慢しながら飲めるようになったが、甘ったるいエナジードリンクなんかは毒としか感じられない。
アルコールに強い体質でもないから、わざわざ自宅で飲酒する習慣は身につかなかったし、そのせいでビールの味は二十歳の頃から不味いままだ。
自分の中でギリギリ安牌と言えそうなのは梅酒かジントニックなのだが、やはり前者は甘すぎて、後者は炭酸がキツい。

つまらない奴、と思われても仕方ない。ただ、そう見られても別になんとも感じない。嗜好品が人生の楽しみという人は、私の人生に潜む魅力に気づくことはないだろう。
繊細なのだ。神経質なのだ。私と馬が合う人なんて、はたして存在しているのか。もし、どこかに生きているとしても、出会える可能性は幾何か。